『新 移民時代』

4月 理事推薦本
西日本新聞社 編 『新 移民時代-外国人労働者とともに生きる社会へ』(明石書店 2017年)

 この本は2016年12月から西日本新聞で特集された記事をまとめた本で、きっかけは社会部の記者が「福岡市の一角にネパール人の若者達が身を寄せ合う国際通りがあるらしい」という聞き込みの情報からであった。
 西日本新聞社であるから九州を中心に調査した外国人留学生、技能実習生、不法滞在者の実態、来日までの経緯などをまとめたものである。Edベンチャーでも最低賃金以下で働いているカンボジア人など把握しており、過酷な労働や賃金の不払いなど予想はしていたが、彼らの置かれている実情は驚くべきものであった。何より彼らが来日の契機となる日本語学校は「商売として成り立つ」と玉石混交の乱立状態。2010年の政府による事業仕分け以来、日本語学校の監督が入国管理局に移り、管理局は業務の多忙さから、不正や人権無視があっても野放し状態なのが実情。被害を蒙るのは多額の借金をかかえて来日した留学生。まさに日本語学校の実態には驚くばかりである。
 しかし、メイドインJapanといっても、全て外国人労働者に支えられ、農家の大根1本の収穫までも実習生に支えられているのが、私達の生活なんだと改めて実感した。
 今や外国人の労働力無くして、日本の産業は成り立たない。特に中小企業にとって、外国人の労働力は企業の存立にかかわる問題である。
 4月27日の東京新聞の1面に「外国人特定技能制度1ヶ月―悪質仲介業者排除進まず」との記事。安倍政権が人手不足解消の政策が4月から本格化し覚書締結など行っているが最終的な責任は何もとらず相手国任せ。戦前以来の無責任政策は変わらない。しかし、私達は自民党政権など無視して自分の国の将来を真剣に考える時だろう。つまり、人口減少に見合った縮小型の国にするのか、それとも移民政策に転じて様々な国の人と共生し、共に生きていける国にするのか選択を迫られているのだと思う。
 人口減少と高齢化は日本だけの問題ではなく、中国・韓国などでも、労働力獲得に向け法や制度の改革を行っている。労働力獲得競争というのも嫌なことだが、外国人がまた日本で働きたいと思われる国になればと思う。日本の実習制度などは、欧米の移民排斥主義者には理想的な制度と評価されているそうだが、何とも嫌な話である。
 古代日本が「倭」と呼ばれていた時代、この国は大陸や朝鮮半島、インドシナ、その他の地域と交流し、同化を繰り返して国を作ってきたことを忘れてはならない。日本人ほど混血を繰り返した民族はない。決して単一民族なんかではないはずである。
 九州は交流の玄関口だからこそ考えなければならないとの思いが新聞社にあった。九州を中心に調査されているが、まさにそれは日本全体にあてはまることである。なかなか分かりにくい実態を知ることができ、是非一読をお薦めしたい。(TT)