12月報告 若者の貧困

 貧困は教育現場でも目に見える形で子どもたちを取り巻いている。義務教育を終えた子どもたちはどのように貧困に巻き込まれていくのだろうか。若者たちが抱える貧困や生活困窮などの問題に対して、「ハウジングファースト」という理念のもとに生活の拠点である住まいを提供することで支援を行っている「一般社団法人つくろい東京ファンド」代表理事・立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授の稲葉剛氏を講師に招き、若年層にまで貧困が拡大している現状と、社会保障である生活保護を申請・利用するまでの課題をお話しいただいた。

 近年、安定した住居がなくネットカフェで寝泊まりする「ネットカフェ難民」のように住居を喪失した者のうち、30代は38.6%、20代は12.3%と約半数が若者で占められていたことが分かった。住居を喪失することで、求職活動が困難になったりホームレスに対するイメージによる精神的なダメージや人間関係の喪失などの影響があるのだ。
 若者が生活困窮に陥るには、二つのパターンがある。ひとつは、貧困の世代間連鎖である。親の貧困が文化的資源の少なさや学習に集中できる環境の少なさが子どもの低学力につながり、それが低学歴、非正規労働につながり結果成人後の貧困へと繋がっていく。ふたつめには、ブラック企業の過労によって生じた精神疾患をきっかけに生活困窮へ陥るというものである。その背景には医療保険や失業手当、生活保護などのセーフティネットがうまく機能していないために、失業をきっかけに路上生活や、餓死・孤立死などといった最悪の事態にまで展開してしまうのだ。
 世界各国と比較して日本の公的扶助制度の利用率は低い。そして生活保護については、申請すれば利用できる人のうち実際に利用できている人の割合を示す捕捉率はとても低い。その理由は、制度を利用するときに二親等内に連絡が行くなど利用する際の課題があることや、公的扶助制度に対する偏見とスティグマが制度を必要としている人たちに負い目を感じさせ、生活保護を遠ざけてしまうためである。さらに役所の水際作戦も利用を妨げる要因の一つになっている。
 そうしたなかで若者の貧困を解決するためには、生活保護を利用しやすくするとともに、生活の拠点となる住居を保障することで安定した生活を送ることが求められる。生活の拠点となる住居があることで、生活保護の利用や求職活動など自分の生活の基礎を築くことができると学んだ会であった。

参加者:23名