文献紹介 自立支援の現状

 今回は自立支援に関する文献を紹介します。「子どもの未来をあきらめない 施設で育った子どもの自立支援」(明石書店)です。書かれたのは、高橋亜美さん、早川悟司さん、大森信也さんの3名です。高橋さんは、社会的養護施設を就労・就学で対処された方の相談所である「アフターケア相談所ゆずりは」の所長をされています。早川さんと大森さんは、それぞれ児童養護施設の施設長をされています。
 本の中では、子どもたちの言葉で、自立後、社会に出て直面する様々な問題が語られています。1つは社会の仕組みの問題です。例えば、住居契約・就職・様々な手続きの場面で保証人、緊急連絡先などが必要とされますが、施設を退所した子どもは親や血縁者を頼ることができず、正規雇用の就労ができなくなる場合もあります。もう1つは、子どもたち自身が抱える問題です。就労や進学、結婚・出産といった人生における出来事の中で、虐待など自身が過去に受けてきた経験のトラウマに苦しむ様子が、生々しい言葉で語られています。就学・就労し、自立を目指すだけでなく、その後のアフターケアが重要であるという自立支援の課題を認識させられます。
 現在、学校や地域の中には、自身や家庭について、様々な困難さを抱えた子どもがいます。本の中で、子どもたちの様々なケースに対して、かかわりのヒントがいくつも掲載されています。それは、施設職員に対してだけでなく、子どもとかかわる私たちにとっても、支えとなるものです。
 早川さんは脱「自己責任論」を主張されています。
「いかなるときにも子どもの自己責任を問うことなく、教育的配慮に基づく支援を継続する必要がある。すべきでない行動は確実に指摘した上で、代わりにとるべき行動を共に探る。子どもの行動を否定しても、存在は決して否定しない。」
この言葉は、自立支援・社会的養護に限らず、学校や地域、どこの場所でも子どもにかかわる大人が、胸に刻み続けていかなければいけないと感じました