6月, 2018
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今回は12月に講演に来ていただく稲葉剛氏が著した『生活保護から考える』という文献を参加者で講読した。今回の学習会は文献購読を通して生活保護について知ること、知ったことで学校現場等で自分たちにできることを考えることの2点である。 文献購読を通して、生活保護について知る前と後で利用することへの捉え方が変わったという参加者がいた。第3章の「家族の限界」では子の親に対する扶養義務について述べられており、生活保護を受給している家庭の子どもは高等教育を受ける機会が限定され、高額所得者として成功しにくいという。3章ではある芸能人の親が不正受給していたというケースが紹介されており、報道された当初は子どもが親を扶養すべきと考えていたが、それでは貧困の連鎖に繋がってしまうと考えが変わったようだ。 他方で、生活保護について誤った理解をしていた参加者もいた。文献には生活保護を申請するときは書類はいらないと書かれていたが、申請に立ち会ったときに書類が必要だと言われ引き返したことがあるそうだ。生活保護について正しく理解をしていないと利用すべき人が利用できずに生活に困窮してしまうということを強く感じた事例だった。 学校現場で教師として自分ができることを考えたとき、生活保護について知識として知ることや利用している家庭にどのようなかかわりができるかを参加者で考えた。中学校の先生は家庭状況を考慮して進路選択のときに併願校などに配慮しているようだった。知識として知ることを考えたとき小学校では課題が見えた。小学校の先生は高学年ではかろうじて理解することはできようとも、低・中学年には生活保護や生活の困窮を理解することは難しいだろうという考えが多かった。しかし、自分が困った時に誰に頼ることができるかなど段階を下げて子どもたちに考えさせることはできるのではないかという意見も出た。子どもの発達段階に応じて教師がかかわることができるという結論に至った。 参加者:8名 参加者の感想:一部抜粋 ・生活保護についてより深く知りたくなりました。→この言葉に今日の学習会のすべてが表現されています。まずは、知ることが一歩だなと感じました。(小学校教員) ・自分自身が生活保護について知らなさ過ぎたことを反省しました。子どもたちに何ができるかの前に、しっかりと制度を理解しようと思います。(中学校教員) ・ほかの先生方の要約のおかげでより分かりやすく内容を理解することができました。生活保護についての知識は私自身もあまりなく、なぜ生活保護を受ける状況になるのか、どのくらいの支援がなされるのかよくわかっていません。自分の中学校にも生活保護を受給する家庭があるので、その子どもたちに対する支援の仕方を考えていく必要があると改めて感じました。(中学校教員) ・文献を読んで、この問題の渦中にいることもたちに直接的にかかわりを持つことできるのは教員であるという認識を改めてしました。世代間連鎖を産まないためにも自分たちができることを模索していきたいと思います。(小学校教員)
2018年06月18日 理論学習会 6月報告 生活保護を知る
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5月報告 内 容:『学級経営と子どもとの関わり』 報告者:後藤利恵先生(小学校) 富岡昌世先生(中学校) 日 時:2018年5月14日 シリウス19:00~21:00 参加者22名 新学期が始まり一か月、子ども達の様子や、人間関係が見え始め、これからの学級経営を見つめ直す時期でもあります。 今回は、現場の先生からの報告です。4月の学習会でお話いただいた、学級における集団構造の視点を受け、周辺化されがちな子どもの姿と、そこに関わる先生の実践を聞かせていただきました。 後藤先生(小)の報告には、子どもが置かれている家庭的背景、クラスでの立ち位置、その子自身の思いなど、多面的かつ丁寧に子どもを理解することを通して、子どもと出会っていく先生の姿がありました。離席を繰り返す児童の本音に寄り添いながら、一方でクラスの子どもたちの気持ちを汲み取り、多様な個性をもつ子ども達が集う「学級」をどうつくるかと悩み、様々な手を打つ先生。例えば、発想を転換させ、机といすを取り払って、座らなくてもいい授業をしてみる。計算の単元が続くときはその児童がきつくなるため、単元計画を入れ替えて図形やコンパスを交互にいれてみる。その子が得意なことでみんなとつながれるときは、全力で応援してみる。お母さんと必ず一日一トークしてみる。これらのことは、クラスの他の児童も抱え、ほとんどすべての授業を担任一人がこなす小学校の先生としては、覚悟とエネルギーがなければできないことです。それでも、弱い立場にある子も、そうでない子も含めてみんなで「学級」をつくるんだという先生の信念を強く感じました。他の先生を巻き込みヘルプを出すこと、担任としての思いを子どもたちに伝えること、多様な考えを知りそこから学び自分の意見を持てる子を育てること、日記(あのね帳)で子どもの心を垣間見る事、担任は一人三つ以上子どものいいところを言えること、リーダーの固定化を防ぎみんなが輝く手立てをとること、など。先生のお話から本が一冊かけるんじゃないかというくらい、困難を抱える子どもの見とり方と、手立てをお話していただきました。 富岡先生(中)の報告からは、みんなが安心できるクラスをめざし、みんなが平等であること、正義が通ること、お互いの存在を認め合うことを軸に、生徒との具体的な関わりの中でお話していただきました。周りと上手に関われない、授業についていけない、多動など、学校文化の中で困難を抱える生徒を丁寧に見とり、個に応じた配慮をするとともに、とにかくその生徒と積極的に関わりや会話の機会をつくる先生を見て、周りの生徒たちの関わり方が変容していきます。例えば、体育祭や音楽祭など、イベントの度に、そこにのっかることができずに壁にぶつかる生徒、困っているその生徒を気にかけ、様々な場面で、クラスの話題として、その生徒の名前が挙がるようになっていきます。音楽祭のクラス目標に、その生徒のアイディアが採用され、確実に集団の質が変わっていきました。子ども達が自分の持っている良いところに気づき、イキイキ生活するために目の前の生徒を丁寧に見とることが大切であるというお話が印象的でした。 参加者の多くが若手の教員であり、明日からの子どもとの関わりを今一度立ち止まって振り返る機会となり、今後の教員としての視点を提示していただいた学習会となりました。 (参加者の感想・一部) 子どもに合わせて、柔軟に対応されてきた後藤先生の実践を聞く機会を今回得ることができてよかったです。尊敬できる先生が近くにいて、共に働ける現場に感謝し、改めて後藤先生から「たくさんのことを吸収しなければいけない」と思いました。冨岡先生の実践からも、小学校と中学校という違いはあるが、子どもの気持ちに寄り添うという点では一緒だと感じました。二人の先生方のお話を聞いて、私も子どものことを第一に考えられる先生でありたいと改めて強く思いました。本日は貴重なお話をありがとうございました。 子ども一人ひとりの特性や個性を理解することはとてもむずかしく、その子に合った学習方法を探求しなければならないと痛感しました。教師の自己満足を押し付けるのではなく、色々な手立てを試して実践して、その成果を子どもにつなげて、子どもに返していくべきだと思いました。家庭の様子を把握しておかなければ命に関わってくると改めて思いました。全てをひっくるめても子どもに寄り添うことがやっぱり大切! 子どもたちを色々な場面でしっかりつかみ、その実態に応じて、後藤先生の「ひらめき、引き出し」から次々に楽しい取り組みをされているところがスゴイと思います。それは先生の子ども観、教育観がブレずに貫かれているからだと思いました。これまでいろいろな実践を聞いたり読んだりしてきましたが、後藤先生のパワーはすごいですね。 今回の学習会を受けさせていただいて、問題があると思われる子は、不安や悩みがあり、それを言葉にしたり上手く表現ができないだけであることを改めて考えました。なのでその子に寄り添ってあげるのは担任かもしれないが、最終的にはクラスの子どもと関わりを持たせてあげることも大事であると思いました。「あのね帳」は実際にやってみたいと思います。本日は貴重なお話ありがとうございました。 お二人の先生の取り組みを聞いて、クラスの一人ひとりがとても大切にされていると感じました。また、丁寧に分析をしているという点も共通していて、私もとても勉強になりました。いろいろな支援を必要としている現場に、いろいろな支援の手も増えていますが、「やっぱり担任の先生」なんだとつくづく思います。特別なことをしなくても「担任としてできること」ってたくさんたくさんあるなと改めて思いました
2018年06月03日 理論学習会 子どもに寄り添う学級経営