授業研究会

2022年度にて活動終了

 2022年度は、全体として「女性の生きづらさ」をテーマの中心に置くことになったので、女性問題に関わる課題に焦点を当て授業研究することにした。女性が一人の人間として、生きていきたいと思う時、そこに立ちはだかるジェンダーバイアスがある。生育過程、教育過程を通じてである。さらに、女性が経済的自立をしようとした時にも様々な問題がある。
 そこで、女性が自分らしく生きたいと思うことをさまたげている社会のあり方を教育現場でどう探求していけるのかを考え、カリキュラムづくりのヒントを得ることにした。
 第1回は、『性別があふれる学校は変われるのか』寺町晋哉著『中等教育におけるジェンダー平等の過去、現在、未来』木村涼子著を使って学習した。保育園の課題として「性別の認識」があるが、それは必要なのか、学校教育の中では、無意識のうちに「男女」を区別しているところがまだ多い、第2次成長を扱うときに、トランスジェンダーのことも扱うべきではないかなどが話された。
 第2回は、それらを受けて「ジェンダーのカリキュラム化」をテーマに話し合った。初めて参加してくださった中学校の先生から「思春期」の扱い方の大切さが指摘された。また、先生方のほうが生徒より「ジェンダー」に鈍感である場合が多いので、教師がきちんと勉強すべきであることも話された。
 第3回は「女性の働き方」について学習した。その中で北欧諸国の取り組み方は、日本と根本から違っていて、「人権」を基本に据えているか否かの違いなのではないかと言う意見が出された。「非正規労働者」が圧倒的に増えていて特に女性が多いのは、「家事」「育児」が家庭の労働として今も女性が中心に担うべきであるという考え方が変わってないことに起因しているのではないか。育児休業制度の男子の取得率を上げていかなくてはならない。いろいろなサポート機関はできてきているが、お金がかかりすぎるため利用できない人が多い。制度があっても一番必要な人に届いていないなど様々な問題が山積していることがわかった。
 第4回は「女性の働き方についてのカリキュラムづくり」について話し合った。
カリキュラムの内容について①女性の経済的自立の必要性②働く女性を取り巻く現状問題③様々な制度について④根本的な問題を軸に展開する提案が出された後フリートーキングした。根本的な問題の「育児に母性は必要か」については、最近の研究成果として「母性神話」は、崩れてきているという話が紹介された。
 内容的には、後期中等教育での課題かもしれないが、「人権尊重」という根本から見つめ直すならば、初等教育の段階からでも授業化する意味があると話された。しかし、学校で学んだ事と現実社会に出た時のギャップが大きすぎる事が指摘された。それについては、「学びの段階で常に現実社会に着目させる視点が必要」さらに、「理念と実際が乖離していたならば、どうすれば実現できるかを考え合う場面の設定が必要」「教師自身が、人権感覚を磨き、身近な声を拾っていけるようにならなければいけないのではないか」という意見が出た。コロナ禍で人との距離が離れすぎてしまっている事が、益々身近な声を感じにくくさせているということも出され、ICTをうまく使いこなすことの重要性にも触れる学習会になった。
 ジェンダーバイアスの問題、女性の働き方に関わる問題を教材化する試みであったが、それなりにヒントを得られる学習会になった。中学校の現場の先生の発言から中学生の実態に触れられたのは良かった。しかし、現在、子どもたちを前にして日常的に指導している若手の教師たちの参加が全くと言っていいほどなかったのは残念であった。
 この授業研究会が、現場の先生方のニーズに適合していないのかもしれない。他の事業において学校での事業実践を念頭に置いた活動も実施されていくということも受け、授業研究会は一旦2022年度をもって終了することとなった。