2020年度授業研究会総括

【2020年度授業研究会 総括】
【事業総括】
 2020年度は、「ひとりひとりが位置づく学習空間と時間の創出をめざす」という目標を掲げ取り組んできた。当初5回計画していたが、コロナで3回しかできなかった。
 しかし、①教師自身が自分中心の授業ではなく、児童との対話や児童同士の交流が生み出されるような授業づくりが必要だということ。②同一教材でも児童の学習到達度や興味関心を勘案して教材を用意することが大切だということを共通理解できたと思う。
 第1回は、「教師は伝達者ではなくいかにして媒介者たりうるか」というテーマで行った。長い自粛期間、学校は休校措置になった。勉強が遅れるのではないかというあせりから、学校現場では、今まで以上に教師が一方的に進める授業になりかねない恐れがあった。だが、学校生活が突然になくなった、しかも長い間。だからこそ「子どもたちは、自分にとって学校って何だろうか。」という問いが自覚するしないにかかわらず生起したのではないか。そのことを教師たちは、自分たちの問いにできたのか。
 そこで、「久しぶりに学校で会った子どもたちから何を受け止め、何を語りあったのか。」をメインに意見交換した。子どもたちは一様に「友だちに会いたかった。」と語ったという。また、不登校気味だった児童が学校に来たという。分散登校という期間だったことから40人近い数の学級集団がいかに彼にとって息苦しいものだったのかが想像できた。すなわち、子どもたちにとって学校は「学習の場」より「友だちと一緒に過ごす場」としてかけがえのない場所であると意識されたことが分かった。教室の中に掲示板を設置してその日会えない友達に思い思いにメッセージを綴ることで全員登校日を不安なく迎えるようにしたというアイデアも紹介され、「生活の場」としての意味の大切さを再認識する話し合いになった。だが、自粛期間中にでた膨大なプリントに圧迫された子、家や塾でリモート学習に取り組んだ子など学力格差がついたことも明らかになった。だからこそ、教師は、「学校」が、「友だちの存在を意識できるような学習の場」になるように取り組むべきだということが改めて確認された。
 第2回は、「同一空間の中で発達に応じた課題と自発的な学習の組織化は、可能か」というテーマで行った。これは、とりもなおさず、教室の中で、一人ひとりがきちんと位置付けられるために教師が工夫しなければならない課題であると思ったからである。
 具体的には、大村はま先生の説明文の読みとりの実践と提案者の算数の時間の実践を紹介して話し合われた。黒板の前で教科書を見ながら1問1答をくりかえす平板な授業が多い。これでは、「学習に食らいつきにくい子」は救われないし、すでに塾などで教科書の内容を分かっている子にとっても魅力あるものではない。もっと、自分の目の前にいる児童の声を聴きとり、想像して「学びのおもしろさ」「知的探求の面白さ」を創出していかなければいけないということが自覚化される話し合いになった。
 第3回は、「子どもたちは、発見すること、考えることが大好き!」を掘り起こす教材の工夫 ~教科書を生かしつつ教科書を乗り越えて~というテーマで行った。
 かねてから、「教科書を教える教師の急増」に危惧してきた。教科書は今目の前にいる児童のために作られてはいない一般的な教材。目の前の児童を想定し、目の前の児童と対話しながら、補足したり、作り変えたり、組み替えたりしながら教材化しないかぎり子どもたちにとっては、無味乾燥な教材でしかないのではないか。教師たちの多くの授業に「子どもたちが存在していない。」そこで、子どもたちは「発見が好き、考えることがきらいではない」ということが垣間見える実践を紹介しながら議論した。
 だが、話し合いの中で中心を絞り切れず深めきれなかったのも事実である。
 2021年度は、1時間の授業づくりに的をしぼり、より具体的な研究会にしたい。

【活動代表】内藤順子

【日時・内容・場所】
第1回:6月18日(木)
内容:「教師は伝達者ではなくいかにして媒介者たりうるか」
場所:オンライン(Zoom) 参加者7人

第2回:8月20日(木)
内容:「同一空間の中で、発達に応じた課題と自発的な学習の組織化は可能か」
場所:オンライン(Zoom) 参加者5人

第3回:12月17日(木)
内容:「子どもたちは、発見すること、考えることが大好き!」を掘り起こす教材の工夫
    ~教科書を生かしつつ教科書を乗り越えて~
場所:オンライン(Zoom)

(全3回。のべ参加人数15名)