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【報告】12/6学習会 日時:2024年12月6日(金) 19:30~21:00 内容:「子どもアドボカシーを知っていますか~子どもの声を聴く意味 そして私たち一人ひとりができること~」実践報告 講師:相澤京美氏(NPO法人子どもアドボカシーを進める会 TOKYO) 参加者:4名 今回は、5月に行った子どもアドボカシーについての学習会で、講師の相澤氏からのお話を伺ってそれぞれの場所と立場で実践したことの報告を行いました。そして、実践報告に対して改めて相澤氏からもお話を伺いました。 中学校での実践では、中学2年の道徳の授業で「子どもの権利条約」を題材とした実践が報告されました。人権という言葉自体が子どもにとってなじみの薄いものであることもあり、「虐待」や「戦争」といった状況に置かれた子どもを守るための限定的なものとして理解されている様子が見られました。ただ、「子どもの権利条約」の条文を見る中で、家族との関係や日々の生活の中で疑問に思っていることを話題に挙げる生徒もおり、「人権」という言葉を身近なものと捉え直す様子も見られました。一度きりの授業であったため、生徒はアドボカシーにおいて重要な「意思表明権」、そして「子ども自身に権利がある」ということを知るだけで終わってしまいましたが、3年では公民の授業も始まるため、今回1回の授業で終わることなく、次の授業に繋げていきたいと思いました。授業でできることには限界があることも共有し、日常の中で「これがあなたの権利だよ」と伝えて浸透させていくことが大事と、相澤氏からお話をいただきました。 児童養護施設での実践では、県のアドボカシー事業の方々が来園したときの子どもたちの反応や、「まず子どもの考えを聴くこと」を意識した中で、できたこととできなかったことについての報告となりました。これまで分からなかった子どもの考えを知ることができたこと、子どもが話せば話すほど混乱していったり、できない現実にぶつかったりと、そのフォローの難しさや時間の足りなさ、その中での変化も感じたこと、などの話が挙がりました。相澤氏からは、施設が子どもアドボカシーを実践していくことが一番難しいこと、施設で「助けて」と言える関係性が作れると良いこと、などのお話をいただきました。 相澤氏からは、歴史的な観点からも権利は圧に対するものとして生まれた概念で、大人への抵抗ということ、それを現在の学校現場でフォーマルアドボカシーという立場で実践していくことには限界があるが、意見をいつでも聞くよという姿勢を見せておくことが大事とのお話、学校でアドボカシー事業を取り入れている事例も増えているとのお話もありました。今も、これからも、子どもたちと接しているすべての大人が、子どもの権利について考えていくこと、権利を尊重していくことを怠らないこと、そしてその考えを浸透させていくことが必要で、わたしたちに与えられている課題であると感じました。
学校支援活動
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うれしい出来事 【エステレージャ教室 8~9月報告】 9月、エステレージャにうれしい出来事がありました。 中学生のSさんが書いた平和に関する作文が、学校代表の作文の1つに選ばれ、新聞に掲載されたのです。教室では、帰りの会でSさんに作文を披露してもらい、スタッフも作文を聞いた子どもたちもSさんの努力を讃えました。 Sさんは、小学校2年生からエステレージャに通っている子どもです。作文が苦手で、作文の宿題があると教室に持ってきて、スタッフと一緒に作文に取り組んでいました。小学校2年生の時には、「作文をどうやって書いたらいいか分からない。でも、先生が『1年生の時に教えたから教えません。』と言ったから・・・書けない。どうしよう。」と話していたことがあります。外国人の子どもにとって、作文はとてもハードルが高い学習活動で、日本語を上手に話せていても、作文が書けないことはよくあることなのに、一度教えたから教えないというのは・・・とスタッフの話題になったことが思い出されました。 Sさんの作文が、私たちスタッフに2つのことを教えてくれました。1つは、継続することが力になっていくということです。Sさんは作文を書くときには、いつもスタッフと話をしながら、自分の経験や意見、考えを話し、それを作文に書いていくということを続けてきました。作文は苦手で面倒だけれども、課題にまじめに取り組んできました。あきらめず続けていくことで、力がついてくるということをSさんの作文が教えてくれました。 もう1つは、自分の意見や考えを言葉にする力を育てることの大切さです。Sさんが平和の作文に取り組んでいた時、中学校2年生のKさんも人権作文に取り組んでいました。Sさんと同じように、スタッフはKさんの経験や考えを聞きながら進めていきました。人権という言葉を確認した後、人権が守られているあるいは侵されていると感じることはないか、それに対してどんなことを感じるか、考えているかなど、まずKさんの経験や考えを聞こうとしました。しかし、Kさんからは言葉が出てきませんでした。人権というテーマは難しいテーマで、大人でも作文を書くのが難しいので、どんな言葉でもいいから考えていること、思っていることを自分の言葉で話してほしいと思いました。しかし、Kさんから言葉が出てこなかったため、作文が書けないまま終わってしまったということがありました。この時、対応していたスタッフはKさんが自分の考えや意見を言葉にできないことを残念に思いました。Kさんも低学年から教室に通ってきている子どもで、小学生の時には不平不満も含めて学校であったことをよく話してくれていました。しかし、自分の言葉で考えや意見を表明することができなかったのです。Kさんの作文を支援している中で、事実を伝えるだけではなく、思いや考え、意見を持つこと、そしてそれを表明する言葉が持てるように支援することが必要だと感じました。 Sさんの作文は、学習を支援することはもちろん必要ですが、自分の意見や考えを持ち、それを表明する言葉が持てるような支援をすることが必要であるということも教えてくれました。Sさんの作文は、エステレージャが目指すべき課題も教えてくれました。
外国人支援・こども支援活動
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No.65私たちの問題として Ed.ベンだよりNo.65が発行されました。 今回のEd.ベンだよりのタイトルは「わたしたち」の「問題」として、再度考えてみる~先生は勉強だけを教えていればいい?PARTⅡ~」です。 Ed.ベンだよりNo.65ダウンロード ロシアによるウクライナ進行が始まってはや1000日が経過しました。事態は全く収束しません。イスラエルによるガザ地区への侵攻も、周辺地域に対する攻撃も全くおさまりません。 この日本では、紛争こそ起こっていませんが、いわゆる「安全保障環境」の流動性が増しています。そうした中で、先日オーストラリアが日本から軍艦を調達する可能性が現実味を帯びてきているというニュースが出ていました。次期戦闘機の開発も日本・イギリス・イタリアの三ヵ国による国際共同開発がスタートしています。この国は、武器輸出(世の中では「防衛装備品移転」と言うそうです)国になりつつあります。 いつの世の中も、戦争・紛争は大人たちの都合で始まり、子どもをはじめとする多くの弱者がとてつもなく大きな迷惑をこうむります。「戦争とは何か」「平和とは何か」、それらについての知識だけでなく、それらに対してどう考えるか、どうすれば戦争を防げるか、大人も子どもも一緒になって話し合い、考えを深めたいものです。ぜひ今回のEd.ベンだよりをお読みください。 また、025年度の教育講演会のお知らせ、12月中に開催されるEd.ベンチャーの学習会についてもお知らせしております。みなさまの参加をお待ちしております。
Ed.ベンだよりPDF
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2025年01月16日 教育講演会 2025教育講演会開催!
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この度、2025年度定期総会を下記のとおり開催する運びとなりました。 会員ではない方でも参加可能です。(ただし、議決権はございません。) 当法人の活動を知っていただく良い機会であると思いますので、 当方の活動にご興味をお持ちの方は、ぜひご参加ください。 日時:2025年2月16日(日)10:30~11:30(受付開始10:10) 場所:冨士見文化会館1階101号室 及び オンライン(Zoom) 大和市中央5丁目2-29(小田急江ノ島線・相鉄線 大和駅 小田急口から徒歩5分) ※Zoom によるオンラインでの参加をご希望の方は、2月8日(金) までにEd.ベンチャーの事務局にメールでご連絡ください。資料と ID・パスコードをお知らせいたします。 議案:第1号議案 2024年度事業報告・収支決算及び監査報告について 第2号議案 2025年度事業計画・収支予算について 第3号議案 2025年度役員選任について ※総会当日の午後、同じ会場にて、教育講演会を開催いたします。講演会へもぜひご参加ください。
2025年01月16日 お知らせ 2025年度定期総会の開催
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日時:2024年12月6日(金) 19:30~21:00 内容:「子どもアドボカシーを知っていますか~子どもの声を聴く意味 そして私たち一人ひとりができること~」実践報告 講師:相澤京美氏(NPO法人子どもアドボカシーを進める会 TOKYO) 参加者:4名 今回は、5月に行った子どもアドボカシーについての学習会で、講師の相澤氏からのお話を伺ってそれぞれの場所と立場で実践したことの報告を行いました。そして、実践報告に対して改めて相澤氏からもお話を伺いました。 中学校での実践では、中学2年の道徳の授業で「子どもの権利条約」を題材とした実践が報告されました。人権という言葉自体が子どもにとってなじみの薄いものであることもあり、「虐待」や「戦争」といった状況に置かれた子どもを守るための限定的なものとして理解されている様子が見られました。ただ、「子どもの権利条約」の条文を見る中で、家族との関係や日々の生活の中で疑問に思っていることを話題に挙げる生徒もおり、「人権」という言葉を身近なものと捉え直す様子も見られました。一度きりの授業であったため、生徒はアドボカシーにおいて重要な「意思表明権」、そして「子ども自身に権利がある」ということを知るだけで終わってしまいましたが、3年では公民の授業も始まるため、今回1回の授業で終わることなく、次の授業に繋げていきたいと思いました。授業でできることには限界があることも共有し、日常の中で「これがあなたの権利だよ」と伝えて浸透させていくことが大事と、相澤氏からお話をいただきました。 児童養護施設での実践では、県のアドボカシー事業の方々が来園したときの子どもたちの反応や、「まず子どもの考えを聴くこと」を意識した中で、できたこととできなかったことについての報告となりました。これまで分からなかった子どもの考えを知ることができたこと、子どもが話せば話すほど混乱していったり、できない現実にぶつかったりと、そのフォローの難しさや時間の足りなさ、その中での変化も感じたこと、などの話が挙がりました。相澤氏からは、施設が子どもアドボカシーを実践していくことが一番難しいこと、施設で「助けて」と言える関係性が作れると良いこと、などのお話をいただきました。 相澤氏からは、歴史的な観点からも権利は圧に対するものとして生まれた概念で、大人への抵抗ということ、それを現在の学校現場でフォーマルアドボカシーという立場で実践していくことには限界があるが、意見をいつでも聞くよという姿勢を見せておくことが大事とのお話、学校でアドボカシー事業を取り入れている事例も増えているとのお話もありました。今も、これからも、子どもたちと接しているすべての大人が、子どもの権利について考えていくこと、権利を尊重していくことを怠らないこと、そしてその考えを浸透させていくことが必要で、わたしたちに与えられている課題であると感じました。
2025年01月05日 インクルーシブ社会を目指す学習会 【報告】12/6学習会
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この度、兵庫県神戸市を中心に外国人支援の活動を行っている神戸定住外国人支援センター様より、定住外国人の子どもたちを支援するための奨学金クラウドファンディングに関するお知らせをいただきました。 このクラウドファンディングを行っている「定住外国人子ども奨学金実行委員会」は、外国にルーツを持ち、兵庫県に住む、経済的に困難な環境にある子どもたちの高校入学・高校生活を支援しています。 また、奨学金の支給にとどまらず、奨学生との対話を通じて3年間の高校生活を見守り、卒業できるように、また卒業後のさらなる飛躍を見越して、必要な伴走支援を行っています。 今回のクラウドファンディングを機に、財政を改善するとともに、 さらに多くの方々に外国人生徒の現状と奨学金について広く知っていただきたいとのことです。 このクラウドファンディングの詳細や寄付の方法については、下記のリンクをご覧ください。 https://congrant.com/project/kfcscholarship/13731 ご興味のおありの方は、是非ご覧いただき、参加等についてご検討いただければ幸いです。 よろしくお願いいたします。
2024年12月20日 お知らせ KFCのクラウドファンディングについて
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2024年12月12日 お薦めの書籍・文献 ドイツは過去とどう向き合ってきたか
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2024年12月06日 Ed.ベン便り No.65私たちの問題として
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日時:2024年7月4日(木) 19:30~21:00 事例:「意思疎通の難しい子どもへの支援」(事例提供:座間市立中学校教諭) 参加者:4名 今回は、自分の意思・気持ちを言葉で伝えるのが難しい子どもの事例について考えました。これまで学校では、保護者との面談を定期的に行い、様々な会議で支援体制の充実をはかってきました。保健室でのクールダウンや、スクールカウンセラーによるソーシャルスキルトレーニングの実施。主に支援級生徒を見ている支援員についてもらったり、市の教育研究所からの職員派遣など、様々な大人がその生徒にかかわることで、生徒理解は深まってきました。 学習会の中では、対象の生徒に対して、何ができるようになったかばかりに目がいってしまうが、「周りの支援者(子どもたち)が増えたかがすべて」という発言が印象に残りました。2学年に進級し、周りの生徒の理解も深まり、そっとしておく場面や穏やかに声をかける場面が見られます。しかし、リアクションのなさや制止に応じられない状況に対し、どのように声をかければよいか分からず、子どもたちの中の迷いも見られます。 日常の生活、行事などの取り組みを通して、周りの子どもたちがどのように変化していくのか。”その子”の変化を追う視点だけでなく、集団全体の変容に視点を移して子どもの様子をみとりたいと思いました。
2024年10月28日 インクルーシブ社会を目指す学習会 【報告】7/4学習会
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日時:2024年6月4日(火) 19:30~21:00 参加者:7名 内容:「インクルーシブ教育実践推進校から見るインクルーシブ教育のこれから」 講師:竹本 弥生氏(県立綾瀬高等学校 元校長) 今回は、竹本先生を講師に迎え、大和市シリウスの中会議室にて対面での学習会を開くことができました。 県立高校におけるインクルーシブ教育推進の経緯から現在の状況について知ることができました。現在、特別募集の志願資格では、保護者の送り迎えを認め、学校説明会への参加も必須ではなくなりました。また、県外からの入学も認められています。不本意入学の懸念はあるものの、中学生が希望の進路を選択しやすくなってきたと感じます。 さらに、綾瀬高校の「授業のユニバーサルデザイン化」や「複数の教科での学習支援」など、すべての生徒が学びやすい環境を整える工夫は校種にかかわらず必要な手立てであると、感じることができました。 知的障害を持ち、特別募集により入学をした生徒のためのカリキュラムについては、初めて聞く話ばかりで、非常に学びが多いものになりました。インターンシップの実施や、支援員とのリソースルームの活用が、生徒自身が将来や現在の学習を考える上で大きな助けになると思いました。一般募集で入学した生徒とは違う授業を受けることに抵抗を示す生徒、自己の特性理解に難しさを抱える生徒など、インクルーシブ教育推進校だからこそ生まれる生徒の困り感に寄り添うことの難しさを感じました。また、学びの場を確保するための教室環境や職員の意識など、支援体制を維持するための課題についてもお話を聞けたことがよかったです。 現状、特別募集には「知的障害のある者」という要件が残っており、障害の有無(自認)という要件が外れたとき、インクルーシブな教育の実現に一歩近づくと感じました。様々な課題を抱えながらも、インクルーシブ教育は少しずつ前進を続けていると実感ができた学習会となりました。 【参加者の感想より】 ・中学校でこれまでも3学年を担当することがありました。「特別募集で試験がないから」「手帳を持っているから」と、安易にインクルーシブ推進校を選ぶ生徒を見たことがあった。入学しやすさではなく、「その学校の魅力」や「自分の将来」を考えたうえで高校を選べる生徒に育てたい。学習会で話題にあがった、「部活動の豊富さが養護学校との違い」という言葉が印象に残りました。「障害を持っている生徒の進学先は養護学校しかない」という誤った認識を持っていた過去の自分。そして、進学先決定で悩む生徒に「学校は自分で決めていいんだ」と伝えたいと思いました。 ・高校でのインクルーシブ教育実践校の実態を知ることができてとても勉強になりました。理念を制度として実現させていくことはとても難しいことだと改めて実感する機会になりました。他方で、難しい部分が見えたことで、何を考えていけば変わるかということも考える機会になりました。 ・(中学校で)進路指導をしている中で、インクルーシブ教育推進校ということは知っていたが、実際どのようなことをしているのかまでは知らなかったので、実際の姿を知ることができて大変勉強になりました。もともとのシステムが根本的にインクルーシブにつくられているわけではないため、様々な制度利用に関する制限があるなど、非常に難しいはざまの中で高校の先生方が尽力されていることを実感しました。本日はありがとうございました。 ・本日はありがとうございました。インクルーシブ実践推進校として、生徒のニーズに応えることができるよう様々な取り組みをしていると思いますが、卒業後のフォローなど、課題もあるように感じました。 ・(教育)実習でインクルーシブ教育について少し説明を受けたが、今回の学習会で細かい仕組みや制度などを知ることができた。実際に(綾瀬高校で)授業を教えたときは、特別募集で入学した生徒かどうかは分からなかった。生徒に対してどのような支援を行っているのか、(現在中学校で)特別支援学級をみている立場となって、余計に興味がわきました。
2024年10月28日 インクルーシブ社会を目指す学習会 【報告】6/4学習会
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2024年10月28日 お薦めの書籍・文献 どうして戦争しちゃいけないの?
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【エステレージャ教室 8~9月報告】 9月、エステレージャにうれしい出来事がありました。 中学生のSさんが書いた平和に関する作文が、学校代表の作文の1つに選ばれ、新聞に掲載されたのです。教室では、帰りの会でSさんに作文を披露してもらい、スタッフも作文を聞いた子どもたちもSさんの努力を讃えました。 Sさんは、小学校2年生からエステレージャに通っている子どもです。作文が苦手で、作文の宿題があると教室に持ってきて、スタッフと一緒に作文に取り組んでいました。小学校2年生の時には、「作文をどうやって書いたらいいか分からない。でも、先生が『1年生の時に教えたから教えません。』と言ったから・・・書けない。どうしよう。」と話していたことがあります。外国人の子どもにとって、作文はとてもハードルが高い学習活動で、日本語を上手に話せていても、作文が書けないことはよくあることなのに、一度教えたから教えないというのは・・・とスタッフの話題になったことが思い出されました。 Sさんの作文が、私たちスタッフに2つのことを教えてくれました。1つは、継続することが力になっていくということです。Sさんは作文を書くときには、いつもスタッフと話をしながら、自分の経験や意見、考えを話し、それを作文に書いていくということを続けてきました。作文は苦手で面倒だけれども、課題にまじめに取り組んできました。あきらめず続けていくことで、力がついてくるということをSさんの作文が教えてくれました。 もう1つは、自分の意見や考えを言葉にする力を育てることの大切さです。Sさんが平和の作文に取り組んでいた時、中学校2年生のKさんも人権作文に取り組んでいました。Sさんと同じように、スタッフはKさんの経験や考えを聞きながら進めていきました。人権という言葉を確認した後、人権が守られているあるいは侵されていると感じることはないか、それに対してどんなことを感じるか、考えているかなど、まずKさんの経験や考えを聞こうとしました。しかし、Kさんからは言葉が出てきませんでした。人権というテーマは難しいテーマで、大人でも作文を書くのが難しいので、どんな言葉でもいいから考えていること、思っていることを自分の言葉で話してほしいと思いました。しかし、Kさんから言葉が出てこなかったため、作文が書けないまま終わってしまったということがありました。この時、対応していたスタッフはKさんが自分の考えや意見を言葉にできないことを残念に思いました。Kさんも低学年から教室に通ってきている子どもで、小学生の時には不平不満も含めて学校であったことをよく話してくれていました。しかし、自分の言葉で考えや意見を表明することができなかったのです。Kさんの作文を支援している中で、事実を伝えるだけではなく、思いや考え、意見を持つこと、そしてそれを表明する言葉が持てるように支援することが必要だと感じました。 Sさんの作文は、学習を支援することはもちろん必要ですが、自分の意見や考えを持ち、それを表明する言葉が持てるような支援をすることが必要であるということも教えてくれました。Sさんの作文は、エステレージャが目指すべき課題も教えてくれました。
2024年10月18日 子どもの居場所・学習教室 うれしい出来事
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2024年10月10日 Ed.ベン便り No.64追い詰められる子どもたち
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事例研究会は、外国にルーツを持つ子どもたちの具体的な事例を通して、かれらの背景にある事情や問題を読み解く力をつけていくというねらいで開催しています。今回は9月25日に開催した事例研究会の報告です。 【9月事例研究会】 日時:2024年9月25日(水) 19:00~21:00(オンライン)事例:「安心できる学校生活を送るための支援」 事例提供:大和市内中学校教諭参加者:4名 9月の事例研究会は、中学校の国際教室担当の先生から、来日して5か月となる中学2年生Aさんの事例を提供していただきました。Aさんは、母国で日本語の学習をしていたため少し日本語が分かる状態で来日しました。学校では、複数の先生方による日本語指導を行い、着実に日本語の力がついてきていましたが、学校生活でうまくいかないことが時間とともに出てきました。ストレスからか、腹痛や蕁麻疹といった身体的な不調や行事へ参加することの不安を訴えたり、定期テストの不安から、国際教室での取り出し指導を拒否したりといった行動が現れるようになり、1学期には友達とのトラブルも引き起こしました。学校では本人の困り感を聞き取り対応しました。Aさんは夏休みに母国へ一時帰国をして2学期を迎えました。行事への不安は抱えているものの、クラスで助けてくれる友達ができ、行事の練習に参加するようになり、Aさんには少しずつ変化が表れています。学校では、1学期に引き続き毎朝国際教室担当の先生が声掛けをしたり、通訳派遣を依頼して母語でAさんの困り感や本音を聞き出したりしています。Aさんとの話から、保護者の勉強に対する厳しさを感じることがあり、Aさんが反抗をしても父親に説き伏せられてしまうという話も出てきているという報告がありました。 報告を受けて、アドバイザーの先生から、Aさんには留学生に似た様子が感じられるというお話がありました。留学生の中には、母国の学歴社会や親の圧を逃れるために留学という道を選ぶ学生がいるが、それに似ている。日本の生活を経験して母国に一時帰国し、日本と母国を比べて違いを感じたのではないか。母国では学歴社会を生き抜いていい会社に入るという親の圧が強い中にいたが疑問を感じることもなかったが、日本の生活を経験し、これまでとは違う価値観、本人の意思を尊重するという経験に出会い、価値観の葛藤の中にいるのではないか。そして、この先、親とうまくいかなくなるということが予想される。支援者は、日本で学んだことが力になる支援を提供する、母国と日本の違いや母国とは違う考え方や価値観があることを提示する、最終的にどちらに居たいのかを自己決定できるように価値観の多様性があることを伝えることが必要である。その際、本人の問題を社会と結びつけて話すということが大事であるというアドバイスがありました。 今回の研究会では、事例を通して、アドバイザーの先生から「留学生に似た気質」というものについて教えていただきました。母国の習慣や文化と違う日本社会の中で生きている中で、外国ルーツの子どもたちは葛藤を抱えていきます。Aさんのように小学校高学年や中学生で来日した子どもたちは、その葛藤を感じやすいのではないかと思います。葛藤がどこから来るのか、そういった状況にある子どもたちに支援者がどう向き合ったらよいのかを学ぶ機会となりました。価値の多様性を伝えるという向き合い方があるということ、子どもが自己決定するための知識を提示するという支援の視点を持つことの必要性を知ることができました。外国ルーツの子どもの支援というと、日本語や教科学習の支援をすることと考えがちで、多様な価値観や自己決定する際の資源を提示するという支援者の役割を意識しないことが多いのではないかと感じます。支援の在り方を見直すきっかけとなる研究会となりました。
2024年10月09日 外国人の子ども理解の学習会 【報告】9月事例研究会