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10月10日学習会を開催します インクルーシブな社会を目指すための学習会では、下記のとおり学習会を開催いたします。みなさまのご参加をお待ちしております。 テーマ:中学校におけるインクルーシブ実践の事例研究 講師:藤本 健氏(座間市立相模中学校) 今回の学習会は、中学校におけるインクルーシブ実践の事例研究の2回目となります。 今回は、実際にクラス担任として実践されている座間市立相模中学校の藤本健先生にも来ていただいて、事例について考えていきたいと思います。 1回目参加されていない方も、ぜひ参加していただき、一緒に考えていけたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。 日時:2024年10月10日(木)19:30~ 場所:大和市シリウス603号室 参加費:500円(資料代として) 参加をご希望の方は、事前に下記担当者まで所属とお名前をメールでご連絡ください。 問い合わせ先/参加申し込み: hiratukamorio@yahoo.co.jp 090-2302-0121(担当:森尾)
学校支援活動
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2024年1学期の様子 【エステレージャ教室 4~7月報告】 4月から7月まで、1学期間のエステレージャの様子を報告します。 1学期の間に、新たな子ども4名とスタッフ1名が加わりました。子どもは2組のきょうだいです。ペルー国籍の兄妹とアルゼンチン国籍の兄弟です。2組の新たな友達を迎え、教室は賑やかになりました。初めて教室に来た子どもたちは少し緊張気味の様子ですが、かれらを迎え入れる子どもたちは、休み時間に一緒に遊んだりかれらの勉強に興味を持ったりと、とてもフレンドリーに受け入れていました。新たなスタッフはガーナ出身の方で、子どもたちの英語の勉強のサポートをしてくれています。日本語を学習中のため、子どもたちのサポートをしながら、日本語の学習で分からないところがあると日本人スタッフに教えてもらいながら学習をしています。大人の学ぶ姿が、子どもたちの学びの手本になっていってくれるのではないかと思います。 子どもとスタッフの数の変化だけではなく、4月に進学・進級して変化の見られる子どもたちもいました。中学生になったSさんは、部活に入りました。部活の活動日を検討して、活動日が毎日ではない部活に入り、勉強と部活動の両立を図っています。Sさんは、保護者の送り迎えで教室に来ていたので、保護者の送り迎えができない時は教室をお休みしていましたが、6年生の途中からは「エステレージャは楽しいから来たい」と言って、一人で教室に通うようになりました。Sさんは、少しずつ行動範囲を広げている感じがします。同じく中学生になったK君は、部活動をしないという選択をして、勉強を頑張っています。難しそうで面倒な国語の課題が何回か出されて取り組んでいました。毎回投げ出さずに取り組むうちに、やり方のコツをつかんできたようで、次第に短時間で課題を終わせられるようになりました。K君からは、「継続は力」であることを感じました。 もう一人、変化の見られる子どもがいました。中学2年生になったE君です。1年生の時には、課題や宿題を出さないことが多く、学校生活全般にあまり意欲的ではありませんでした。ところが、2年生の夏休みには、7月に開催された学校のチャレンジルームに参加して宿題に取り組み、「宿題が終わらなかったから8月のチャレンジルームにも参加したい」と言い、宿題を終わらせたいという思いを持つようになりました。E君は「今まで宿題を出してこなかったから、今度は出したい。」と話していました。前向きになったE君の変化に驚きました。以前E君は「2年生の成績は受験に関係するから2年生になったら勉強する。」と言ったことがありましたが、E君は有言実行しているようでした。 嬉しい変化の見られた子どもがいる一方で、良い方向への変化を待ちながらスタッフが心配をしている子どももいます。2年生途中から体調不良を訴え、学校生活が不安定になっている中学3年生のNさんです。Nさんは教室に来ても学習には取り組みません。気持ちが安定しなければ学習には向かえない、強制しても学習内容は身に付かない、気持ちが学習に向かうようになるまではNさんがしたいことさせて見守っていこうとスタッフは考え、Nさんを見守ってきました。Nさんはスタッフからギターを習ったり手芸をしたり、本を読んだりとその時したいものを教室に持ってきて取り組んでいます。Nさんが先生になって、手芸教室を開いたときには、生き生きと友達やスタッフに教えてくれていました。スタッフや友達との会話も次第に増えてきて、子どもたちの遊びの輪に入るようになってきました。しかし、依然として勉強には興味を示しません。学校の課題を持ってくることもたまにありますが、課題を開いていても進まず、「やりたくない」感を出しています。そんなNさんですが、「8月に説明会に行く。」「A高校かB高校に行きたい。」と高校受験の話をしはじめました。高校に行きたいという気持ちが出てきていることにほっとしましたが、まだ勉強に気持ちが向かっていないNさんの希望通りになるのだろうかという心配があります。Nさんが学習に向かうのはいつになるのだろうかというもどかしさも感じますが、「Nさんが勉強したいと思ったときに対応する」という心構えで、今はNさんを見守るしかありません。
外国人支援・こども支援活動
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No.63 選択肢がない! Ed.ベンだよりNo.63が発行されました。 今回のEd.ベンだよりのタイトルは「私たちには選択肢がない」です。 Ed.ベンだよりNo.63ダウンロード 私の父は来年90歳を迎えます。その父がTVを見ながら時々恨めしそうに呟きます。「なあ、今はスマホがないと、な~んにもできない時代になっちゃったんだなぁ・・・。」その言葉をつぶやくときは、TVの画面に二次元バーコードが映し出されていたり、「スマホで検索!」というアナウンスが流れていたりします。 では、不便だからと言って、父が新たにスマホを契約するでしょうか?仮に契約したとしても、震える指先で画面の操作はできるでしょうか。もちろん、スマホをバリバリ使いこなす後期高齢者の方だってたくさんいらっしゃることは知っています。でも、デジタル化の様々な利便性が叫ばれる中で、実はそこから取りこぼされていく人たちが相当数存在するような気がしてなりません。そしてこうした人々の選択肢は確実に狭められていくように思います。 今回のEd.ベンだよりをお読みいただき、多様性の重要さが叫ばれるで、改めて今日の社会のありようについてお考えいただければと思います。 また、10月まで予定されているEd.ベンチャーの学習会についてもお知らせしております。多くのみなさんのご参加をお待ちしております。
Ed.ベンだよりPDF
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インクルーシブな社会を目指すための学習会では、下記のとおり学習会を開催いたします。みなさまのご参加をお待ちしております。 テーマ:中学校におけるインクルーシブ実践の事例研究 講師:藤本 健氏(座間市立相模中学校) 今回の学習会は、中学校におけるインクルーシブ実践の事例研究の2回目となります。 今回は、実際にクラス担任として実践されている座間市立相模中学校の藤本健先生にも来ていただいて、事例について考えていきたいと思います。 1回目参加されていない方も、ぜひ参加していただき、一緒に考えていけたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。 日時:2024年10月10日(木)19:30~ 場所:大和市シリウス603号室 参加費:500円(資料代として) 参加をご希望の方は、事前に下記担当者まで所属とお名前をメールでご連絡ください。 問い合わせ先/参加申し込み: hiratukamorio@yahoo.co.jp 090-2302-0121(担当:森尾)
2024年10月05日 インクルーシブ社会を目指す学習会 10月10日学習会を開催します
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外国人の子ども理解のための学習会活動報告 日時:8月6日(火)13:00~16:00 場所:大和市シリウス612(文化創造室)及びオンライン(Zoom)テーマ:「外国人の子どもの対話による自己形成~国際教室の実践を通して~」講師:大和市立下福田小学校 小林加奈氏、 座間市立東中学校 藤木仁美氏参加者:17 人 2023 年度は国際教室や家庭での対話が言語形成や人格形成だけでなく、記憶の結びつきに大きく関わっていることを学習した。 今年度は国際教室を担当した経験者に当時の実践経験を振り返ってもらいながら、改めて国際教室 での対話が 自己形成にどうつながっていくのか を講演してもらった。 小林氏からは、小学生の事例が挙がった。日本語とスペイン語のダブル言語である I 君の事例ではクラスの 3/4 から I 君の苦情を受ける日々はあるが、本人に話を聞くと問題行動の前には I 君自身が 100 %嫌な経験をしていたことが分かった。最初は「どうせ話したってわかんないでしょ」とネガティブだった I 君が身近な大人である担任と対話を続ける中で、突拍子もない夢や 思い付きの話が聞いてくれる他者のおかげで、夢に向けた計画を自分で軌道修正できるようになっていき、ポジティブな会話になっていった。対話によって経験が整理され、その経験が価値づけられていく。言葉を獲得していくことによって、より深く考えることができるようになる。安心できる対話相手がいることで、自分の気持ちを言葉にすることで整理ができ、自分の気持ちを分析できるようになる。よりよいものを目指す土台ができていくことで自己形成の確立へ向かっていくのではないかとまとめた。 藤木氏からは、中学生の事例が挙がった。座間市では国際教室の実践前例や市からのサポートが乏しく、振り返ると藤木氏本人も担当者として自身の在り方を模索していた。自分についてもっと知りたい中学生にとって 、 表面的な体裁だけ でなく 他愛のない会話から自分のことを語ることができる必要であり、その機会が中学校はとても少ないと振り返った。中国語を母語とする N さんは、クラスになじみたいが、場違いな発言からトラブルも多かった。もっと自分を見てほしい、友達が欲しいと国際教室ではひたすらおしゃべりをすることもしばしばあった。言いたいことがうまく伝わらない葛藤もありクラスで空回りすることも多かったが、 N さんの面白さを認めてくれる人も出始め、居場所ができていった。小3でアメリカから日本へ来た J さんは、 母は教育熱心だが、自分から交友関係を広げること が苦手で静かに過ごすことが多かった。中学 3 年の人権作文で「日本での暮らしにくさ」について語り、受賞したが、全校朝会での発表は拒んだ。堂々と発表してほしかったが安心できる環境ではなかったのだろうと当時を振り返った。特に中学校ではクラスや家庭の中では目立たないように、怒られないようにと必死で身を潜めていることも多い。「ここは自分を出してもいいんだよ、リラックスしていいんだよ」と安心できる環境が必要だとまとめた。 参加者からの感想・国際教室の担任の良さは「その生徒の話をじっくり聞いてあげられること」だ と再認識しました。聞いてみたい、知ってみたいとその生徒に興味を持つことが大切ですね。国際級の生徒のケース会議が今後あったら、かれらの保護者の文化的背景を話せる場面が作れる といいなと思いました。 ・子どもと向き合って会話を紡ぎだしている様子がうかがえてとても勉強になりました。外国ルーツの子どもたちもこんな感じの先生に出会えたら幸せだろうなと思いました。 ・国際教室での担当の経験を経て市にももっと要望を言ったり、よりよい座間市にしていきたいという思いが強まりました。もっと国際教室でこんなことできるよと勉強面だけでないと ころも生徒や保護者にも伝えていけたらよいと思いました。 ・国際教室を運営するうえでの障壁がどんなものなのか鮮烈に伝わってきました。パッケージ教育と揶揄されることもある学校教育ですが、そこから「外れた」ニーズを持つ子どもに対してどれだけの支援を、対話を通じて行えるかという問題は、看過できないものだと感じました。まだ体系化されていない教育を行う上で大切なのは自己表現などのコミュニケーションであり、発表者の 方が述べられていた「取り出されると習熟度に差が生まれて困る」といった発言のような知識詰め込み教育で授業を行っ ていると、そういった柔軟性が生まれないのかもしれないと思いました。
2024年10月05日 外国人の子ども理解の学習会 【報告】8月6日学習会
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2024年08月29日 Ed.ベン便り No.63 選択肢がない!
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6・15日時:2024年6月15日(土) 13:30~15:30 場所:シリウス607 テーマ:「子どもが戦争と平和への理解を深めるためには」 参加者:10名(うちオンライン1名) 今回は、「子どもが戦争と平和への理解を深めるためには」というテーマで、学校での平和教育の現状を振り返り、課題や改善策について、参加者のみなさんと意見を出し合いましたした。 現状では、児童・生徒の発達段階に応じて、小学校3年生から国語科や社会科、道徳、総合、学校行事などで、中学校ではこれに加えて英語などでも、平和に関する教材が扱われています。しかし、子どもたちが今の自分たちとつなげて、自ら平和を考えるところまで、十分に教えられていません。 課題としては、日本の教育では主に太平洋戦争しか教えておらず、今の子どもたちがイメージする戦争とギャップがあるのではないか、教材で扱う前に、日頃から社会問題について話す雰囲気づくりが必要なのではないか、各教科で扱う教材には、教科としての狙いが別にあるため、教科の中で平和を十分に扱おうとすると苦しいのではないか、自分の身の回りがどうあるべきか、自分の生活に戻して考えることが必要なのではないか、などの意見が出されました。 次に、小学校6年生の総合の時間に、子どもたちが戦争について調べ学習をした実践報告を聞きました。もっと戦争について知ってもらおうと、友だちに働きかけるなど、自分たちで学んだことを広げる姿が見られた一方で、歴史について教える時に、教科書には被害の部分が書かれていることが多く、加害についてどこまで触れたらよいのか、また、意識の高い一部の児童だけではなく、全ての児童が考えられるような手立てが必要だという課題も挙げられました。 学習会を通して、平和は遠いものではなく身近なもので、日常で語られるべきものだという言葉が印象に残りました。大人がまずは知ること、語ることをして、日頃からもっと子どもと一緒に平和について考えていきたいと思いました。
2024年08月16日 理論学習会 【報告】6/15学習会
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2024年08月14日 お薦めの書籍・文献 いま平和とは
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【エステレージャ教室 4~7月報告】 4月から7月まで、1学期間のエステレージャの様子を報告します。 1学期の間に、新たな子ども4名とスタッフ1名が加わりました。子どもは2組のきょうだいです。ペルー国籍の兄妹とアルゼンチン国籍の兄弟です。2組の新たな友達を迎え、教室は賑やかになりました。初めて教室に来た子どもたちは少し緊張気味の様子ですが、かれらを迎え入れる子どもたちは、休み時間に一緒に遊んだりかれらの勉強に興味を持ったりと、とてもフレンドリーに受け入れていました。新たなスタッフはガーナ出身の方で、子どもたちの英語の勉強のサポートをしてくれています。日本語を学習中のため、子どもたちのサポートをしながら、日本語の学習で分からないところがあると日本人スタッフに教えてもらいながら学習をしています。大人の学ぶ姿が、子どもたちの学びの手本になっていってくれるのではないかと思います。 子どもとスタッフの数の変化だけではなく、4月に進学・進級して変化の見られる子どもたちもいました。中学生になったSさんは、部活に入りました。部活の活動日を検討して、活動日が毎日ではない部活に入り、勉強と部活動の両立を図っています。Sさんは、保護者の送り迎えで教室に来ていたので、保護者の送り迎えができない時は教室をお休みしていましたが、6年生の途中からは「エステレージャは楽しいから来たい」と言って、一人で教室に通うようになりました。Sさんは、少しずつ行動範囲を広げている感じがします。同じく中学生になったK君は、部活動をしないという選択をして、勉強を頑張っています。難しそうで面倒な国語の課題が何回か出されて取り組んでいました。毎回投げ出さずに取り組むうちに、やり方のコツをつかんできたようで、次第に短時間で課題を終わせられるようになりました。K君からは、「継続は力」であることを感じました。 もう一人、変化の見られる子どもがいました。中学2年生になったE君です。1年生の時には、課題や宿題を出さないことが多く、学校生活全般にあまり意欲的ではありませんでした。ところが、2年生の夏休みには、7月に開催された学校のチャレンジルームに参加して宿題に取り組み、「宿題が終わらなかったから8月のチャレンジルームにも参加したい」と言い、宿題を終わらせたいという思いを持つようになりました。E君は「今まで宿題を出してこなかったから、今度は出したい。」と話していました。前向きになったE君の変化に驚きました。以前E君は「2年生の成績は受験に関係するから2年生になったら勉強する。」と言ったことがありましたが、E君は有言実行しているようでした。 嬉しい変化の見られた子どもがいる一方で、良い方向への変化を待ちながらスタッフが心配をしている子どももいます。2年生途中から体調不良を訴え、学校生活が不安定になっている中学3年生のNさんです。Nさんは教室に来ても学習には取り組みません。気持ちが安定しなければ学習には向かえない、強制しても学習内容は身に付かない、気持ちが学習に向かうようになるまではNさんがしたいことさせて見守っていこうとスタッフは考え、Nさんを見守ってきました。Nさんはスタッフからギターを習ったり手芸をしたり、本を読んだりとその時したいものを教室に持ってきて取り組んでいます。Nさんが先生になって、手芸教室を開いたときには、生き生きと友達やスタッフに教えてくれていました。スタッフや友達との会話も次第に増えてきて、子どもたちの遊びの輪に入るようになってきました。しかし、依然として勉強には興味を示しません。学校の課題を持ってくることもたまにありますが、課題を開いていても進まず、「やりたくない」感を出しています。そんなNさんですが、「8月に説明会に行く。」「A高校かB高校に行きたい。」と高校受験の話をしはじめました。高校に行きたいという気持ちが出てきていることにほっとしましたが、まだ勉強に気持ちが向かっていないNさんの希望通りになるのだろうかという心配があります。Nさんが学習に向かうのはいつになるのだろうかというもどかしさも感じますが、「Nさんが勉強したいと思ったときに対応する」という心構えで、今はNさんを見守るしかありません。
2024年08月14日 子どもの居場所・学習教室 2024年1学期の様子
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事例研究会は、外国にルーツを持つ子どもたちの具体的な事例を通して、かれらの背景にある事情や問題を読み解く力をつけていくというねらいで開催しています。今回は7月13日に開催した事例研究会の報告です。 【7月事例研究会】 日時:2024年7月13日(土) 13:30~15:30事例:「問題行動が心配される子ども」 事例提供:大和市内小学校教諭参加者:6名 保護者が日本生まれの外国籍児童として国際教室に通室した経験のある小学生A君の事例が紹介されました。家庭では母語、学校では日本語という二重言語環境にいて、日本語での日常会話はできるように見えているけれども語彙は少なく、ひらがなカタカナがかろうじて読み書きできるといった状態で、学校の授業はほとんど分からず、勉強に興味を示さない。保護者も子どもが学校の勉強が分かっていないことについて無関心である。昨年度3学期になり、少しずつ勉強に取り組めるようになり、今は国際教室での勉強に意欲的に取り組むようになってきている。しかし、学校をさぼる、大人に暴言を吐くなど様々な問題行動があり、友達はほぼいない状態で、問題のある子と位置付けられてしまっている子どもの事例でした。事例とともに、A君に対する国際教室での取り組みも紹介されました。 協議では、まずA君の保護者への対応が話題となりました。A君の祖父母の来日の経緯を考えると、生活する(お金を稼ぐ)ことができればいいということが第一であるため、日本の学校で重視される読み・書きといったことが後回しとされる。そういった環境の中で育ったA君の保護者は学校の勉強ができなくても何とかなるという経験を持っている。保護者には日本の子育ての情報がないのかもしれないので、学校が子育てのやり方を保護者と一緒に考えるということが必要であるといったことが参加者から出てきました。 次に国際教室の役割が話題となりました。A君が国際教室で母語を話す姿を見ていて、母語を話す子どもが出てきたという報告がありました。アドバイザーの先生から、マイノリティの子どもたちは将来つながることがあるので、未来を想定して今の出会いを作っておくことが大切であるというアドバイスがありました。そして、外国人=日本語通じないというレッテルを貼られるということが話題となりました。このレッテルは社会の中だけではなく学校の中にもあり、「日本語が通じないから分からないでしょ」という理解をしたり、分からないから支援や指導をしなかったりということがある、ということが話題にのぼりました。アドバイザーの先生からは、言葉を通訳するのには時間がかかる、うまくいかなくてもいいと考えるおおらかな雰囲気が学校には必要で、先生が違いを面白がってくれるといいというアドバイスがありました。 今回の研究会では、ルーツを知ることで子どもの家族の考え方を理解することにつながることや子ども同士の将来のつながりを作るという役割が国際教室にあることを再確認することができました。そして、学校や先生が外国にルーツのあること、違いのあることについて、寛容であることが必要だと感じました。今、社会全体に寛容さがなくなっていると感じます。学校が寛容な場、多様性が認められている場であることが、外国ルーツの子どもたちが居やすい、居心地のよい学校になるのだと思います。
2024年08月10日 外国人の子ども理解の学習会 【報告】7月事例研究会
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事例研究会は、外国にルーツを持つ子どもたちの具体的な事例を通して、かれらの背景にある事情や問題を読み解く力をつけていくというねらいで開催しています。今回は3月27日と5月18日に開催した事例研究会の報告です。 【3月事例研究会】 日時:2024年3月27日(水) 19:00~21:00 事例:「不安を抱えた中学生」(事例提供:事例研究会担当スタッフ) 参加者:4名 2024年度初めの事例研究会は、研究会スタッフからの事例をもとに協議をしました。 スタッフから提供されたのは、学校生活の中で不安を抱えている中学生の事例でした。滞日期間は4年6か月となるが、来日以来オンラインで母国の教育を受けてきていたため、日本の学校生活経験は約1年という中学生についての事例でした。「日本語が分からない」「勉強が分からない」「心が通じあう友達がいない」という不安を訴え、欠席が多くなってきている中学生の様子が報告されました。 協議は、機会の平等のもと自己責任感が問われるようになっている学校について、参加者が意見交換することから始まり、学校が競争的になっていることが話題となりました。アドバイザーの先生からは、経験を客観視し言語化する力をつけていくこと、社会で生き抜く方略として自分で選択(自己決定)していく力をつけていくこと、失敗したらやり直せる環境を用意することが大切であるというアドバイスがありました。 教師は「教える」ということを役割と考えるため、子どもが「自己決定する」ということを忘れがちであると思います。「自己決定」という言葉はこれまでの研究会で何度も出てきましたが、忘れがちな言葉です。子どもと向き合うときには、自分自身の向き合い方(姿勢)を常に客観視していくことが必要だと思いました。 【5月事例研究会】 日時:2024年5月18日(土) 13:30~15:30 事例:「初めての国際担当経験から見えてきた子どもたちの困り感」(事例提供:大和市小学校教諭) 参加者:5名 昨年度、初めて国際教室担当を経験した大和市内の小学校の先生から事例を提供していただきました。国際教室を担当した当初は学習支援を中心に考えていたが、家庭状況によって、学習以外に困難を抱えていることに気づき、学校生活の支援の大切さを感じるようになったという報告がありました。さらに、子どもの支援を通して、担任をはじめとする教師の意識についても触れ、教師の意識の薄さが子どもの困り感につながっているように感じると、教師の意識の在り方についての指摘もありました。 これらの報告の後、三人の子どもの事例が挙げられました。このうち二人の子どもについては、国際教室の対応により、子どもの困り感が軽減されている事例でした。もう一人の子どもは、学校を休みがちで友達とのかかわりが少なく、語彙も少なくあまり話さない、教室での授業は静かに座って終わるまで過ごしているという、学校生活が不安定で今後が心配だという事例でした。 今回は、この子どもの事例をもとに協議をしました。協議の中では、子どもの家族関係が焦点となりました。家族関係のつらさがある子どもの支援では、まず家族関係を紐解いて支援の方向性を見つけていかなければならない、複雑さがないほうがいいというおおらかさのない目線があり、複雑な家庭環境の子どもへの支援が難しくなっているといった意見が出されました。また、国際教室と学級との関係も話題となり、国際教室の担当者が一番繋がりを作るのが難しいと感じているのが担任だと感じるということも話題となりました。子どもの語彙を増やすのは国際教室だけでは無理で、学級の教科の中での支援も必要であるのに担任と繋がる(担任の理解を得る)のが難しいという現状があることが挙げられました。 アドバイザーの先生からは次のようなアドバイスがありました。子どもの不安定さの背景には家族の不安定さがあり、子どもが話さないことの裏側を探る必要がある。家族の背景を知って家族関係の中で子どもができることが増えるようにしていく、子どもにとって資源が増えていくように支援をしていくことが必要である。さらに、近くにいる大人と話したことが良い経験に繋がっていくようにすることが大事である。 学校では、子どもの学習状況が中心に語られ、家族やルーツといった子どもの背景に目を向けること、語られることが少なくなっていると感じます。子どもの背景やルーツに目を向けることで、子どもの困り感を紐解くヒントが見つけられるということを知る研究会となりました。
2024年06月13日 外国人の子ども理解の学習会 【報告】3月・5月事例研究会
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2024年06月02日 Ed.ベン便り No.62状況の俯瞰的整理
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日時:2024年5月8日(水) 19:30~21:00(大和市シリウス 中会議室) 参加者:8名 内容:子どもアドボカシーを知っていますか~子どもの声を聴く意味、そして私たち一人ひとりができること~ 講師:相澤京美氏(NPO法人子どもアドボカシーをすすめる会 TOKYO) 今回の学習会では子どもアドボカシーをテーマに、子どもの権利条約や、子どもアドボカシーが注目されるきっかけ、実際の取り組みについて、子どもアドボケイトとして活動されている相澤氏からお話を伺いました。 学校現場が「アドボカシー」から遠い状況にあるという前提をふまえ、「まずは子どもたちに意見を表明する権利があることを知ってほしい」。また、子どもたちと接する大人に対しては「子どもが意思を表明する権利は、“いる”“いらない”という話ではなく、「当たり前にある権利」である」と知ってほしいとのお話がありました。 また、子どもアドボカシーにも独立型アドボカシー、フォーマルアドボカシー、インフォーマルアドボカシー、ピアアドボカシーなど、子どもたちの周りにいる大人それぞれの立場からできることがある(陥りやすいこともある)こと。それぞれの立場に良さがあり、子どもと接する誰しもが担えるものであるとのお話もありました。 私たち大人は、子どもからの声に対して、「解決しなければ」と考えがちです。しかし、たとえ願いが叶わなかったとしても、声をあげたことを誰かに受け止めてもらえた経験や、それに対して動く大人がいると知る経験が子どもにとっては大切であること。また、「意見を表明してよい」という実感を、声をあげる力に繋げていく必要があると感じました。この感覚は、子どもだけでなく、私たち大人にとっても必要なことだと感じました。 Ed.ベンチャーのこれまでの学習会でも指摘されてきた子どもの主体性とも繋がるお話で、学校現場でフォーマルアドボカシーとしてできることは何かを考える学習会となりました。 ≪ 学習会の感想より ≫ ●今回の学習会では、アドボカシーという言葉について理解することができました。 子どもの意思表明が権利であるという当たり前のことを知るとともに、大人である自分自身がその権利を侵害しているという事実を突きつけられました。教員として、そして1人の父親として、子どもとどう向き合えばよいのか、悩むことになりました。 これまでの教員生活の中では、子どもの気持ちを受け止め、どう現状を変えられるか、解決することができるかを考えてきた気がします。大切なことは、前提として子どもが「自分の意見を伝えていいんだ」と感じられる気持ちを持てているのか。そして、それを受け止めるだけの覚悟があるかどうかだと感じました。 フォーマルアドボカシーの立場で、自分自身に何ができるのか・・。教員という権力側から、どう子どもを尊重することができるのか・・。12月の実践報告の学習会に向けて準備をしたいと思います。 ●アドボカシーの立場のそれぞれの良さを知れてよかったです。特に自分は、できるだけピアアドボカシーを取り入れたいと思うのですが、まず「アドボカシー」や「独立アドボカシー」を知ることで話してみたい、ダメもとでも意見を言ってみる。もっと知りたい。そういう経験が子どもにも大人にも必要だと感じました。 ●子どもの意見を聞く上で、対面であることはどれくらい重視されるものでしょうか。教員としては生徒とのSNSは使用しませんが、生徒にとってはSNS上でのつながりを重視している場合も多いように感じます。姿の見えない相手でも、子どもにとってのアドボケイト足りうるのでしょうか。気になりました。 ●「子どもアドボカシー」という単語を初めて聞いたので、今回の勉強会で理念等を学ぶことができました。 子どもの意見表明権の問題は、大人の一方的な圧力によって侵害されているのではないかと思いました。他方で、SNSの発達で意見を表明する機会が昔に比べると増えているような気がするので、そのような場面をどう子どもたちに提供できるのか。その場面が増えることで、これまでよりもっと、子どもが意思表示ができるのではないかと、今回の勉強会を通して思いました。 ●子どもアドボカシーという言葉を初めて聞き、その内容を知ることができました。 Ed.ベンチャーの学習会の中でも「子どもの主体性」や「子どもはどうしたいのか」という言葉が出てきて、毎回、自分自身の子どもへの対応を振り返り、ハッとさせられてきました。今回のお話が、Ed.ベンチャーの学習会で指摘されてきたことにつながりました。 半面、今の子どもたちを取り巻く状況、特に学校は子どもアドボカシーから離れた状況にあると感じました。 ●「子どもたちの声を聴く」という当たり前に思えることがなかなか難しいのが、学校現場の実情なのかなと思います。コロナを経て、様々な場面で、指導的、制限的なことが多くなっていること、先生たちの余裕のなさが影響しているのでは、と感じます。 子どもたちと向き合うにあたって、アドボカシーという1つの視点を示してもらえました。かながわサポートドックについては、疑問を持っていたので、お話を聞けて良かったです。
2024年05月25日 インクルーシブ社会を目指す学習会 【報告】5/8学習会
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理論学習会報告 日時:2024年4月27日(土) 13:30~15:30 場所:シリウス603 テーマ:「戦後の学力観における学校現場の限界」 参加者:8名 今回は、戦後から現在までの「学力」の変遷に焦点をあて、時代ごとにどのような「学力」が求められてきたのかについて、整理しました。経済界が要求する人材育成と学校で子どもたちに求める学力観がつながっていて、時代と共にどんどん色濃くなってきていることが分かります。 戦後すぐ1947年には、経験主義の考え方に影響を受けた児童中心の教育観があり、まだ教科書がなく、教師が自分たちの裁量で教材を見つけてくるなど、各地域ならではの教育実践が数多くある時代でした。 その後、1958年以降、知識や技能の系統を重視する系統主義に変わっていきます。高度経済成長期の日本では、程度良質で均質な労働力の育成が求められ、経済成長を支える人材育成が進められます。 1980年以降はゆとり教育、1989年以降は個性重視と生きる力がキーワードとなり、社会の変化に対応していける「自己教育力の育成」への転換が謳われました。この頃、高度経済成長期が終わり、日本と同じ製品を外国でも作れるようになった結果、新しく高度で付加価値のある製品を生み出す必要が出てきました。 1998年ゆとり教育の拡大によって学力低下や学力格差の拡大が課題となり、脱ゆとり教育へ転換していきます。確かな学力や豊かな人間性、健康・体力を柱とする「生きる力」の育成に重点が置かれます。 現在は、予測困難な時代の中でも、自ら課題を見つけ、自ら学び、考え、判断して行動していく力が求められています。変化の激しい社会で生き抜く力を子どもたちに身につけようと、プログラミングや外国語など、さまざまなことを教えようしています。しかし、一方で不登校児童数は増加しており、その中でも無気力や不安から学校に来れない児童が半数以上いることが分かります。 また、都市部の学校に行くほど、クレーム対策としてクラス間の格差を減らそうと、教材や指導の仕方をそろえようという動きがあり、教師の裁量でのびのびと指導できる幅が狭くなっているところにも、学校の窮屈さを感じます。 子どもたちが安心して学べる学校をつくるにはどうすればよいのか、引き続き、次回以降の学習会でも考えていきたいと思います。
2024年05月22日 理論学習会 【報告】4/27学習会
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授業研究会報告:第1回(2月10日)・第2回(4月27日) 2024年度の授業研究会は、「どのような子どもも排除されない教室空間」を目指して、実際の授業実践を振り返ることを目的に実施されることになりました。第1回(2月10日)では、実際担任をしている先生たちを中心に、本事業の趣旨に則して、実際に学校や教室で起きていることを言語化することが試みられました。特に、ディスカッションの中で、観点を変えれば教室の見え方が変わることが明らかになり、どのような観点で教室をみているかを、教員自身が自覚的である必要が確認されました。 第2回(4月27日)は、新規採用として教員になった2人の先生から、勤め始めてから3週間ほどの間に経験したことを報告してもらい、それらについてディスカッションを行いました。発表者はいずれも特別支援担当として配属されたことから、特に、普通学級から取り出されてくる子どもとの関係で、多くの疑問を感じたことがわかるレポートでした。特に印象的だったのは、教員の意識の方に、普通級の子どもと特別支援の子どもという線引きが強いという発言です。具体的には、子どもにかける言葉が「差別的」と感じられるほどに違っているにもかかわらず、それに対して学校の中で問題化されることもないことや、校内で新任教員にかけられる声がけが「特別支援を希望したのか?」という類いのもので、そのニュアンスには「特別支援は特別な理由がない限り担当しない」という意味が含まれていることが感じられたというものです。 他方、地方から参加した教員からは、そもそも人数が多くないので、「分ける」ということそのものが当たり前になっていないという状況も報告され、人口が集中している都市部か、それとも過疎化が進む地方かで、子ども同士を分離するかどうかをめぐる対応にも違いがあることもわかってきました。特別支援をめぐる施策は自治体レベルでかなり異なっていることも確認され、制度そのものが「分離」を促進する場合もあり、「どのような子どもも排除されない教室空間」は、個々の教員の力量によって改善される部分については、制度そのものの方向性がどうなっているかを見極める必要があるという共通理解ができました。 2月10日(ハイブリッド)参加者 6名4月27日(対面のみ)参加者 11名
2024年05月12日 授業研究会 【報告】第1・2回授業研究会