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【報告】10/5学習会 日時:2023年10月5日(木) 19:30~21:00(Zoomによる) 参加者:6名 内容:地域と学校の連携 講師:漆原豊和氏(児童養護施設職員)・西岡歩氏(中学校教諭) 今回の学習会では、学校と地域がどうかかわりを持って、どう繋がっていけるのかということをテーマに、子どもたちが生活している場である児童養護施設の職員である漆原豊和氏と、その学区にある学校に勤務している西岡歩氏からお話を伺いました。 今回の学習会の企画は、昨年度、西岡氏の勤務する中学校で、漆原氏に施設のこと、子どもたちのことを講演していただいたことがきっかけとなりました。 漆原氏からは、講演をしてから連携がスムーズに取れるようになったことや、生活している子どもたちも多くの先生から見てもらえていると感じている様子であること、西岡氏からは、講演後の先生たちの反応や変化などのお話がありました。 また、繋がることのきっかけやそこから得られたことだけでなく、逆になぜこれまで繋がれなかったのかという疑問についても話題に挙がりました。講演をしたことで先生たちの認識が変わった、ということは、声が挙がらないと気づけないということ、先生たちの間に偏見があったのではないか、そのような課題も浮かび上がってきました。 学校の先生がゆとりをもって子どもたち、地域の声を拾っていくことができなければ、埋もれてしまう声がたくさんあるのだということを改めて認識し、忙しすぎる学校現場にもどかしさを感じながら、それでも拾っていかなければと強く感じる学習会でした。
学校支援活動
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母語保持の取り組み 【エステレージャ教室 7~8月報告】 エステレージャ教室では、外国にルーツを持つ子どもの母語保持や上達のために定期的に近隣在住の母語話者の方に来ていただき母語教室を開催しています。現在は偶然にもほとんどの子どもは南米のスペイン語圏からの移民1世ないしは2世です。日本の小学校や中学校に在籍して、日本人の子どもと一緒に日本語で授業を受けています。エステレージャに通ってくるほとんどの子どもの日本語は日常生活ではあまり不自由を感じないレベルです。 大方の兄弟姉妹がエステレージャ教室で会話する時はスペイン語ではなく日本語で行います。これは強制ではなく、その方が楽だからです。ある親子は母親がスペイン語で話し、子どもは日本語で答えています。子どもはあまりスペイン語を使いたくないからです。中には家庭では全てスペイン語で会話が行われている家族もいます。このように子どもによってスペイン語の使用頻度の環境は様々です。 このような状況下でエステレージャ教室が外国にルーツを持つ子どもに母語教室を提供するのは以下のような理由があります。 第一に、親の日本語のレベルが低くて子どものスペイン語のレベルが低いと、親子間で共通言語がなく、複雑なコミュニケーションが取りにくくなってきます。また祖父母や親戚との意思疎通が困難になってきます。このような状況を少しでも避けられたらという思いがあります。 第二に、彼ら・彼女らは母語に関してはレベルの差はあるもののある程度理解できます。これは将来日本で就職をする時の利点になります。また地域の学校や病院、役所等で通訳の手伝いを担えるような人材に育ってくれればと願っています。日本にはスペイン語が理解できる人は少数です。母語を生かして安定的な職に就く選択肢を作れればと考えています。 第三には、彼ら・彼女らが例えばペルーやコロンビア出身者であることに誇りを持ってもらいたいという思いがあります。言葉を通して自分のルーツを大切に思い、自信を持ってもらいたいのです。こんな話がありました。小学生のAさんの先生は授業中に彼女に〇〇はスペイン語で何というのかと尋ねたので、スペイン語で△△と答えると、それを聞いていた周りの数人の男子が気持ち悪いとAさんに言いました。それから彼女はスペイン語が嫌いになり、エステレージャのスペイン語教室の参加を拒否するようになりました。これでは彼女がスペイン語ができることがかえって彼女を苦しめることになってしまいます。学校においても外国にルーツを持つ子どもへの対応と、周りの日本人の子どもの外国人への理解を促す対応をお願いできればと思っています。 以上の観点から、外国にルーツを持つ子供たちが母国語と日本語のバイリンガルであることで彼ら・彼女らの生活が豊かなものになるように願って母国語教室を開催しています。(FK)
外国人支援・こども支援活動
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No.58女性の生きづらさと平和 Ed.ベンだよりNo.58が発行されました。 今回のEd.ベンだよりのタイトルは2つあり、ひとつは「女性の生きづらさを考える」、もうひとつは「平和を考える―被害性と加害性」です。 前半では、この2年間にわたってEd.ベンチャーの各活動の共通テーマであった「女性の生きづらさを考える」についてまとめ、後半は今年度後半に取り組む「平和」に関わるテーマの概要をお知らせしています。 Ed.ベンだよりNo.58「女性の生きづらさを考える」/「平和を考える―被害性と加害性」ダウンロード ぜひお読みください。 また、11月までのEd.ベンチャーの各学習会についてもお知らせを掲載しております。みなさまのご参加をお待ちしております。
Ed.ベンだよりPDF
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2023年11月20日 お薦めの書籍・文献 戦争とは何だろうか
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日時:2023年10月5日(木) 19:30~21:00(Zoomによる) 参加者:6名 内容:地域と学校の連携 講師:漆原豊和氏(児童養護施設職員)・西岡歩氏(中学校教諭) 今回の学習会では、学校と地域がどうかかわりを持って、どう繋がっていけるのかということをテーマに、子どもたちが生活している場である児童養護施設の職員である漆原豊和氏と、その学区にある学校に勤務している西岡歩氏からお話を伺いました。 今回の学習会の企画は、昨年度、西岡氏の勤務する中学校で、漆原氏に施設のこと、子どもたちのことを講演していただいたことがきっかけとなりました。 漆原氏からは、講演をしてから連携がスムーズに取れるようになったことや、生活している子どもたちも多くの先生から見てもらえていると感じている様子であること、西岡氏からは、講演後の先生たちの反応や変化などのお話がありました。 また、繋がることのきっかけやそこから得られたことだけでなく、逆になぜこれまで繋がれなかったのかという疑問についても話題に挙がりました。講演をしたことで先生たちの認識が変わった、ということは、声が挙がらないと気づけないということ、先生たちの間に偏見があったのではないか、そのような課題も浮かび上がってきました。 学校の先生がゆとりをもって子どもたち、地域の声を拾っていくことができなければ、埋もれてしまう声がたくさんあるのだということを改めて認識し、忙しすぎる学校現場にもどかしさを感じながら、それでも拾っていかなければと強く感じる学習会でした。
2023年10月28日 インクルーシブ社会を目指す学習会 【報告】10/5学習会
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事例研究会は、外国にルーツを持つ子どもたちの具体的な事例を通して、彼らの背景にある事情や問題を読み解く力をつけていくというねらいで開催しています。今回は9月30日に開催した事例研究会の報告です。 【9月事例研究会】 日時:2023年9月30日(土) 14:30~16:30(Zoomによるオンライン開催) 事例:「不登校の傾向が出てきた子ども」(事例提供:事例研究会担当スタッフ) 参加者:4名 9月は、事例研究会スタッフから、Ed.ベンチャーが主催する外国人の子どものための学習教室、エステレージャ☆ハッピー教室に通う子どもの事例を報告しました。 2020年に来日し、4月に中学生になった子どもで、9月に入ってから学校の欠席が続いている中学生について報告をしました。2年生の1学期途中までほぼ欠席することなく通い、6月の学校行事が終わってから部活を理由に参加をしていなかったため、スタッフは部活に参加できるようになり学校生活もうまくいっていると安心していたところ、9月に入ってから学校に登校していないということが分かったという子どもの事例です。これまでのエステレージャでの様子や、9月に入り、編み物道具を持ってエステレージャで過ごしている様子、家庭訪問の様子や担任の先生とスタッフが連絡を取ったことなどを報告しました。 協議は、アドバイザーの先生からのアドバイスから始まりました。複数言語環境下に置かれる子どもは、言葉と気持ちが一致せずモヤモヤとした状態にいるので、経験を語らせることが必要である。高学年以上の子どもたちには、経験を語らせ、聞き手が経験を共有しながら、人生を一つの物語としてつなげる機会を作る必要があるとアドバイスをいただきました。このアドバイスを受け、地域ボランティアとして外国人児童の学習支援に携わっている参加者から、不登校ではないが、字を丁寧に書くものの学習内容を理解していない様子が見られるという、Nさんと似ている子どものケースが報告され話題となりました。小学校の先生からは、字がきれいに書けているからわかっているわけではない、完璧主義の子どもは周りのプレッシャーを受けていると指摘がありました。そして、アドバイザーの先生からは、人との関係は勉強と結びついているので、気持ちを他者に開いていないと、その場にいても勉強した内容が残らない、子どもの自己肯定感や自己の尊厳を保障することが必要だというアドバイスがありました。そして、他者に開いていない子どもの心を開くことが私たち大人の役割であること、そのためには、対話(雑談)する時間を大切にすること、そして子どもに教えるのではなく子どもと一緒にやろうという姿勢を大人が持つことが大切だということを参加者で確認しました。 今回の研究会は、4月に開催した外国人の子ども理解のための学習会でテーマとなった「対話」につながる研究会となりました。学校、地域の学習教室といった教育の場で、子どもとの対話をもっと大切にしながら支援をしていく必要を再確認しました。
2023年10月25日 外国人の子ども理解の学習会 【報告】9月事例研究会
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2022年のスタディツアーでは虐待に関する学習会を開催しました。その際の報告です。 開催日 5月21日(土)14:30〜16:00 6月18日(土)14:30〜16:00内容 5月 講演会「虐待通告、そしてその後の子ども・家族との関わりにおいて 教員・学校が考えること」 講師 上原 樹 氏(スクールソーシャルワーカー) 6月 虐待に関する事例研究会 スタディツアーでは昨年度虐待に関する事例研究を行いました。実際のケースから、対応などについて学びました。参加した先生方から、実際に虐待が疑われる場面に直面したとき、虐待なのか判断に迷うという声が上がりました。そこで、今年度第1回目の学習会では、スクールソーシャルワーカーの上原樹さんを講師に迎え、学習会を行いました。虐待対応ハンドブックを読み込みながら、虐待かどうかの判断基準、通告などの対応の進め方などについて学びました。意見交換の場では、担任中心の対応となり、負担が集中してしまわないよう学校内の体制づくりが課題という意見が上がりました。また、家庭の中では、母親が学校や関係機関との窓口となっているケースが多く、子どもだけでなく、母親を支えることが重要であると上原さんからお話がありました。 5月の学習会を受け、6月には事例研究会を行いました。同居する祖父から身体的虐待を受けた子どもの事例でした。すでに関係機関も関わり、対応にあたっていましたが、協議の中で、その子自身が抱える、周りの子たちとの関わり方の課題、関係機関との対応やその子への対応をほぼ一人で担っている母親、その母親と義父である祖父との関係など、さまざまな要因が複雑に絡み合っているケースでした。担任の先生は、丁寧に子どもに寄り添い続けてくれていますが、家庭全体への支援が引き続き必要であるという結論に至りました。
2023年10月15日 女性の生きづらさを考える 虐待に関する学習会(2022年スタディツアー)
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女性・ジェンダーに関わるテーマを扱った授業研究会の報告です。 日時 5月16日(月)20:00〜22:00 参加者 5名 使用した資料 寺町晋哉著『「性別」があふれる学校は変われるのか』 木村涼子著『中等教育におけるジェンダー平等の過去、現在、未来』 討論内容 ①保育園の課題として「性別の認識」は、必要なのか ②水泳指導の際の水着の問題は、検討必要 ③修学旅行の大浴場についても検討必要 ④中学校の制服の選択性 女子の自由選択は大和市でもされてきているが男子は難しい。 ⑤第2次性徴を扱う際に、トランスジェンダーのことも扱う必要がある。その時に対等な存在として認識されるように働きかけることが大事である。今後引き続いての研究が必要と思われる。 ⑥クラスの児童を並べるとき、いまだに女子、男子の列づくりが一般的である。 情報 最近の幼児向けアニメでは、女性、男性、トランスジェンダーが登場している。 英語圏では、He、She、ではない人は、Theyなど使用し始めている。 子どもの性自認は6歳ぐらいで、違和感を感じ始めるきっかけは、「異性を意識するようになる」と教わり始めるときだそうである。 感想 ・教職員の現場も少しづつではあるが変わって来ている。 ・マスコミで有名人がカミングアウトし始めているのは、良いことである。 ・次回に向けて更に、学校教育現場の見直しが必要。 以上
2023年10月15日 女性の生きづらさを考える 授業研究会報告(2022/5/16)
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インクルーシブな社会を目指す学習会において、女性にかかわるテーマを扱った際の報告です。 日時:2022年5月11日(水) 19:00~21:00(Zoomによる)参加者:8名 内容:「不登校の子ども理解~子ども自身とその母親の葛藤とその実情を知る~」講師:米澤美法氏(自由創造ラボたんぼぼ 代表理事) 今回は、「不登校」をテーマにした学習会を行いました。 講師である米澤先生から、不登校の子どもやその保護者と接する中でみえた、本人たち自身が感じている思い・実情についてお話しいただきました。 不登校とは、心身の疲れからくる生理的な現象であり、子どもにとってはゆっくり休むことが何よりも大切であること。そのためにも子どものありのままを受け止め、認めることの重要性を改めて学ぶことができました。 不登校経験者からの声で最も印象に残ったのは、「あらゆる登校刺激をやめてほしい」というものです。学校がありのままの子どもたちを受け止めることのできない場になっているとしたら、再び登校させることなど不可能であると痛感しました。学校に通うことを第1優先にするのではなく、今日の学校や教育制度の在り方を見直し変えていくことでしか、不登校の子どもたちを本当に救うことなどできないのではないかと、不登校の問題に対する視野をおおきく広げることができました。 また、家庭では母親だけが不登校の子どもについて心を悩ます状況が多いようです。無理に学校に行かせようとしたり、過度に干渉してしまう。また、夫や祖父母からのプレッシャーに自分自身を責めてしまうケースがよく見られるようです。 子どもが不登校である現状を受け止めるのは母親の方が早いものの、父親の理解が進まず母親が抱え込むばかりで、子どもの立ち直りが難しい家庭も多いようでした。 子ども一人ひとりが違えば不登校への対応も当然変わる。学校だけが子どもの唯一の成長の場ではないことを自覚し、学校・教師の立場から接するのではなく子ども・保護者両者との対話を進めていくこと。ゆっくり休んだ子供たちは自分で立ち上がるということを信じることを、不登校の子どもたちと接する第1歩としたいと感じました。 【参加者の感想より】【Aさん】 「あらゆる登校刺激が子どもにとっての負担である」という言葉が印象に残っています。学校の教師として子どもに接することができないのであれば、どのような接し方が教師である自分にできるのか・・。学校が子どもたちの安心できる場所になっていないのであれば、何を変えていけばいいのか・・・。また、本人・保護者どちらにもそれぞれの思いや葛藤があるという当然のことに気づくことができました。子どもと保護者の登校への意識に違いがあるとき、自分はどう動くことになるのか・・。果たして丁寧に対話を重ねる余裕があるのか・・・。これまでの10年間の教員経験と見つめ直すとても貴重な学習会になりました。 【Bさん】 今回の学習会に参加させていただき、不登校の子自身はもちろん、保護者(主に母親)の苦しさについても知ることができました。実際に不登校にならずとも、苦しさを抱えている子たちも、きっと想像以上にたくさんいるのだろうということにも、気付かされました。今わたしが関わっている子どもたちに対しても、パワーを溜めることの大切さ、苦しいくらい見守るという時間も必要なこと、通じるところが多いお話だったので、とても身にしみました。子どもたちがパワーを溜めたあと、どのような過程をたどって前向きに生きていくのかというところのお話も、たくさんの事例があると思うので、また伺ってみたいと思いました。 【Cさん】 子どもたちにとって、教室や学校だけが居場所ではないということを考えられる柔軟さが、教員にも必要だと思います。経験的にそのことは認識していましたが、今回お話を聞いて、長いスパンで考えられる時間的余裕も大切だと思いました。中学校3年間という限られた時間の中で、卒業後の次のステージにつなげなければという思いがありましたが、それは学校側の都合でしかなかったなと痛感しました。また、母親が一人で抱え込むケースが多いということも重要な点です。今後、不登校の子に関わるときに、母親が抱える課題にも寄り添いながら対応していこうと思いました。 【Dさん】 お話を聞いていて、お母さん・保護者の方がやっぱり大変な思いをされていることがよくわかりました。以前、お子さんの不登校に悩んでいる保護者の方から相談を聞く機会があった時、「学校には相談してない。先生も忙しそうだし、迷惑になるから」と何人ものお母さんが言っていました。その言葉を聞いたとき、学校や教員が期待されていない、信頼されていないという現状を再認識しました。私も不登校の子どもたちは賢い子どもが多いと思っています。だから不登校になるのだと、学校が魅力的なら、そういう判断にはならないのかなと思ってしまいます。話し合いの後半に出てきたように、今、学校の形が変わってきたり、新しい学校が出来たりしているので、これからの学校のあり方を考えることも必要だなと思いました。学校が子どもたちにとって必要な場所として認めてもらえるために、すぐに出来ることもあると思うので、今日のお話をヒントに考えていきたいと思います。今回は、これからの学校や教師として必要なことを考える貴重な機会をいただき、ありがとうございました。(MH)
2023年10月15日 女性の生きづらさを考える 不登校の子ども理解(2022/5/11インクルーシブ学習会報告)
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2023年10月09日 お薦めの書籍・文献 ハイヒールを履かない女たち~北欧・ジェンダー平等社会の作り方~
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2023年10月04日 Ed.ベン便り No.58女性の生きづらさと平和
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【エステレージャ教室 7~8月報告】 エステレージャ教室では、外国にルーツを持つ子どもの母語保持や上達のために定期的に近隣在住の母語話者の方に来ていただき母語教室を開催しています。現在は偶然にもほとんどの子どもは南米のスペイン語圏からの移民1世ないしは2世です。日本の小学校や中学校に在籍して、日本人の子どもと一緒に日本語で授業を受けています。エステレージャに通ってくるほとんどの子どもの日本語は日常生活ではあまり不自由を感じないレベルです。 大方の兄弟姉妹がエステレージャ教室で会話する時はスペイン語ではなく日本語で行います。これは強制ではなく、その方が楽だからです。ある親子は母親がスペイン語で話し、子どもは日本語で答えています。子どもはあまりスペイン語を使いたくないからです。中には家庭では全てスペイン語で会話が行われている家族もいます。このように子どもによってスペイン語の使用頻度の環境は様々です。 このような状況下でエステレージャ教室が外国にルーツを持つ子どもに母語教室を提供するのは以下のような理由があります。 第一に、親の日本語のレベルが低くて子どものスペイン語のレベルが低いと、親子間で共通言語がなく、複雑なコミュニケーションが取りにくくなってきます。また祖父母や親戚との意思疎通が困難になってきます。このような状況を少しでも避けられたらという思いがあります。 第二に、彼ら・彼女らは母語に関してはレベルの差はあるもののある程度理解できます。これは将来日本で就職をする時の利点になります。また地域の学校や病院、役所等で通訳の手伝いを担えるような人材に育ってくれればと願っています。日本にはスペイン語が理解できる人は少数です。母語を生かして安定的な職に就く選択肢を作れればと考えています。 第三には、彼ら・彼女らが例えばペルーやコロンビア出身者であることに誇りを持ってもらいたいという思いがあります。言葉を通して自分のルーツを大切に思い、自信を持ってもらいたいのです。こんな話がありました。小学生のAさんの先生は授業中に彼女に〇〇はスペイン語で何というのかと尋ねたので、スペイン語で△△と答えると、それを聞いていた周りの数人の男子が気持ち悪いとAさんに言いました。それから彼女はスペイン語が嫌いになり、エステレージャのスペイン語教室の参加を拒否するようになりました。これでは彼女がスペイン語ができることがかえって彼女を苦しめることになってしまいます。学校においても外国にルーツを持つ子どもへの対応と、周りの日本人の子どもの外国人への理解を促す対応をお願いできればと思っています。 以上の観点から、外国にルーツを持つ子供たちが母国語と日本語のバイリンガルであることで彼ら・彼女らの生活が豊かなものになるように願って母国語教室を開催しています。(FK)
2023年09月27日 子どもの居場所・学習教室 母語保持の取り組み
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日時:2023年8月22日(火) 19:30~21:00(Zoomによる) 参加者:4名 内容:「対話の中の性教育」 講師:山口貴子氏(児童養護施設職員) 今回の学習会では、児童養護施設における性教育の実践について話を聞くことができました。山口氏の施設で行われる性教育のプログラムでは、「自分を大切にする」「自己肯定感」を軸とした「包括的性教育」が行われており、様々な生い立ちや年齢の子どもたちが生活する中で、性教育のタイミングや内容について、丁寧な配慮がなされていると感じました。 学校現場では、性教育は理科の授業における”生物学における生殖・遺伝の仕組み”や、保健体育科における”成長に伴う生殖機能”などの知識に落とし込まれ、自分の人生を豊かにするための性教育を行うことの限界を感じます。「生徒の発達段階に応じた性教育」では、「学齢により学習内容を区切る」ことしかできず、目の前の子どもたちにとって本当に必要な知識、深めたい内容に触れづらい現状があります。 児童養護施設では、生活の中で聞かれた子どもの発言や生活が出発点になることもあり、性教育が自分が生きている現在や将来について考えるために大切であると実感しやすい環境にあるのではないかと思いました。 プログラムを進める中で、「自分のことを話してよい人ができた」といった子どもの感想や、「恋愛や性、身体のことをオープンに話せる環境がつくられた」など、性教育を通してつながりがうまれる実感もあったそうです。 また、家庭内における「親ー子ども」の関係性では触れることのできないことについても、血縁関係のない異年齢集団だからこそ共有し、より深く自己開示ができる側面もあるのではないかという新たな気づきがありました。
2023年09月15日 インクルーシブ社会を目指す学習会 【報告】8/22学習会
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事例研究会は、外国にルーツを持つ子どもたちの具体的な事例を通して、彼らの背景にある事情や問題を読み解く力をつけていくというねらいで開催しています。今回は7月5日に開催した事例研究会の報告です。 【7月事例研究会】 日時:2023年7月5日(水) 19:00~21:00(Zoomによるオンライン開催) 内容:授業研究(「対話」を取り入れた授業研究) 参加者:4名 7月は授業研究を行いました。4月26日に開催された外国人の子ども理解のための学習会で、講師の宮崎あゆみ氏と清水睦美氏から、「外国人の子どもたちの自己形成~対話の持つ意味」について講義をしていただきました。 今回の研究会では、4月の学習会を受けて、「対話」を取り入れた授業研究を行いました。 スタッフより、4月の講義内容について確認をしてから協議に入りました。協議では、学校の中での子どもの「語り」がまず話題になりました。授業を進めていくことが中心となり、子ども同士、子どもと教師の間の語りが少ない。道徳の時間に語りの時間はあるが、それは教師がおぜん立てした語りであって、今の学校の中で語りが可能な時間は休み時間となっているのではないかとの指摘が小学校の先生からあがりました。また、国際教室を担当されている先生からは、国際教室では先生と子ども2人という形で授業をしていて、授業の時にはおしゃべりを自由にさせているが、大人数での語りの中で個人の経験を語ることは難しいのではないかと感じるという意見が出されました。 続いて、子どもの語りを保障するための実践として、小学校の先生からは、人に対して語らない子ども、自信のない子どもに声をかけるようにしていると、子どもが語りたいことをポツポツと語るようになってくるという報告がありました。そして、周りの大人に聞いてほしいことを話す時間が今の学校生活の中で失われている、語りに来ない子どもはどこで語りたい思いを消化できているのだろうかという疑問が出されました。さらに、先生たちに気持ちのゆとりがなく、子どもから話を聞きだすことが多くなっていて、子どもの語りを聞く時間がなくなっているとの指摘もありました。国際教室担当の先生からは、国際教室にふらっとやってきて「実は・・・」と言い始める子がいて、教室では語れないことを語る場所を提供することが大事だと感じるという意見が出されました。そして、参加された先生は、担任とは違う立場で子どもに関わっているため、子どもが担任に話せないようなことを聞けるようにしているという、聞き手の姿勢にも触れていました。 アドバイザーの先生からは、子どもが語る行為が行えれば、どういう形での語りでもよい。子どもが語ったときのリアクション、受け止める、流さないといった聞き手の姿勢が重要である。語る場が、「こうしなければここにいてはいけない」という場ではなく「できなくてもそこにいていい」という場になれば、子どもは語れるようになる。とのアドバイスがありました。そして、子どもが先生の管理や評価の対象になると子どもが語る時間がなくなっていくという指摘もされました。 協議を通して、子どもが語れる環境を大人(教師)が用意する、それは時間や場所だけではなく、聞き手としての大人(教師)の姿勢をしっかりと持つことだということを確認できました。先生や友達と語り合える時間や場所をもっと作っていくことが必要ですが、もっと多くの大人(教師)が、子どもたちが「語りたい、語ってもいい」と思える聞き手になっていくことから始めなければならないと感じます。今回の授業研究を受けて、子どもの語りの聞き手となることを今まで以上に意識し、聞き手としての実践を行い、実践報告をしていく予定です。
2023年08月27日 外国人の子ども理解の学習会 【報告】7月事例研究会
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2023年08月23日 Ed.ベン便り No.57原発に反対します!