【エステレージャ教室 8~9月報告】
9月、エステレージャにうれしい出来事がありました。
中学生のSさんが書いた平和に関する作文が、学校代表の作文の1つに選ばれ、新聞に掲載されたのです。教室では、帰りの会でSさんに作文を披露してもらい、スタッフも作文を聞いた子どもたちもSさんの努力を讃えました。
Sさんは、小学校2年生からエステレージャに通っている子どもです。作文が苦手で、作文の宿題があると教室に持ってきて、スタッフと一緒に作文に取り組んでいました。小学校2年生の時には、「作文をどうやって書いたらいいか分からない。でも、先生が『1年生の時に教えたから教えません。』と言ったから・・・書けない。どうしよう。」と話していたことがあります。外国人の子どもにとって、作文はとてもハードルが高い学習活動で、日本語を上手に話せていても、作文が書けないことはよくあることなのに、一度教えたから教えないというのは・・・とスタッフの話題になったことが思い出されました。
Sさんの作文が、私たちスタッフに2つのことを教えてくれました。1つは、継続することが力になっていくということです。Sさんは作文を書くときには、いつもスタッフと話をしながら、自分の経験や意見、考えを話し、それを作文に書いていくということを続けてきました。作文は苦手で面倒だけれども、課題にまじめに取り組んできました。あきらめず続けていくことで、力がついてくるということをSさんの作文が教えてくれました。
もう1つは、自分の意見や考えを言葉にする力を育てることの大切さです。Sさんが平和の作文に取り組んでいた時、中学校2年生のKさんも人権作文に取り組んでいました。Sさんと同じように、スタッフはKさんの経験や考えを聞きながら進めていきました。人権という言葉を確認した後、人権が守られているあるいは侵されていると感じることはないか、それに対してどんなことを感じるか、考えているかなど、まずKさんの経験や考えを聞こうとしました。しかし、Kさんからは言葉が出てきませんでした。人権というテーマは難しいテーマで、大人でも作文を書くのが難しいので、どんな言葉でもいいから考えていること、思っていることを自分の言葉で話してほしいと思いました。しかし、Kさんから言葉が出てこなかったため、作文が書けないまま終わってしまったということがありました。この時、対応していたスタッフはKさんが自分の考えや意見を言葉にできないことを残念に思いました。Kさんも低学年から教室に通ってきている子どもで、小学生の時には不平不満も含めて学校であったことをよく話してくれていました。しかし、自分の言葉で考えや意見を表明することができなかったのです。Kさんの作文を支援している中で、事実を伝えるだけではなく、思いや考え、意見を持つこと、そしてそれを表明する言葉が持てるように支援することが必要だと感じました。
Sさんの作文は、学習を支援することはもちろん必要ですが、自分の意見や考えを持ち、それを表明する言葉が持てるような支援をすることが必要であるということも教えてくれました。Sさんの作文は、エステレージャが目指すべき課題も教えてくれました。