理事推薦本
アーティフ・アブー・サイフ著、中野真紀子訳『ガザ日記:ジェノサイドの記録』(地平社 2024)
この本を手に取ったきっかけは、2月のEd.ベンチャーの教育講演会でお話いただいた田中美穂さんから繋がったものでした。SNSを見ていて、いくつも気になった本があり、その中の1冊が、この「ガザ日記」という本です。
2023年10月7日、イスラエルがガザへの爆撃を始めた日です。著者のパレスチナ人(ヨルダン川西岸地区在住)アーティフ・アブー・サイフさんは、その日、仕事でガザを訪れており、そのまま約3か月弱をガザで過ごすことになります。その時体験したありのままを、文字で、ボイスメッセージでリアルタイムに発信した記録です。
印象的な言葉をいくつか紹介します。
「戦争下では、目覚めてからの数分間がもっとも緊張する。起きるとすぐに携帯電話を手に伸ばし、大切な人たちがだれも死んでいないことを確認する。~携帯電話を手に取る勇気の出ない朝もある。」
「ささやかな慰めは、ロケットの爆音を聞いたときは、それが自分に飛んでくることはないことだ。自分は標的ではないとわかる。ガザの人がみんな学ぶことだ。自分がロケットの標的になったときは、飛んでくる音は聞こえない。死だけが来る。」
「ガザ地区のどこへ行っても、人々は裏切られ、見捨てられたと感じている。誰も私たちのことなど気にかけていないようだ。誰も救出に来ないし、支援の提供さえない。イスラエルがどんな戦術を使っても、どんな新しい残虐行為を実行しても、誰も反対の声を上げない。私たちは見捨てられてしまい、運命に直面して甘受しろといわれるが、私たちはそこに何の発言権もない。私たちが何を感じようが、何を考えようが、誰も耳を傾けない。私たちは見捨てられている。」
「日を追うごとに、国際メディアの関心は薄れていく。ガザは次第にニュースのテロップから消えていく。死者や負傷者の数さえも重要ではなくなる。」
今、この本を読み、ガザの当時の状況に文章で触れ、今のガザはどういう状況?と改めて調べている自分がとても恥ずかしくなりました。2023年10月の時点では、ニュースも大々的で、子どもたちとも話をする機会が多くありました。それが、今ではほとんど話題になりません。当時にも増して、状況は悪化しているのに、です。アーティフさんの言葉、それはこの今もガザで続いているし、叫びなんだと、知るべきなんだと、この本を読んで気づいたのが正直なところです。
講演会で田中美穂さんのお話を聞かなければ、きっと出会わなかった本でした。SNSが世界を繋いでいるけれど、実際は自分の興味のあること、身の回りのことしか、情報は入ってきません。自分から調べないと、情報を集めないと、知らずに日々が過ぎていくということに、怖さを感じました。(YT)