6/22 パネルディスカッション 報告

「労働教育の浸透のためには」

日時:平成29年6月22日(木)19:00~21:00

講師:高須裕彦氏 一橋大学大学院社会学研究科フェアレイバー研究教育センター

パネラー:三澤律子氏 大和市立福田小学校

村本綾氏  大和市立つきみ野中学校

中山拓憲氏 神奈川県立舞岡高等学校

鍛治邦彦氏 日本労働組合総連合神奈川県連合会 県中央地域連合 事務局長

場所:冨士見文化会館1階

参加者19名

 

今回のシンポジウムは、高須裕彦氏に講師をお引き受けいただき、4名のパネラーに登壇していただきました。シンポジウムの趣旨は、「子どもたちの社会的な自立を促すために,労働教育には何ができるのか?」「具体的にどんな授業ができるのか?」といったものでした。

第1部では,貧困や労働の実態について,各パネラーの立場から話題提供をしていただきました。鍛冶氏は労働組合の実態を紹介し,高須氏は大学生の労働(アルバイト)や就職の実態を紹介し,中山氏(高校教員)・村本氏(中学校教員)・三澤氏(小学校教員)は児童・生徒が直面している貧困の実態や課題を語りました。

第2部では,学校教育でつけて欲しい力、やってほしいことについて,各パネラーの意見が述べられました。鍛冶氏は,「相談する力,助けを求める力」を育てて欲しいとし,労働基準法を教えることの必要性を主張しました。中山氏は,キャリア教育や労働教育では「自分で自分を守れる力,自分の人生を主体的に生きていく力など」を育てていきたいと述べました。村本氏は,「読み・書き・計算といった基礎学力や集団に入っていく力など」を育てていきたいと述べました。また,学校と地域のつながりを大切にしていく必要性を提案しました。三澤氏は,「なぜ、困ったときに人と相談できるようになっているのか。」といった問いを切り口にして,社会では「人間らしい生活が保障されていることや人間には平等に生きる権利があること」を掴ませたいと述べました。以上を踏まえて,講師の高須氏から,雇用労働に焦点を当てて労働教育を進めることの必要性が提起されました。

その後,フロアーから「金融経済化の中で労働基準法の有効性は?」,「学校で団結は教えられないのではないか?」という意見が出され,これを受けて議論が深められました。今後の授業づくりや実践においては,学校教育,教科等の授業でこそ育てられる見方・考え方という視点を持っていく必要性を感じました。

 

【参加者感想】

正直、今日自身が分断されるような労働環境の中で、「本当に大事!」という思いと「現実は、団結はリスク…」と思ってしまうところもあります。でも、できることはあるって思いたい。働く事は、生きていくこと。賃金=コストじゃないという話が印象に残りました。 (小学校教諭)

「相談する」ことを教えるだけでいいのでしょうか。高学歴で企業に就職する子は、知識として持ち、生かすことはできると思います。一方で、定時制高校や底辺校でバイトする中、苦労している子は、相談できる力がそもそもない状態だと思います。小・中の段階で、誰かに相談することで、状況が改善されたという経験も必要かと思いました。 (中学校教諭)

<パネルディスカッションを通して> いろいろな立場での話を聞くことができ、とても勉強になりました。それぞれの報告を聞き、小・中・高の学校ではなかなか「労働」という言葉と現実を結びつけることが難しく、社会に出て実際に労働をしてから困難にぶつかることが多いように思いました。使用者が強い力を持つ大企業もありますが、中小企業が多くを占める日本の社会では「労基法」はとても有効で、学校教育の中でも「労働者の権利」「平等」などを教えていくことはやはり大切なことなのだということも分かりました。現実には、学校教育の中に今回パネルディスカッションで見えた「労働に必要な力」の育成に即した授業は非常に少ないと感じます。これから学校の中でどのような「労働」に関する授業をしていくのか、なにができるのかというその可能性を考えていきたいと思いました。 (中学校教諭 パネラー)

学校の中で「困った時に相談をする」という状況をもっとつくらなければ、と思いました。成長段階で社会に向かっていく現状が近ければ近いほど、「序列」が現実として身近にあるように思います。今回、「序列」という現実を減らし、その中から「相談できる」環境づくり・仲間づくりをしていきたいと思いました。それが「労働をして困った時にどうするのか」につながっていくと思います。また、参加者の方から「労働教育に明るいイメージを!」という話がなされたこともこれから授業等を通して、取り組んでいきたいことの一つとなりました。 (中学校教諭)

授業で毎年、労働教育に取り組んでいるので、新しい視点を得るために参加しました。小・中学校での取り組みはなかなか難しい点もあるかと思いますが、工夫されているようで参考になりました。学校は分断・序列の場という意見が出ましたが、全日制の学校は仲間と共に学ぶ場です。 (高校教諭)

大変参考になりました。働くこと、労働組合などもっと情報を集めて、明るく、楽しい教育プランをご検討お願いします。ありがとうございました。 (労働組合)