7月報告
学校教育の場における貧困を背景とした諸問題について、理論の側面だけでなく、実践の側面からも考えたいという趣旨から、今回の学習会は、ホームレスの状態にある人々の支援を行っている自立生活サポートセンターもやいが出版しているレクチャーブックを使い、資料を読み進めながらグループ協議を行った。
今回の学習のめあては、「貧困を自分の問題として考える」「社会構造の理解」「自分と違う他者に思いをはせる」であった。
労働の状況や自殺者の推移のデータ、生活保護世帯の高校生の手紙など、実に多様な側面から貧困について考えた。そして、もやい元事務局長であり社会活動家の湯浅誠氏の「溜め」という言葉をキーワードに貧困は自分にも関わる身近な問題であり、社会構造において個人的努力によって解決できる問題ではないことを、レクチャーブックを読み進める中で、理解を進めた。
そして、学習会の後半では、ワークとして「困った時に相談できる人はいるか。」「あなたがもっている『溜め』は?『溜め』がなくなったら?」を、それぞれの参加者が、それぞれの立場から考えた。そこでは、人とのつながりがどれくらいあるか、財産の有無、情報の有無がもたらす差が、現実的な差となるという意見が出た。今の自分が何によって支えられているのかが具体的に見えたことで、『溜め』を実感することができたようであった。
最後に、仕事をすぐに辞めてしまう若者に対して、「努力しない人は自己責任だから国や社会が支援する必要はない」Aグループと、「たとえどんな人でもこの社会で生きている人である以上支援するべき」Bグループに分かれ、議論をした。後者の考えの上で、学習会に参加するものが多いため、前者の立場に立って考えることは困難だと参加者から声が上がったが、進めるうちに「Aグループの人を責める言葉は勢いにのって、どんどんヒートアップしてしまう。」「Bグループは根拠に基づいて解決策を提示することができるが、Aグループはこれといった根拠が出てこない」などと、立場を2つにして考えたことで、新しい発見もあった。
貧困を背景とした諸問題(家庭、不登校、学力、児童生徒指導など)に、学校現場は多くの時間を要して対応している。対応という後追いではなく、教育の側面として子ども達に提示することが必要ではないか、それは可能か、という司会者の問いに、参加者から多くの意見が出た。教科書からこのことについて学ぶ機会は少ない、または避ける傾向にあるのではないかという意見や、道徳的観点からお互い様の心を育むことが大切ではないか、貧困におちいらないためにも様々な「溜め」が必要であるためその溜めが失われたとき、支えとなる様々な制度を教えること、またその制度は、特別なものではなく、公共サービスの一つであることも教えることが大切ではないかという意見が出た。
次回の学習会も引き続き、レクチャーブックを使って、「生活保護」などについて理解を進める。また、今回の学習会で得たものから教員が実際に子ども達に何かしらのアクションをおこし、その内容や子ども達の反応を報告する会にしたいと思う。
参加者 7名
◎以下、参加者の感想一部抜粋
Ed.ベンチャーの事業で労働教育を扱っていて、授業を考えていますが、考えが一方通行になりがちでした。本日、立場を変えて意見を出し合う活動をしたことで、様々な立場から貧困について考えられたのが楽しかったです。その中で「溜め」というキーワードがありました。貧困にかかわる問題の裏にある「溜め」の薄弱さに、これから目を向けていきたいと思います。ありがとうございました。(小学校教員)
貧困におちいらないためにも様々な「溜め」が必要であること。
→ その溜めが失われたとき、支えとなる様々な制度を教えること
→ その制度は、特別なものではなく、公共サービスの一つであることも教えること
→ 自己責任論を生み出さない世の中になっていくと思う (中学校教員)
大変勉強になりました。
貧困の状態がよくわからず参加させていただきました。今日は「溜め」という言葉を勉強させていただきました。弱者は切り捨てられる社会になるのでしょうか?それとも弱者と共生して生活できるようになっているのでしょうか?
(T・M)
今日話し合った内容など、知らない人たちに発信していきたいと思いました。帰ったら、すたんどばいみーに来ている子どもたちに教えていきます。福祉大学に行ってるのにもかかわらず、制度や窓口を知らないので、知っていく必要を感じました。(大学生)
2つのグループに分かれて議論したのがおもしろかった。自己責任論グループは、どんどん強いことを言えちゃう。その勢いに自分でも驚いた。溜めがない人ほど、人とつながりにくい。そこを忘れずに、人とつながっていきたい。今日はワークの中で、活発に意見を言い合えたのがよかったです。(小学校教員)
今日初めて参加して貧困について自分でも考えさせられる機会を持つことができました。また、自分が理解できても、小学生、中学生に説明することの難しさを痛感しました。(大学生)
今日の学習会では、いろいろな立場の人がいて、様々な意見が出てとても勉強になりました。グループ協議をしたことも新鮮でした。貧困状態にある人々は、理由があってそこから抜け出せないのにも関わらず、その人たちをたたく人たち。その人たちも生きづらさを感じているのではないかと思った。(中学校教員)
2018年09月22日
理論学習会
7月貧困を自分事として考える