外国人の子どもにとっての「宿題」
子どもたちが夏休みに入る7・8月の教室では、子どもたちの夏休みの宿題を中心に支援を行います。子どもたちの中には最初の一週間で宿題をすべてやり終えてしまった子もいるようで感心させられます。しかし多くの外国人の子どもたちにとって、夏休みの宿題を一人でやり遂げるのは非常に困難です。それは宿題のほとんどが日本語の問題で構成されているからです。例えば算数の場合、計算問題は一人で解答できても、文章問題になると問題を読み解くことすら難しいことが珍しくありません。国語の漢字の書き取りや、読書感想文などはもってのほかです。社会科や理科、作文など、ありとあらゆる科目が日本語で出題され、日本語での解答が求められます。当たり前に思われるかもしれませんが、日本語話者でさえ「大変だ」と思うほどの量を、たどたどしい日本語しか操れない外国人の子どもも取り組むのです。
最近は宿題として科されるワークブック(問題集)だけでなく、解答冊子も一緒に配布されることが一般的になっています。問題を自力で解いて、答え合わせをし、解けなかった部分や分からなかった箇所を解答を見ながら復習するのが理想的ですが、宿題の量に圧倒されて宿題を放棄してしまったように見られる子どもに対しては、解答を写してでも宿題を提出するように促すときもあります。答えを写すことがその子の力を伸ばすことにはならないかもしれません。しかし、宿題を提出せず成績や評価が落ちてしまうことよりはまだましなのではないかと思うのです。
また、最近は子どもの宿題のチェックを親が行うようにチェックシートが配られる場合もあります。しかし外国人の子どもの場合、親の日本語力が十分でないことが多く、また仕事や家事の忙しさから子どもの宿題のチェックもままならない家庭が少なくありません。過去には家庭科の宿題で「味噌汁づくり」が出されたことがあります。味噌汁を飲む習慣のない家庭にとっては非常に難しい課題であり、エステレージャでは調理実習を行って味噌汁を作り、その子どもの宿題に代えたこともあります。
外国人の子どもの学習支援を行うことを通じて、外国人の子どもにとっての学校が、学校や教師の意図をこえていかに抑圧的にあるかということをまざまざと思い知らされます。単に学力を上げるということではなく、学校の抑圧的な環境のなかでなお生きていこうとする子どもたちの声に丁寧に耳を傾けていきたいと思います。