安心できる学習の場所を目指して
エステレージャ・ハッピー教室では、4月から登録制となりました。常態化するスタッフ不足の中で、人数制限を設けて子どもたち一人ひとりの学習を支えていくためです。いつも同じ仲間と学習することで、子ども達の中にも変化が生れてきています。
姉弟で教室に通ってくる中学生と小学生がいます。姉が小学生の頃から教室に参加している物静かな子どもたちで、宿題やスタッフが用意する課題に黙々と集中して取り組む学習熱心な姉弟です。姉が小学生の頃は、休み時間になると弟は、他の子どもたちと遊ばず姉の所にやって来て一緒に過ごす姿が多く見かけられました。姉が中学生になり、部活動で教室に定期的に来られなくなると、弟一人でも教室に参加するようになり、しだいに休み時間を他の小学生の子どもたちと遊ぶようになりました。今では元気にボールで遊んだり鬼ごっこをしたりして過すようになっています。また、友達とも元気におしゃべりをするようになりました。
一方、姉の方は中学生になり、教室に参加できるのは部活のない定期テスト前となりました。中学生になっても熱心に学習することは変わらず、教室に来て、持参した課題に静かに取り組んでいます。休み時間も休憩をとることなく学習を進めて頑張っています。スタッフが話しかけると小さな声で答えてくれますが、自分からスタッフに話しかけることはほとんどありません。そんな彼女がある日変化を見せました。中学生が2人それぞれに学習している場所での休み時間での事です。他の中学生と高校生スタッフが学校に腕時計を持って行っていいかということについて、それぞれの学校事情を話していました。すると、それまで勉強をしていた彼女が「陸上部の人は持ってきていい」と突然言い出しました。彼女の学校では時計は持って行ってはいけないが、陸上部の人はタイムを計るので持っていってもいいということでした。今までは、周りの人が話をしていてもその会話に加わることのなかった彼女が突然話し始めたのには驚きました。いつも同じ友達と同じ場所で学習していて、話題が自分の身近な経験の中から話せる内容であったことで話しやすい雰囲気ができていたからかもしれません。中学生とスタッフの話に耳を傾けながら学習していたのでしょう。
この姉弟をはじめ、登録制になる前後から子ども達の様子に変化が見られるようになってきました。勉強に集中しない子どもたちが集中する時間が長くなってきたり、未就学の子どもたちが小学生たちと一緒に遊べるようになったりと緩やかですが小さな変化が見られるようになってきました。よく知った仲間と一緒に勉強できるという安心感が生れてきているからではないかと思います。安心できるという実感がないと子ども達は学習に向いていきません。間違ったことを言っても笑われない、大丈夫という安心感、分からないと言える安心感、友達がいるという安心感、自分を認めてもらえるという安心感。エステレージャ教室では、外国人の子ども達の学習を支援するだけではなく、ここに来る子どもたちにとって安心できる場所となることも目指しています。そして子どもたちが互いの関係性を築き上げていける場所にしていきたいと考えています。(SH)