これまでにもここで何回か取り上げましたが、現在、もともと生徒として教室に通っていた高校生や大学生が、「学生スタッフ」として教室の運営に携わっています。そうした学生スタッフは、子どもたちとのかかわりにおいて、日本人のスタッフにはできない役割を担っている心強い存在となっています。
学生スタッフの一番の強みは、子どもたちと母語で話ができる点にあります。今後日本で生活するのであれば、最低限の漢字を習得することが必要ですが、漢字の学習では、漢字の書き方だけでなく、その意味も一緒に学習することが必要です。しかし、日本語能力がまだ不十分な子どもにとって、意味を理解しながら学習することはなかなか難しい状況にあります。そうした子どもたちに対して、漢字の意味を母語で伝えられる学生スタッフがいることで、漢字学習に対する心理的なハードルを下げているように思います。
また、自分たちの経験から、子どもたちの様子を理解できる点も、教室が子どもたちの居場所となるためには重要なことだと思います。ある日の終わりのミーティングで子どもの様子として、わからない問題や間違えた問題があると、答えを見て自分で丸をしていたと報告がありました。その報告を聞いた学生スタッフたちは「それ最初にみんなやるんだよね」、「自分も小さい時にはやっていた」などと、共感的な理解を示していました。もちろん、答えを見ながら問題を解くことは、日本人の子どもでもありうることかと思いますが、日本人スタッフとは異なった視点から、子どもたちのことを共感的に理解できる学生スタッフは、子どもたちにとっても心強い存在になっていると思います。
しかし、これまで教えられる側であった学生スタッフ自身が、教える側として活動に参加する上で、不安や難しさを抱えながら活動に参加しているようにも思えます。例えば、勉強を教えている際に、子どもたちにどのように教えればよいのか悩んでいる学生スタッフの姿を時々見ることがあります。また、普段から兄弟と一緒に教室に来ている昨年度中学校を卒業した子がいます。その子に学生スタッフになってもらうように誘っているものの、その子は自分の勉強をやりに来るのはいいが、スタッフとして活動にかかわるとなると教えられるかどうかが心配だと話しているとのことです。
このように、学生スタッフは、スタッフと言っても、教室の運営上だけでなく、自らの学習や生活上、まだまだ支援が必要な存在でもあります。そのため、大人のスタッフとして、スタッフミーティングなどを通して様々な悩みを聞き取りながら、かれらにとってもエステレージャ教室が大切な居場所となるようにかかわっていく必要があるように思います。(HY)