内容:講演会「地域で育てる子ども・地域が育つ子育て」
講師 高橋 勝 氏(横浜国立大学名誉教授)
日時:2018年9月8日(土)10:00~11:30
場所:大和市文化創造拠点 シリウス612号室
参加人数:22名 大人17名(学生ボランティア1名含む) 子ども5名
講演会での内容
講演会では、現代の日本の子どもと子どもをとりまく社会の問題点について、様々な角度からお話を伺うことができた。
まず「日本の子ども・若者の生活意識の特徴」では、日本の子ども・若者は、親の愛情に満足し、社会秩序に適応し、日本人としての誇りや国への貢献意識も高い一方で、日常生活への満足感や自己肯定感がやや低く、不全感を募らせ、不完全燃焼の状態に置かれていると指摘されていた。克服するためには、思春期(中学生)までに、社会で独り立ちする精神的・社会的な準備が必要だと説いている。周囲に適応して生きることを無言のうちに期待される社会において、子ども・若者には勉強以外の活動場面で充実感と達成感をたっぷり味わう経験が必要だと述べられていた。
次に、「情報・消費社会のお客様となった子ども」では、企業とメディアが楽しい情報を提供する中で、子ども・若者は格好のターゲットであることに触れ、“正しいこと”“マジメ”“正義感”が衰退し、“楽しい”“面白い”“刺激的”“ノリがいい”が好まれる消費社会になってしまっていると述べられていた。高速回転の情報・消費社会において、空気を読み、いつも流れに乗り遅れまいと周囲を気にする子ども・若者の病理を問題視している。
最後に、「自然と文明のバランスが崩れた子どもの生活」で、心(情動)はあたま(脳)の一部としてではなく、からだの一部として理解した方がその独自性を説明しやすいという話があった。意識が心とからだを極度に拘束すると、心の自発性が抑えられ、心の葛藤状態(イライラ、不安、神経過敏、抑うつ神経症等)を生む。自己肯定感や自尊感情の低さはここから生じてしまうそうだ。短期間に文明化を達成し、今なお走り続ける日本社会の「文明の病理」を自覚すべきだと述べられている。
そんな子どもたちの居場所をつくるために、親や教師とは異なる第三者の視線で、子どもと関わるたくさんの大人の存在が必要だと提言されていた。多くの大人が関わることで、自立する勇気や喜び、自信を育むことにつながっていくのだと述べられていた。未来に向かって、子どもたちが自信をもって、たくましく生きていく社会をつくるために、私たち大人ができることを考えていきたいと感じた。
今回、参加者の中には、ママだけでなくパパの姿も見られた。また、教員の方だけでなく一般の方や学生の方にも足を運んでいただき、様々な立場から学習会に参加していただけて良かった。引き続き、多くの方に参加してもらえるような学習会を企画していきたい。
<参加者の感想>
・日本の子どもたちの課題について、教師として日頃から感じることがありましたが、高橋先生のお話を聞いて、より明確になり、教師として親として子どもたちのためにできることをしていきたいと思いました。本日はありがとうございました。(小学校)
・日本の子ども(若者)の特徴を見ていて、自分に当てはまることが多々あり、教育する側としてはよく考えて指導していかなければならないと思ったのと同時に、自分自身も行動や考え方を変えていかなければならないと感じました。(小学校)
・高橋先生のお話にほっといたしました。子どもたちにとって、家庭が一番最初に影響を与えるところですが、それ以外の地域、学校でもいろんな出会いや体験からのびのびとした成長のチャンスが必要だと感じてます。変化を受容するおおらかな社会が求められるような気がしましたが、どうやって作っていったらよいのか、何かお役にたちたいと願っていますが、何がいいでしょうか。(ボランティア団体)