12月学校では静かな子どもたち

学校では静かな子どもたち

 小学校には、生活環境が充実している/していない、感情をコントロールするのが得意/不得意、学習理解度の差、性格の違い、話すことが好き/嫌い等々、様々なバックグランドをもった子どもたちが通っています。先生にとって好ましいのは、「クラスの中で落ち着いてよく発言する子」、「静かで落ち着いている子」、でしょうか。逆に、「元気で言うことを聞いてくれない子」には手を焼くのではないかと思います。エステレージャに来る外国にルーツがある子どもたちの多くは、「静かで落ち着いている子」と見られがちな気がします。外国にルーツのある子どもたちは、先生の話す言葉を理解しているから静かなのではなく、分からないことを隠したり、周囲と違うことを知られたくないから大人しくしていることが多いです。「あの子は静かにしていて、理解していそうだから大丈夫」ではなく、なぜ静かにしているのだろうかと理由を考えたり聞いたりしていくことが大切ではないかと感じます。
 深く掘り下げていくと言語や生活環境の違い等、外国人問題につながっていくことが多いです。学校の中で大人しくしているから、目を向けられなくなりやすいのがこの子たちだと思います。だからこそ学校の中で補えない部分を、このエステレージャ教室でカバーしていきたいと考えています。日本人の子どもと外国人の子どもは同じです。しかし、日本語に慣れておらず何を話しているのかが分からないから授業についていくのが大変、自分の気持ちを日本語で伝えられないからとてもイライラしてしまう、日本人の家庭と違うから自分は恥ずかしくて家のことが話せない、周りから差別されないために一緒になって笑っている、など、外国人の子どもに特有の困難を抱えています。このような日本人の子どもとは異なる事情や気持ちをもっていることを、この記事を読んだ方に知っていただけたら幸いです。これらの事柄は、エステレージャ教室で外国にルーツをもつ子どもたちと関わってきたからこそ、見えてきたことです。教室の中で「だまっているから平気そう」ではなく、「なぜ黙っているのか」と気にしていくと、この子たちが抱える問題が見えてくる気がします。
外国人だからって
 先日のエステレージャ教室で、男子のAさん、女子のBさんと話していると、LGBTの話題が出ました。周りと違うだけで苦しい思いをするのはどうかと話していると、Aさんが「外国人だからってバカにされるのは俺も嫌だ」と言いました。それを聞いたBさんは何度も頷いていました。すると「同じクラスの外国人の子が、名前がカタカナだからって悪口を言われている」とBさんが話し始めました。この二人の会話を聞いていて、嬉しくもあり悲しくも感じました。嬉しく思ったのは「外国人だからって差別されるのはおかしい」と批判することができていたからです。日本人というマジョリティの中で押しつぶされるのではなく、声を上げることができたからです。
 入管法が改正されることになり、これから多くの外国人が労働力として日本にやってきます。社会の中でもまだまだありますが、子どもたちの世界でも、Bさんの友だちのように外国人だからこその生きづらさを感じる場面があります。そうしたことが整理されない中で、外国にルーツをもつ子どもたちがさらに増えていき、同じ場面にあうのではないかと思うと悲しくなります。この子どもたちの考えや、気持ちの整理ができるよう、これからも立ち会っていきたいです。(BT)