面接練習から得られるもの
2月は中学3年生にとって高校受験のシーズンでした。エステレージャ教室にも3名の受験生がおり、年が明けると、高校入試に向けた準備に一層熱が入ってきます。この時期に高校入試に向けた準備として行なわれるのは面接練習です。私がかつて高校受験をしたときには、公立の一般入試では面接試験はありませんでしたが、現在、神奈川県では公立高校の受験者全員に面接試験が行われることになっています。
言語的な問題などから、学校の勉強において日本人の生徒よりも学力の定着が難しい外国人の子どもたちにとって、面接試験は、学力とは異なる観点から自分をアピールでき、それを評価してもらえる機会かもしれません。しかし、面接で評価されるためには、何度も面接練習を行う必要があります。例えば、面接では回答内容だけでなく、面接上の姿勢や態度も評価されます。日常生活とは異なる面接特有の振る舞い方を試験中に行うためには、やはり、繰り返し練習する必要があるでしょう。
受験生の中の1人は、私立の併願校を受験する前日になって初めて面接練習を行ったのですが、面接時の振る舞いができていませんでした。なぜそのような状況なのかを尋ねてみると、一度面接練習日を忘れてしまったため、学校でまだ一回も練習を行っていないとのことでした。こうした状況を「本人の自覚の無さ」という問題としてのみ考えるのは早計なようにも思います。例えば、現在の高校入試制度をきちんと理解し、面接に向けての練習が重要であることを理解している家庭においては、子どもに対して何度も面接練習を促すかもしれませんが、言語的な問題から家庭においても日本の高校入試の仕組みを理解できていない場合は、そのような促しがないことも考えられます。学校側もこうした可能性を踏まえ、外国人生徒に対する配慮が必要であるようにも思われます。もちろん、この教室においても、面接の準備を促す配慮や、練習を行ってもらえるように自ら主張することの大切さを伝えていく必要があると思いました。
また、質問への回答内容も何度も練習を重ねることで明確になっていきます。例えば、面接では将来の目標に関するものは頻出する質問です。しかし、中学生段階の子ども、ましてや、日本社会においてキャリアモデルとなる人が身近に少ないことなどによって、具体的で、達成可能性のある将来の目標を立てることが難しいと指摘されている外国人の子どもにとっては、自分ひとりで明確な将来の目標を語れるようになることは難しいでしょう。
2月に行った面接の練習でも、英語が得意なことを活かし、自分の好きなコンピューター関係の仕事についてみたいと、明確に自分の将来を語れていたのは1人だけでした。このように、子どもたちが自分の将来の目標を自らの言葉で語れるようになるためにも、何度も面接の練習が必要です。さらにこうした目標は、常日頃から子どもたちに考えさせ、子どもたちから将来の目標を聞き取り、一緒に紡いでいく必要があると思います。このようなことは、子どもたちの居場所を目指す我々の教室の大切なひとつの課題だと改めて感じました。
さて、ここまで、高校受験の面接入試に関する子どもたちの大変さをお話してきましたが、受験生3人とも無事に合格することができ、公立高校への進学が決まりました。高校生活でもそれぞれ抱える課題はあると思いますが、前途洋々な高校生活を送れることを願っています。(HY)