外国人の子どもの高校受験

3月 外国人の子どもの高校受験
 3月は卒業のシーズン。エステレージャでは、小学生3人中学生3人が卒業式を終え、中学生、高校生としての新しい生活に期待を膨らませていました。そして、卒業生のAさんの受験を通して、外国人の子どもたちの高校受験について考える機会となりました。
 Aさんは小学生からエステレージャに通ってきていた子どもです。Aさんが受験校を決定するまで、受験勉強、そして合格手続きが終了するまでを振り返ると、多くの課題が見えてきました。それは、周りにいる日本人の大人のサポートです。
 Aさんは公立の全日制高校への受験を希望していました。しかし、3年生の1学期末の段階では、高校受験に使われる内申点の出し方を知らず、自分の成績がどのくらいなのかを把握できていませんでした。また、受験校を最終決定するのが1月になってしまい、面接シートを仕上げるのが遅れ、面接練習を始めたのは1月になってからでした。学校での面接練習は1回しか受けられなかったという状況もあり、エステレージャでの面接練習でも十分な面接内容とは言えない状態のまま受験を迎えました。受験勉強については、受験直前になっても過去問題集を仕上げるのではなく、塾の問題集で重要語句の暗記をしていて、受験勉強のやり方を分かっていないまま受験をしました。受験に関するすべてのことが出遅れてしまった感がありました。さらに合格手続きでは、提出書類の記入はスタッフと一緒に済ませたものの、手続きの前日まで入学金を振り込んでいなかったため、手続き当日の朝、銀行で振り込みを済ませてから提出書類の確認をスタッフが再度してから手続きに行くという始末でした。手続きが午後だったから良かったものの、午前だったら手続きに間に合わず、合格しても入学出来ない事になっていたかもしれません。
 Aさんの受験は、最初から最後までバタバタとした感じでしたが、外国人の子どもたちが高校進学をしていく時、どんなことが困難で、それに対処するには何が必要かを示してくれていると思いました。
 一つ目は受験校を決定するということです。受験校を決定するまでには、多くの情報を入手し、情報をもとに親子で受験校を決定していきます。ところが、外国人の家庭の場合、親が日本の受験を経験していなことがほとんどです。ですから、複雑な日本の受験制度や学校の種類、受験までの流れ等の知識を親は持ち合わせていません。また、学校から知らされる受験に関する情報は、日本語で伝えられるため、受験情報を理解できないことがほとんどです。そのため、外国人の子どもたちの多くは、自分で受験先を決定していきます。その時に一番頼りにするのは学校の先生です。先生が高校の情報をもとに、子どもの学力や特性を見極め、親代わりに子どもと一緒に受験校を決定するまで付き合ってくれることが必要です。
 二つ目は受験勉強です。受験勉強を始めるタイミング、学習計画の作り方、学習方法等受験勉強についてのアドバイスが得られるかどうかです。受験勉強では、いつ何をするか、どのように勉強するかを意識して勉強することが必要です。外国人の家庭では親は「勉強して」「頑張って」と励ますことはできますが、日本での受験経験がないため受験勉強についてアドバイスは出来ません。子どもたちは周りの様子を見ながら「そろそろ勉強しないと」と勉強を始めます。過去問題集をやり始めると思うようにはかどりません。特に国語、社会、理科では、長い日本語の文が多く、難しく複雑な日本語の文を読みとって答えを出さなければなりません。難しい日本語が理解できなければ入試問題を解けず、思うように受験勉強は進みません。このことは、日常生活で日本語に不自由していない外国人の子どもたちにもいえます。ですから、毎日の勉強でももちろんですが、受験勉強でも丁寧に時間を教えてくれる人や場所が必要です。
 三つ目は合格後の手続きです。日本人の子どもの場合、合格後の手続きや提出書類の準備は全て親がやってくれますが、外国人の家庭の場合はそうはいきません。漢字で書かれた書類を読み必要なことを記入していくことは、外国人の子どもの親にとってはとても難しいことです。難しい日本語で書かれた大量の文章を読み、その中から必要なことを読みとって記入していく作業は、難しく時間もかかります。日常生活で日本語に不自由なく過ごしていても、手続きに必要な日本語を読みこなすのはとても難しい作業です。母語で説明をしてくれる人を探すか、そうでなければ子どもが自分で書類を記入して準備する事になります。外国人の家庭の場合、子どもが自分で書類の準備をするほうが多いです。ですから、入学手続きが終わるまで手助けをしてくれる日本人の大人、学校か子どもの周りにいる日本人の大人のサポートが必要です。
 Aさんの高校受験を通して見えた課題、それは学校と子どもの周りにいる日本人の大人が外国人の子どもたちが置かれている状況を理解して、タイミングを逃すことなく必要なサポートをしていくようにしなければいけないということでした。エステレージャには4月には新中3生となる子どもが2人います。彼らの受験の時には、Aさんから得た教訓を生かして、万全のサポートができるようにしていきたいと考えています。(SH)