10月 男子3人の成長

男子3人の成長

 小学2年生のAさん、3年生のBさんとCさんの男子3人の関係が少しずつ変化してきました。今までは個々で学習したり過ごしたりする子が多かったのですが、最近では休み時間に3人で遊ぶ姿が見られるようになりました。これは、普段の教室の時間に意図的に3人で勉強したりする時間を設けたり、共通の母語であるスペイン語をスペイン語教室で一緒に学んだりした結果なのかもしれません。
 3人が一緒に過ごすことが多くなったことで、Cさんは兄離れ、Aさんは姉離れすることができました。それまでは、ずっと自分たちの兄と姉から離れることがなく、他の子どもたちと関わることがなかなかできていませんでした。それぞれ兄離れ、姉離れすることができたことで、兄と姉からすると下の子の面倒が減ることになり、以前よりも教室での自分の時間が持てるようになったと思います。もっともこれは、エステレージャ教室の中での様子のため、家ではどうなっているかは分かりません。これから子どもたちに聞いていきたいと思います。それは、外国人の子どもたちは、親が長い時間働いていることから、家事や年下のきょうだいたちの面倒を任されることが多いためです。弟や妹の面倒をみなければならないために自分の宿題がやりづらかったり、同い年の友達と遊びたいけど家から出られないなど、悩みをよく耳にするのです。
 先日も、この男子3人で「のっぺらぼう」という物語のプリント問題に取り組みました。文章を読む際には丸読みをしたり、答え合わせの時には、なぜその答えが正解なのか、文章の中から根拠を考えたり、授業形式で取り組んでみました。3人とも、とても意欲的に勉強する姿勢が見られました。しかしAさんは文章を読む時にたどたどしく、文章を理解するのにも時間がかかりました。その時、Bさん、Cさんのふたりは、Aさんが読んでいるとき、「まだ?」「そんなのも読めないの」と言うこともなく、読み終わるのをじっと待っていました。むしろ、温かく見守る感じもしたのです。3人で過ごすと走り回ったり、じゃれ合ったりする元気な子たちですが、この時はいつもと違う様子が見られました。Aさんは他のふたりより1つ年下の分、もしかしたら2人の子も今までに音読が上手くできなかった経験があったのかもしれません。そんなこともあって、3人は一緒に過ごすことがあるのかと思います。
 音読を聞いて感じたことは、外国人の子どもたちの中で、音読をスラスラと読める子どもはあまりいないということです。もちろん上手に読める子もいることはいますが、大多数の外国人の子どもは音読が苦手です。音読が上達しない原因としては、家では母国語を話していて、日本語を話すのは家の外にいる時に限られていることにあると私は考えています。このことは、大人の私に置き換えてみてもなかなか難しいことだと想像します。きっと精神的にも大きな負担になるのではないかと感じます。
 子どもたちに聞くと、「家で音読を聞いてもらえる人がいない」と言います。親からは、「仕事で家にいられない」「自分が音読を聞いて何がよいのかがわからない」といった声を聞きます。また、学校の中で音読する際に、周りの日本人と比べると読むのが遅かったり、読めない文字があったりするため、声に出して読んでいないことが多いのではないかと考えます。教師は、一人ひとり読んだり、教室の中を回って音読できているかを確認したりしないと、誰が読んでいるのかはわかりません。音読を毎日の宿題にする学年やクラスは多いかもしれませんが、そもそも音読ができない子どもたちにとって、学校でしっかり学習していかないと、ただの苦痛になってしまうかもしれません。宿題を出すのは簡単ですが、どこまで学校で身につけてあげられるかが大切だと思います。
 このように最近の3人の男子の関係の変化から、多くの課題を教えてもらいました。(T.B)