遅くなってしまいましたが、4~5月のエステレージャ教室の報告です。
今回は外国人の子どもが日々の学校での学習において具体的にどのような困難を抱えているかについてお伝えしたいと思います。
教室に通う子どもたちに学校の教科で何が嫌いかを尋ねると「社会科」と答える子どもが少なくありません。他の教科についても苦手だったりするのですが「社会科」を苦手とする子どもは特に多いようにも感じます。
先日の教室で、中学生の女の子が中間テストの準備のために社会科の勉強をしました。テストの出題範囲は日清・日露戦争から帝国主義~第一次世界大戦です。おそらく日本人の子どもであっても(大人でも)近代史はちょっと苦手、という人も多いのではないでしょうか。今回は出題範囲が広いことに加え、難しい用語が次から次に出てくるし、彼女にとっては想像がつかない世界の出来事で、教えている途中からは、水があふれ出ているバケツにさらに水を継ぎ足しているような状態になってしまいました。今回の範囲は近代史の中でもかなり複雑な部分だと思われるので、彼女にとっては理解するのがとても厳しい様子でした。
そのことを象徴するのが彼女から発せられた「「欧米列強」の「米」は「おこめ?」」という問いかけです。冗談のように聞こえるかもしれませんが、彼女にとってはこれは深刻な問いです。私たちはこの問いこそ、真剣に受け止めなければならないと考えます。
「欧米」に限らず、日本社会には数多くの漢字が紛れ込み、無意識にそれらを使っています。しかし外国籍の子どもたちから見れば突然「おこめ」を表す漢字が混ざっていることになります。
この例に示されるように、単に漢字を読める・書ける、ということだけでは教科の学習は進みません。どのような文脈で同じ漢字を読み替えるのかといったことも習得していく必要があるようです。普段から歴史に関する読み物や物語に触れていれば、歴史に対する想像力が働くかもしれません。もっと時間をかけてコツコツと学習を丁寧に積み重ねていくような働きかけが必要だと痛感させられる出来事でした。(FK・TH)