【報告】8月6日学習会

外国人の子ども理解のための学習会活動報告

日時:8月6日(火)13:00~16:00

場所:大和市シリウス612(文化創造室)及びオンライン(Zoom)
テーマ:「外国人の子どもの対話による自己形成~国際教室の実践を通して~」
講師:大和市立下福田小学校 小林加奈氏、 座間市立東中学校 藤木仁美氏
参加者:17 人

 2023 年度は国際教室や家庭での対話が言語形成や人格形成だけでなく、記憶の結びつきに大きく関わっていることを学習した。

 今年度は国際教室を担当した経験者に当時の実践経験を振り返ってもらいながら、改めて国際教室 での対話が 自己形成にどうつながっていくのか を講演してもらった。

 小林氏からは、小学生の事例が挙がった。日本語とスペイン語のダブル言語である I 君の事例ではクラスの 3/4 から I 君の苦情を受ける日々はあるが、本人に話を聞くと問題行動の前には I 君自身が 100 %嫌な経験をしていたことが分かった。最初は「どうせ話したってわかんないでしょ」とネガティブだった I 君が身近な大人である担任と対話を続ける中で、突拍子もない夢や 思い付きの話が聞いてくれる他者のおかげで、夢に向けた計画を自分で軌道修正できるようになっていき、ポジティブな会話になっていった。対話によって経験が整理され、その経験が価値づけられていく。言葉を獲得していくことによって、より深く考えることができるようになる。安心できる対話相手がいることで、自分の気持ちを言葉にすることで整理ができ、自分の気持ちを分析できるようになる。よりよいものを目指す土台ができていくことで自己形成の確立へ向かっていくのではないかとまとめた。
 藤木氏からは、中学生の事例が挙がった。座間市では国際教室の実践前例や市からのサポートが乏しく、振り返ると藤木氏本人も担当者として自身の在り方を模索していた。自分についてもっと知りたい中学生にとって 、 表面的な体裁だけ でなく 他愛のない会話から自分のことを語ることができる必要であり、その機会が中学校はとても少ないと振り返った。中国語を母語とする N さんは、クラスになじみたいが、場違いな発言からトラブルも多かった。もっと自分を見てほしい、友達が欲しいと国際教室ではひたすらおしゃべりをすることもしばしばあった。言いたいことがうまく伝わらない葛藤もありクラスで空回りすることも多かったが、 N さんの面白さを認めてくれる人も出始め、居場所ができていった。小3でアメリカから日本へ来た J さんは、 母は教育熱心だが、自分から交友関係を広げること が苦手で静かに過ごすことが多かった。中学 3 年の人権作文で「日本での暮らしにくさ」について語り、受賞したが、全校朝会での発表は拒んだ。堂々と発表してほしかったが安心できる環境ではなかったのだろうと当時を振り返った。特に中学校ではクラスや家庭の中では目立たないように、怒られないようにと必死で身を潜めていることも多い。「ここは自分を出してもいいんだよ、リラックスしていいんだよ」と安心できる環境が必要だとまとめた。

参加者からの感想
・国際教室の担任の良さは「その生徒の話をじっくり聞いてあげられること」だ と再認識しました。聞いてみたい、知ってみたいとその生徒に興味を持つことが大切ですね。国際級の生徒のケース会議が今後あったら、かれらの保護者の文化的背景を話せる場面が作れる といいなと思いました。

・子どもと向き合って会話を紡ぎだしている様子がうかがえてとても勉強になりました。外国ルーツの子どもたちもこんな感じの先生に出会えたら幸せだろうなと思いました。

・国際教室での担当の経験を経て市にももっと要望を言ったり、よりよい座間市にしていきたいという思いが強まりました。もっと国際教室でこんなことできるよと勉強面だけでないと ころも生徒や保護者にも伝えていけたらよいと思いました。

・国際教室を運営するうえでの障壁がどんなものなのか鮮烈に伝わってきました。パッケージ教育と揶揄されることもある学校教育ですが、そこから「外れた」ニーズを持つ子どもに対してどれだけの支援を、対話を通じて行えるかという問題は、看過できないものだと感じました。まだ体系化されていない教育を行う上で大切なのは自己表現などのコミュニケーションであり、発表者の 方が述べられていた「取り出されると習熟度に差が生まれて困る」といった発言のような知識詰め込み教育で授業を行っ ていると、そういった柔軟性が生まれないのかもしれないと思いました。