この計画はひみつです

理事推薦本
文:ジョナ・ウィンター、絵:ジャネット・ウィンター、訳:さくまゆみこ『この計画はひみつです』(鈴木出版 2018)

「ニューメキシコの砂漠の名もない町に、科学者たちがやってきました。ひみつの計画のために、政府にやとわれた科学者たちです。計画は極秘とされ、誰一人情報をもらしません。思いもよらないものが作られているにちがいありません。もうすぐ完成しそうです。時計の針がチクタクと時を刻み……」表紙裏に書かれた文章から、この計画が政府にとってとても重要なものであったことがわかる。

この絵本は、アメリカで行われた人類最初の核実験といわれるトリニティ実験を題材にしたものである。1945年7月16日に行われたこの核実験の3週間後、8月6日広島に、8月9日長崎に原子爆弾が落とされた。この2つの原子爆弾の被害を受けて亡くなった人は21万人以上ともいわれ、そのほとんどが市民で子どももたくさんいた。

砂地ののどかな場所に優秀な科学者が集められ、昼も夜も実験をしたり研究をしたりしている。でも何を作っているのか、外にいる人は誰も知らない。知らない間に恐ろしい計画がすすめられ、多くの命を奪うための実験を行っていた。
この絵本の話は、私たちが生きている今も同じかもしれない。知らない間に、知ろうとしない間に、兵器や核開発などに加担し、戦争に向かっている…このようなおぞましい事がすすめられているかもしれないのだ。
この絵本に出会ったのは中学校の図書館だった。戦争や原爆の本が並んでいる中にこの絵本があった。この絵本が何を伝えようとしているのか、子どもたちと一緒に考えていきたい。
(A・M)