『教えないで教える』

4月理事推薦本 長谷川貴則著『教えないで教える』(文芸社 2018年)

 「教えるということは教えないこと。」こんなよく言われるようなことを意外にも学校現場で実践しようとする人は少ない。「教えなければいけないことはたくさんある。」「限られた授業で考えさせている時間がもったいない。」「まだまだ自分たちではそんなところまで考えられない。」「教えないこと」を実践しない理由は大体そんなところだろう。
 今回私がお薦めする一冊の著者はコンピュータプログラマなのだが、組み込み技術系の講師として、また子どもにラグビーを教えるコーチとして、「教える」ということに多く関わる生活を送っている。そんな作者が担うプログラマの企業新人講習で、「勉強したつもりがないのに、いろいろできるようになっているのが不思議」と受講者は答えている。そこには「育てる」ための色々な仕掛けがなされていた。
 ・難易度は「できそうもない」「簡単にできてしまう」ではなく、「ぎりぎりクリアできる」課題設定にする。
 ・チームで分担せざるを得ない負荷の課題を与える。
 ・作業後には反省をしてその反省を全体の場でプレゼンテーションする。
 ・自分や他者からの反省から「気づき」、その時点からさらに適切な課題を与える。
 例えばこれらの仕掛けを子どもたち設定するには、観察することがとても重要である。逆を考えれば、指導者が例えば、教員でも、先輩でも、監督・コーチでも、親でも観察し、そこから何かを「教え込む」のではなく、「育てるための仕掛け」が重要なのである。
 この本を読んだ感想は、学校ならば、授業や部活動、行事などで様々なことに応用できる。学校以外にも、そんなことにたくさん気づかされ、子どもたちの成長をより感じられる、子どもだけでなく大人にも、どんなチームにも応用できる。そんな一冊である。(AN)