今回の紹介は、これまでに推薦された本の中から、もう一度推薦したいと思った本の読後感想である。未読の方は、是非、これを参考に手にとっていただきたいと思う。
推薦本は、9月に紹介された棚園正一『学校へ行けない僕と9人の先生』である。物語(漫画)は、小学校一年生の主人公が担任の先生の話すことについていけず、勇気を振り絞って「わかりません」と伝えたにも関わらず、先生に叩かれるところから始まる。そして、明日学校へ行ったらまた怒られるかもしれないという不安から、登校することができなくなっていく。このような主人公に、学校の教師や家庭教師、医療機関などがどのように支援しようとしているのかが、子どもの視点から描かれている。
読みながら、何度か読む手が止まった。それは、主人公と出会う大人達が、不登校の主人公のために様々な関わりを見せるのだが、その行動は果たして誰のために行っているのかと考えてしまったからである。「子ども達のために、、、」と学校の教師達は過ごしているはずである。しかし、それはもしかすると思い込みであったり、自分自身のためであったりするのではないか。
中でも特に印象に残ったのは、主人公が2年生の時に出会う優しい風の担任の先生である。私があえて「優しい風」と書いたのは、クラスに問題があることを感じながらも流してしまったり、出来事から目をそむけてしまったりするからである。荒波をたてないように日々過ごそうとしているのである。大きな問題も起こらず日々過ぎゆく中で、子ども達が学び成長していくことは、大人から見れば安心できる環境なのかもしれない。しかし、子ども達にとっての学校生活は、小さな社会が作られ、子ども達は自分の居場所を作ったり、保持したりするために戦っているのである。実際、私自身が小学生の時にもそうだったのである。友だちと仲良くするために話題を集めたり、注目されるためにふざけてみたりと友だちの輪から外れないように日々過ごしていた。それを当たり前のように過ごしていたが、今思い起こせばとても疲れていたし、余計な気遣いを毎日のようにしていた。そのような自分の姿は、今学校で過ごしている子ども達の中にもあるのだと思う。果たして、私を含め大人達はどこまでその現実を見つめ、子ども達と向き合っているのであろうか。
学校へ行くことが「フツウ」と考えてしまったり、みんなと同じように過ごすことが「フツウ」と感じてしまったりする雰囲気が学校のイメージとして色濃く染みついている。これは、今も昔も変わらず大人達が作りあげてしまっているように思う。「フツウ」をたよりに学級づくりをしている自分を、もう一度考え直そうと強く感じた。