保坂渉・池谷孝司著『子どもの貧困連鎖 (新潮文庫)』(新潮社2015年)
東京五輪に向けた新国立競技場の建設費が騒がれる昨今、格差社会の広がりを感じつつこの本を手にした。公衆トイレで寝泊まりしながら生活費と学費を稼ぐ高校生、車上生活をする中学生や保育園児、保健室で朝食をもらう小学生…。「子どもの貧困は、見ようとしないと見えない」という姿勢の元、定時制高校から、中学校、小学校、保育園へと年代を下げて現場ルポを行い、現代社会の闇に隠れた子どもの貧困状態を生々しく伝えている。元々2010年4月から2011年2月までの共同通信の連載記事をまとめたものである。現在、日本の子どもの6人に1人が貧困状態にあるといわれる。親の経済力の格差が子どもの学力格差につながり、子どもの力では抜け出せない貧困の連鎖が続く。夢や希望などという言葉とはほど遠く、生きることすら危うい子どもたちに対し、どの立場の人間がどう動くことができうるのか?各章の終わりの識者インタビューにそのヒントが示されている。(G)