齋藤浩著『子どもを蝕む空虚な日本語』(草思社2012年)
タイトルと著者が相模原市立の小学校の現役教師であることに興味をひかれて本を手にした。
「ムカツク」「ウザイ」「キモイ」といった言葉が普通の日本語として教室で使われ、子どもたちの言葉や表現力が乏しくなっている。著書は、これらの言葉は意思表示を避け言葉の意味も深く考えない、一方的な会話をする、理由もなく相手を批判し、批判する仲間を集めて友達だと勘違いする子どもたちの姿につながっているとし、確かな言葉が子どもたちの未来志向の姿勢を作り出すと指摘している。こうした子どもたちの実例と確かな言葉を獲得させるための著者自身の実践を紹介している。さらに親や教師といった周りにいる大人たちが自分の言葉を持ち、表現することの素晴らしさやコミュニケーションの心地よさを伝えていく役割を担っているとしている。
大人たちが言葉に対する感覚を磨き、子どもたちに豊かな言葉の環境を与えることが今の時代だから必要だということに改めて気づかされる。そして、言葉に関しても、子どもたちの未来のために大人たちができることから実践していかなくてはいけないと深く考えさせられる。(S)