鈴木翔著『教室内カースト』(光文社新書2012年)
4月は何かと“新”がつくものたちが町にあふれる。新学期を迎え新しい生活の場に心を弾ませる季節でもある。新しく入学したものや一つ上の学年に進級し新しい先生や友達に出合うもの、社会人となり働きに出るものなど。そんな事を思い、この一冊を思い出した。本書の冒頭には、「人間が出会うと、そこには必ず『値踏み』というものが発動する」と言う見出しはインパクトがある。つまり“新しい生活の場”において必ずしも心を弾ませるなどというようなきらきらするようなことばかりではない事がその新しい生活の場にあるからだ。
本書『教室内カースト』は、クラスで発生するヒエラルキーについて分析され述べられている。学校内で見られる子どもたちのいじめや不登校は、この子どもたちによって“ランク付け”されることが原因の一つとして言われているのだ。クラス内でどの位置に入るかという事は子どもたちにとって死活問題となっているのである。もちろんこのようなランク付けは学校の場だけでなく、働く場においても当てはまる。弱いものはさらに弱いものを見つけ上位に立とうとすることで、いじめや排除の関係が発生するのであれば、学校や学級を経営する立場の者は、それらの状況を発見するためのたくさんのアンテナや知識を身につけないといけない。そうでなければ弱い者を守ることはできないのだ。本書は、そうした知識の一部を提供していると思う。
子どもたちの身近にいる者たちが、かれらの日常を聞き、状況整理を一緒にする。それは、新しい場で生活を始める者たちへの不安を解消する一つの手段であると思う。(C・S)