臼杵 陽 著『イスラームはなぜ敵とされたのか-憎悪の系譜学』(青土社 2009)
幼い頃、中東地域とアメリカの関係を見たとき、私には理解できないことがたくさんあった。見たテレビに映し出された湾岸戦争の様子、夜中に光り輝く砲弾が飛び交っていた。2001年9月11日、飛行機がビルの中に消え、崩れていったその2年後、イラクが空爆を受けていた。なぜアメリカは戦争をするのか、なぜいつも中東地域(イスラーム)の国が攻撃をされているのか。私にはアメリカが問題解決の方法として、「イスラーム」を砲撃し戦争をすることを選択した、その理由がわからなかった。
本書を読んでいくことで、アメリカが攻撃した理由、中東地域が攻撃された理由が少しだけわかったように思う。ただ、それはアメリカ側が「イスラーム」を「排除・迫害」しようとする理由がわかっただけで、本書の第8章のタイトルの一部でもある「戦争を正当化する」という言葉は全く理解ができなかった。「戦争」は「正当化」できるものなのか、なぜ「空爆」は許され、「テロ」は大きな問題とされるのか。
かつてはユダヤ人への迫害だった。冷戦が終わり、今は「アメリカの一極支配状態」で、本書にも「アメリカ化といっていいようなグローバル化」とあるが、アメリカに従わなければ「排除・迫害」されていく。このような状況が今世界の中で起こっている。中東地域の人々は、アメリカの考えている通り、民主主義をすすめたいのか。本当にそうなのだろうか。本当にそうであったとしても、なぜ、アメリカは言うことを聞かない、思い通りにいかない国・地域を「排除・迫害」するのか。私は理解ができずにいる。しかし「グローバル化」によっておしすすめられていくこの現状を、本書の10章にある「文明の衝突から文明の共存へ」という言葉、そして「アメリカとは異なる日本独自のイスラーム理解」という言葉から、イスラームへの「排除・迫害」やその連鎖を止める、そのわずかな可能性があることをみることができたように思う。(AM)