2月理事推薦本
木村泰子著『「みんなの学校」が教えてくれたこと: 学び合いと育ち合いを見届けた3290日』(小学館 2015年)
『大空(小学校)ではもう、特別というのをほった(捨てた)のです』という著者の言葉が心に響きます。
大阪市住吉区にある公立小学校、大阪市立大空青空小学校での取り組みをまとめた本著。
青空小学校は、「すべての子どもの学習権を保証する学校をつくる」という理念のもと、2006年に開校しました。初代校長を務めた著者・木村泰子先生と教職員で「みんながつくる、みんなの学校」を目指してきました。教職員だけでなく、地域住民や学生ボランティア、保護者、そして子ども自らが大空小学校をつくっています。「すべての子どもが同じ教室で学ぶ」という理念のもと、子どもたちが集団で一緒に生活することを何より大切にしている学校です。
著者の言葉・実践の中で印象に残った言葉として、「スーツケースと風呂敷」というものがあります。日々変化・成長をする児童、今日の子どもと明日のこどもは違う。学校現場ではどうしても、「こういう子にはこうする」という対応へのマニュアルや、「学校はこうあるべきだ」といった「形」を意識しすぎている。そうなってしまうと、そこにあてはまらない子どもはどうしても、学校に居場所をつくり、共に学びあうことはできない。
筆者はこう続けます。「最近の学校は『スーツケース』のように見えます。丸い棒のようにとがった子は、端っこをポキンとおらないと入れられない。まんまるの大きなボールのような子だと、ふたが閉まらないからダメ。(中略)『風呂敷』だったらどうでしょう。大風呂敷を広げておけば、棒の端っこが出ていても、みんなで何とか担げます。ボールも何とか包めます。包み方はアバウトで、マニュアルがあるわけでもありません。」
「できる」「できない」で子どもを分断しない。「その子といっしょに学ぶためにはどうすればいいか」を常に考えるという青空小学校の在り方は、すべての公立の学校で当たり前に行われるべきことだと教員生活7年目にして改めて考えさせられました。2015年2月には、2012年度の1年間を負ったドキュメンタリー映画『みんなの学校』が放映され、大きな反響を生んでいます。
「学校とは本来どうあるべきなのか」教師としての役割を考えさせてくれた一冊です。ぜひご一読ください。(MH)