理事推薦本
久郷ポンナレット・久郷真輝著
『19歳の小学生:学校へ行けてよかった』
(メディアイランド 2015年)
この本は、以前、「NPO法人外国人支援ネットワークすたんどばいみー」の青壮年の話を聞く会で講演していただいた方から紹介していただいた本です。
私はその団体で外国にルーツを持つ当事者として活動しています。活動の中で外国にルーツを持つ子どもたちは日本で生活する上で様々な葛藤を抱えることが多いです。しかし、その葛藤と向き合ってくれる人や理解してくれる人はなかなかいません。私自身は偶然にもすたんどばいみーやEd.ベンチャーに関わる人たちと出会い、葛藤をえぐり出す様々な問いの中から自分なりの答えを導き出して自分たちのアイデンティティを形成してきました。自分たちのアイデンティティを形成していくには、自分たちや親のルーツを知ることがとても大切です。国名だけでなく、自分の親たちが生きてきた歴史、歴史の実体験と選択、そういった過去を知り、自分なり背負うことで自分の国のことについて肯定的に向き合うことができる可能性が広がります。
しかしながら、親たちの実体験の語りを聞いたり、知ったりする経験は、親たちの言語が理解できなかったり、もうすでに亡くなっていたり、国によっては資料が少なかったりなど、様々な難しさがあります。その中でもこの本は、10歳の頃にカンボジア内戦を経験し、両親ときょうだい4人の命を奪われた後、難民として日本に移住、その後も様々な差別を体験しても貫き通す生き方を学ぶことできる一冊です。文書の漢字すべてにふりがながあり、日本語が苦手な子どもたちも読みやすく書かれています。中でも、カンボジア内戦の凄惨さ、難民として日本に来て16歳で小学校に編入し差別を受けながらも教育を受けられることの大切さ、娘である真輝さんがともに綴る想いなどほかにはない一冊です。(AN)