女の子はどう生きるか

理事推薦本
上野千鶴子 著
『女の子はどう生きるか:教えて、上野先生!』
(岩波ジュニア新書 2021年)

 私は現在中2の担任をしています。マナーの指導や生活上の諸注意とその日の動きの確認、配布物と回収物・・・そういう「しなくてはいけないと思われている活動」で、子どもたちと担任の共有できる時間は削られていきます。これも伝えたい、あれも考えさせたい・・・。

 それを補ってくれるのがこの本です。毎朝の読書の時間には、子どもたちは買ったり、借りたりして本を用意します。中には用意が間に合わなくて、道徳の教科書などを読んで過ごす子どももいます。そういう子どもたち向けに、この本を貸してあげたり、時には指導の場面で話題にしたりしています。男女区別するわけではないけれど、とにかく女子には社会的に自立して、一人でも生きていけるようになってほしいと強く感じている私を後押ししてくれる本です。

 30年以上、教職を続けてきて、父子家庭の子どもの担任は2回しました。それでは、母子家庭はというと、数えられないくらいとしか答えられません。子育てって母の仕事?この本の中にも離婚したカップルのうち、養育費の取り決めをするのが4割弱、そしてその額の平均は43000円とありました。以前、卒業生の相談に乗って、判例の資料を取り寄せた時も、そのくらいだったと記憶しています。間違いなく、母子家庭は貧困の崖っぷちに立つケースが多い。

 出産、子育て・・・全て自己責任として済まさずに、今いる子ども、困っている子どもを社会で支えていくことが必要だと思います。そのような社会の到来を願うとき、不平等に気付いてガマンせず、おかしいことにはおかしいと声を上げる人たちの存在が大切だと思います。そういう子どもたちを育てていくときに、子どもたちに読ませてあげたい本です。(MM)