日本社会の移民第二世代

理事推薦本
清水 睦美、児島 明、角替 弘規、額賀 美紗子、三浦 綾希子、坪田 光平 著
『日本社会の移民第二世代――エスニシティ間比較でとらえる「ニューカマー」の子どもたちの今 (世界人権問題叢書)』
(明石書店 2021年)

 この本は、Ed.ベンチャーでも「外国人の子ども理解の学習会」で講師となった経験のある研究者たちが、調査対象となる移民第二世代の170名にインタビューをして調査研究としてまとめたものです。
 実に約700ページにもわたる「日本社会の移民第二世代」辞典のような本で、中国にルーツを持つ私自身も含めた「ニューカマー」たちの自らの人生を振り返りながら語りを分析し、かれらの家庭背景や学校での困難さ、どんないじめにあったか、その国の文化背景、学校の先生や地域の人の言葉や活動などの環境で起きた変化、アイデンティティの肯定/否定、ジェンダーや農村出身など地位・格差にまつわることなどを様々な人の語りを紡ぎ、横断的にまとめています。中国のほかにも主にベトナムやカンボジア、フィリピン、ブラジル、ペルーなどEd.ベンチャーの活動拠点となる大和市に多く住むルーツについて扱っています。
 私が近隣の市の中学校の教員として働いている中で多く感じることは、「先生たちにもっと子どもたちの背景を知ってほしい」ということです。私自身は小さな頃から日本人とは違うことで抱える葛藤があり、外国にルーツを持つ同じ世代が日本の学校に通う中で嫌な経験している現実を目の当たりにしたけれど、その現実と一緒に向き合おうとしてくれた先生たちや似たようなルーツを持つ人たち、地域の人たちがいてくれました。だから、今の子どもたちの葛藤や現状に自分が気づくことは多いかもしれないけれど、他の先生たちももっと学んでほしいし苦しんでいることに気づいてほしい。この本はまさに「歴史は繰り返される」と言えるくらい、葛藤を抱えた今のかれらに類似した経験をしていた事例が多く、「どうしたら否定的に捉えているルーツを肯定的にしていくことができるだろう?」「かれらの家庭背景の複雑はなんなのか?」「かれに共通する学校不適応やいじめの背景はないだろうか?」「かれらは将来どうなっていくのか?」「自分はかれらをどう変えていけるのか?」など、「もっと知りたい!」「全部でなくてもこのルーツや事例に関係した部分だけでも読みたい!」といったような読み方もできる機能的な本です。ぜひ活用してみてください。(AN)