どうしても頑張れない人たち

理事推薦本
宮口 幸治 著「どうしても頑張れない人たち―ケーキの切れない非行少年たち2―」
(新潮社2021年)

 前作「ケーキの切れない非行少年たち」の著者、児童精神科医である宮口幸治氏の続編です。頑張り方が分からず、苦しんでいる「どうしても頑張れない人たち」を適切な支援につなげるための知識とメソッドが書かれています。
 「頑張ったら支援します」という言葉への違和感についてから始まります。では、頑張れない人はどうすればいいのか。著者は、児童精神科外来に来る発達障害のある子どもや子育てセミナーに参加する若い母親の様子から、支援の必要性を認める一方で、「本当は支援が必要にも関わらず、支援に繋がらない人たちが大勢いる」と述べています。教師はこの事実を念頭に置いて子どもや家庭と関わり、困っている人にこそ適切な支援につなげていくことが大切だと感じました。
 特に、第6章「支援者は何をどうすればいいのか」の部分は、興味深い内容でした。教師として自分が日頃、子どもたちに対してどのように関わっているかを振り返りながら読みました。これまで、子どもにできていない所があっても、ポジティブに捉えた言葉がけをして励ますことは、むしろいいことだと考えていました。余計な負担をかけることは、本人の成長にとって逆効果だと思ったからです。しかし、意味のない承認によって、子どもがそのままでもいいのだと頑張らなくなってしまったら、「将来、被害に遭うのは子どもたち」だという言葉にハッとさせられました。成長するチャンスを奪っているのだと考えると、とても恐ろしいことです。大人が少しでも改善のための手立てをして、意味のある承認をすることで、未来へつながる子どもにとって必要な力をきちんと育んであげることが大切だということを教えられました。
 日々指導をしていて難しいと感じるのは、子どものやる気を出させること、適切な負荷をかけて力を伸ばすことです。大人もそうですが、興味のあることや楽しいと感じることには積極的に取り組めても、自分の苦手なことやできないことに対してはなかなか頑張ろうとはしません。もう少し頑張ってほしいと感じる子ほど、この傾向は強いと感じています。著書を読み、頑張れない子へ支援するヒントを得られたので、これから実践に生かしていきたいと思います。内側にしか取手が付いていない子どものやる気スイッチをONにできる支援者になれるよう、精進していきたいです。(SM)