コロナ禍で追いつめられる女性たち

理事推薦本
飯島裕子 著
『ルポ コロナ禍で追いつめられる女性たち 深まる孤独と貧困』
(光文社新書 2021年)

 “女性活躍 臨時休校 #おうち時間 休業補償 テレワーク”という、聞き慣れた、割と聞こえの良い言葉が本書の帯に羅列していた。しかし、最後の一文が本書を選ぶきっかけになった。最後の一文とは「の裏に潜む 分断」である。潜んでいる“分断”とはどのようなものなのだろうか。
 2020年秋、女性の自殺率が前年比2倍近くに急増したと報じられた。しかし、女性の“異変”は2020年春先のコロナ禍が始まった直後から起きていた。本書はルポ(ルポルタージュ)であるため、女性たちに起きた異変や困難、死に直面しながらも必死にふんばる姿が、リアルな女性の声と共に随所に書かれている。
 本書では、なぜ女性にコロナショックが集中してしまったのか、様々な視点から論じられている。コロナショックが“非正規・サービス業・女性”に集中してしまったという問題、密室化された家庭で起こるDV被害や性被害の増加、“家族格差”、シングルマザーを襲う困難、女性が多くを占めるエッセンシェルワーカーの苦境等が生の声と共に書かれている。
 テレワークについて書かれている第4章の中に“テレワーク階級”という言葉がある、飯島氏はこれを“新しい身分制度の誕生”と書いている。テレワークをしやすいのは年収の高い男性、しづらいのは年収の低い非正規の女性という問題である。第4章の最後に「正規と非正規の間で見ないふりをしていた格差がコロナ禍によってあからさまになり、非正規で働く人々を確実に蝕んでいる。澱のように積もった格差はついに命の格差にまで及んでいる」と書かれている。”命の格差”という言葉の重みに衝撃を受けた。命にも格差をつけてしまっているという現実が確かにあるのである。
 本書に書かれている問題は、コロナ禍以前から全て存在していた。それらは社会構造の中に組み込まれ、見えづらく埋もれており、そこには生きづらさを抱えながら必死に堪え、なんとか一日一日を生きていた人々がいた。飯島氏は「不可視化されてきた困難がコロナ禍によってあらわになったに過ぎない」と述べている。コロナによってさらに深刻化した問題は幸か不幸か表に出てきたのである。もう見て見ぬふりをしてはいけないのではないか。
 本書のおわりに、「社会的に脆弱な立場にある人々は、感染症に対する闘いのみならず、構造的に組み込まれてきた不利や困難とも闘わねばならず、それは感染症が収束した後も続いていくだろう」と書かれている。困難はコロナと共に綺麗に収束するものではないのである。しかし、あらわになったことで今まで以上に向き合うことができるのかもしれない。
 本書は、困難な状況に追いやられている人が全て見えるようになったわけではない。「声を発信する手段をもたない取り残された人々を探し出す努力をしなければならない。ここにいない誰かのことを常に思う想像力が分断を避ける力になるはずだ。」という言葉で締められている。コロナ禍において、人と人との距離が広がっている今だからこそ、想像力を働かせることの重要性を感じた
 データや数値では計り知れない、そこで生き抜いている一人ひとりの女性たちのリアルな声や現実に耳を傾けていただきたい。(SN)