理事推薦本
治部れんげ 著
「男女格差後進国」の衝撃 無意識のジェンダー・バイアスを克服する
株式会社小学館 2020年
日本は153か国中121位。先進国の中では最下位。そうはあってほしくはないと頭をよぎるが、ジェンダーギャップ指数のランキングであった。ジェンダーギャップ指数は、政治における議員等の女性比率、経済における管理職の女性割合、教育における女性の進学率、健康における出生児や寿命の男女差をもとに決められる。本書は様々な統計や筆者の体験や経験をもとにジェンダーにおける問題を提起している。
121位という数字だけ見ると、日本は成長していないようにも見えたが、2006年から2020年の間で指数のポイントは上がっていた。しかし、他国ではそれ以上にポイントが急速に向上。日本がそのスピードに全く追いつけていないことが明らかになった。差が開く一つの要因として、北欧諸国では家庭内の仕事は税金を使って、よそのお姉さんやお母さんに任せられる「ケア労働」に力を入れていることも挙げられた。ここで、男性がもつ女性へのジェンダー差別だけが大きな問題ではないような気がしてきた。そもそも、誰もが働きやすい会社や社会が成立していけば、ジェンダー問題は少しずつ軽減していくのではないかと考えた。すると、持続化可能な経済成長のためには、ジェンダー平等が必要だということが記されていた。ケア労働にかかる時間が長いことで、女性が外で働くことが難しくなり、たとえ働けても短時間に留まり、経済的な自立が難しいことが背景にあることがわかり、本を読みながら何度も頷く自分がいる。
私は男性で、現在は教員をしていて、8か月になる子どもがいる。正直、育休を取って妻が子育てをする大変さを知りたいと思っている。しかし、人手がなく、私が育休を取ることで職場の人への負担が大きくなるのはわかりきっている。また、代わりが見つからず国際教室などの先生が代わりに担任を行い、国際級の子どもへしわ寄せがいってしまうのを目の当たりにすると、育休を取りたいとはなかなか言い出せない。国や教育委員会は育休を推進してはいるが、現場では育休を取れる体制にはなっていないのが現実だ。しかし、育休を取れば、女性が育児をするのではなく、男性も育児をするために仕事を休業するのだというジェンダーレスのメッセージを子どもたちや職場の人にも伝えられる機会にもなると思い、日々葛藤中。
女性管理職が少ない日本。女性の管理職希望の意欲の低さが挙げられているが、深堀すると、「子どもとの時間を大切にしたい」や「子どもがいるから心配」という声が出ているそうだ。ただ、それは男性も同じことが言えるのではないか。いや、言えないといけないのではないか。やはり男女共に育児しながらも働ける環境が実現できれば、ジェンダー問題が少し減るように思う。ここまで書いてきて、やたらと男女という言葉を使う自分がいて、そもそも同じ人間なのだから、男女では区別しないような言葉を使わなければと反省。今回の本を読むことで、反省して考えての繰り返しで、少しだけ新しい考え方がアップデートされた。(T.B)