理事推薦本
本田由紀著
「『日本』ってどんな国?国際比較データで社会が見えてくる」
(ちくまプリマ―新書 2021)
※以前、推薦本として掲載されている本ですが、改めて別の理事より推薦されましたのでご紹介いたします。
日本は「スゴイ国」なのか、「普通の国」なのか、「相当やばい国」なのか、著書では、家族、ジェンダー、学校、友だち、経済、政治…各章でそれぞれ、人々の生活に密接に関わる社会領域を取り上げ、日本の状況がどうなっているのかをいろいろなデータを基に示しています。今まで「あたりまえ」だと思っていたことが、実はそうではないのだということに気付かされ、日本が一体どんな国なのかを知ることができます。
ここでは、今年度のテーマ「女性の生きづらさ」につながる「第2章 ジェンダー」の部分について書いていきたいと思います。
日本におけるジェンダー面での不平等について、国際比較したデータから、国会議員に占める女性の比率や管理職に占める女性の比率が、OECD諸国の中で断トツの最下位であることが分かりました。他国に比べて遅れていることは知っていましたが、こんなにも大きな差をつけられているとは驚きでした。また、働いている女性は多いのに、不安定な非正社員、補助的な業務(一般職)、特定の仕事(人の世話や美容関係)などに集中し、男性との間で「棲み分け」が起きているようです。
なぜ、日本の女性が「公的」な立場から排除され、仕事の世界でも男性と同じような役割を担いにくくなっているのでしょうか。一番の理由は、今なお「女性は家庭の主な担い手」だと強く考えられていることにあります。データを見ると、日本は妻の家事分担比率がとても高いのに、不公平感はかなり低いところにあります。男性も女性も「そういうものだよね」と思ってしまっていることが、より深い問題だと述べられています。
このように、日本に異様なほどの男女間の偏りがある要因として、「働き方」の問題だけではなく、人々の間に浸透してしまっている「男らしさ」「女らしさ」についてのイメージの影響が大きいと指摘されています。「あたりまえ」のこととして根付いている「~らしさ」のイメージ=ステレオタイプには、個々人の行動や意識、扱われ方を一定の方向にしばってしまったり、不合理な差別に結びつけてしまったりする恐れがあります。子どもたちの前に立つ教師としても、ジェンダーに対する見方や言動に十分気を付けようと思いました。
読んでいると、この現状を何とかしたいという著者の強い思いが伝わってきます。いろいろな個々の課題は社会全体の問題として捉えていくこと、よくしていくためには現状を直視し、あきらめずに是正していくことだと訴えています。日本に生まれ育った一人として、教育に携わる者として、この国のことを見つめ、考え、声をあげていかなくてはと、心を奮い立たせてくれる1冊です。(S.M)