親といるとなぜか苦しい 「親という呪い」から自由になる方法

理事推薦本
リンジー・C・ギブソン
 親といるとなぜか苦しい 「親という呪い」から自由になる方法

(東洋経済新報社 2023年)

 この本のタイトルが目に入った瞬間、とても強烈な印象を受けた。それは、「親」といることがなぜ「苦しい」という言葉とつながるのか。そして同時に、「親という呪い」という言葉に決してよい印象を持たなかったからだ。
 Ed.ベンチャーではこれまで『女性の生きづらさ』をテーマに学習会を開催してきた。その中でも女性や母親が抱える生きづらさについても取り上げ、その声を聞いたからかもしれない。その立場から考えるとこのタイトルはとても厳しい言葉だと思う。
 しかし、この本を数ページ読んで少し気持ちが落ち着いた。『親を責めるためではない』という言葉が書かれていたからだ。読み進めると何度もそう言った言葉や似たような表現が出てくる。
 最近、『親と子ども』という関係性を改めて考えることが多くなった。虐待やヤングケアラーなど、そういった状況にあった子どもたちは『家族』の中にいると自分自身が置かれている状況に気づかない。大人になってからは、「なぜ、自分だけうまく行かないんだろう」と悩み、時には「私が悪い」「私が変わっているから」と自分を責めることもある。
この本の中では、「精神的に未熟な親」が子どもの人生に与える影響や、「精神的に未熟な親」を持つ当事者の話が多く紹介されている。共通することは、親との関係性が、自分自身の生きづらさと繋がっているということである。その多くは大人になってから自分の感じていることを表出することで、周りと少し違うことに気づき始める。そういった親との関係性や関わり方を見直す、考え直すことで生きづらさから解放され、自由になる方法が書かれている。そのためには、親を客観的に見られるようにすること、そして、感じている孤独や無意識の部分を冷静に分析することがとても大切であり、そこから見えてくる「親」の姿がある。
 読み終わったあと、はじめに書いてあった『親に合わせるのではなく、本当の自分を大切にして生きていけるようになれる』という言葉が心を軽くさせてくれたように思う。
 親を責めているわけではない。
 ただ、生きづらいと感じている人が少し楽になれる一冊になると思う。(A.M)