ハイヒールを履かない女たち~北欧・ジェンダー平等社会の作り方~

理事推薦本
あぶみ あさき 
ハイヒールを履かない女たち~北欧・ジェンダー平等社会の作り方~

(かもがわ出版 2022年)

 

 

 「北欧」と聞くと、福祉や医療の保障が充実していて…教育格差が少なくて…子育てがしやすくて…何より幸福度が高い、そんなイメージが浮かびます。もちろんジェンダー平等も進んでいるのだろうと、この本を手に取りました。
実際に、2023年のジェンダーギャップ指数ランキングでは、1位アイスランド、2位ノルウェー、3位フィンランド、と北欧の3か国が1位~3位を占めています。対する、日本は146か国中125位。この、ジェンダーギャップ指数は、経済・教育・政治・保健の分野からそれぞれいくつかの項目があり、各国分野でばらつきはあります。そして、各国で暮らすそれぞれの人々の感じ方は数値通りではないかもしれません。それにしても、125位…。
 この本は、ノルウェーの国民や政治家が、理想に向けて社会にどのように働きかけ変えていこうとしたのか(しているのか)が書かれています。読み進めていくと、今の日本で暮らす私には想像できないようなことでも、ノルウェーでは当たり前になされていることがわかってきます。女性の首相、同性婚した大臣、政党の総会にも子連れで参加…。まず政治の現場から変わっていくことが必要ということを体現しているように感じ、併せて政治の仕組みも違うことに驚きます。政党には、「青年部」があり、高校生や大学生などの若者によって構成されています。青年部の存在は大きく、メディアも頻繁に意見を聞き、議会の中でも発言権も投票権もあり、閉鎖的ではないことや若者からの変化へのパワーを感じました。多くの若者が社会の問題を自分事として捉え、政治への興味を持ち、主体的に参加しているのです。
 しかし、イメージしていたほど、理想的なだけではないことも書かれています。「セクハラや性被害を体験している人の数は、マイノリティではない。『静かなるマジョリティ』だ」との発言が上がるほど、セクハラや性被害が当たり前にあることや、被害を訴えた側の方が失うものが大きいとの認識が広まっていることにも触れています。また、移民背景のある人々の声があまり反映されていないのではないか、とも著者は語っています。そして、ある政党の党首の女性が、子育てとの両立が難しいことを理由に辞任し、優秀な女性政治家の多くが重要な役職の兼任が難しいと感じて消極的であるとのエピソードも…。
 ノルウェーでも難しい、まだまだジェンダー平等には至っていないと表現されているのを見て、日本は…と考えずにはいられませんでした。当たり前に自分の中に落とし込んでいたことが、そうではない…声に出さなきゃ変化もないんだ、自分事として身近なところから、変えられることはないかと考え動いていきたい、そのためにもっと日本のことも世界のことも知りたい、そんな風に感じた一冊でした。(T.Y)