現職教員の研究支援

 神奈川県には、所属校に籍をおいたまま大学等へ長期間研修を行える制度があります。今年は、会員の中からこの制度を使って大学院で研究を行うことになったYN先生の研究相談支援を行いました。以下、3回にわたる連続相談支援の感想です。

■第1回 研究論文の内容に迫る(5月27日)
 この春から横浜国立大学へ内留をしています。この度、大学院の教育社会学の講義で「学校現場における教育社会学者の臨床的可能性を探る–ニューカマーを支援する学校文化変革の試みを手がかりにして–」を取り上げさせていただくこととなり、論文を読み進めていく中でわからない解釈や論文を通じて主張された先生のお考え等をレクチャーして頂きました。Ed.ベンチャーが組織されるきっかけともいえる実践内容が論じられており、大学院と学校現場のどちらの立場でもある私にとって多くを考えさせられる内容でありました。参与観察や現場の先生方とのやり取りなどの実践をお聞きして、社会学者の学校現場での立ち位置の難しさを超えて、現場の先生とのご関係を築き上げたことは並み大抵はことではないと思いつつ、改めてこうした関係の重要性を感じることができました。大変難しい論文ではありましたが得るものも多く、トライしてみて良かったです。

■第2回 教科書分析の研究方法の再検討(7月13日)
 大学の講義「教育デザイン」において、担当教科である中学校社会科の教科書分析を行うこととなり、4社の教科書(公民科)の構成、内容を比較、分析を進めました。しかし、4社の単純な比較のみに終始して内容の薄いものとなり、今回は、主に視点の見出し方や先行研究の取り組み方についてご指導いただきました。普段現場で使っている教科書も視点を元に分析してみると、それぞれの構成、記述の意図が見え、大変勉強になります。ただし、その分野の基礎知識がベースにないと進まないこともお話を聞いて痛感し、内容を深めるべく勉強し直しております。

■第3回 インタビュー方法を学ぶ(10月11日)
 横浜国大への現職派遣が始まり半年が経ちました。3回目のご相談の今回は、フィールドワークにおける聞き取り、インタビューを仕方を一から丁寧に教えていただきました。ご指導いただき感じたことは、自分が思い描いていたインタビューとご指導いただいたインタービューのイメージが全く違うものだったということです。インタービューをするにあたり、ただ人から話を聞くのではなく、本当に自分の知りたいことを相手にお話しいただくためにきちんと準備する必要があるということを教えていただきました。先生ご自身の事例をご紹介頂き、インタビューというものにかなり具体的なイメージを持つことができました。今回ご指導いただいたことを大事にして準備からリスタートしたいと思います。
 今回のご指導から少し離れてしまうかもしれませんが、今まで現場で取り組みをする中、恥ずかしながら学術的な視点から教育を見るという機会は皆無でした。なぜなら、日常の教育活動の中で例えば、文献を手に自身の取り組みを振り返ったり、考察することは時間的な側面で不可能に近かったからです。しかし、今回はこのような機会をいただき、先行研究や学術文献をあたり、教育について考えることで新たな広がりを感じています。常日頃から、自身の取り組みを考える上で、知識や情報は必要であり、それが理論につながるように感じています。エドベンチャーで行っている、理論学習会などはそういった意味で大変有意義なものだと思います。現場から離れてしまい、なかなか参加できませんが機会があれば議論を通じて皆さんと考えを深めていきたいと思います。