2月 子どもと高校受験

外国にルーツを持つ子どもたちにとっての高校受験 

 今、エステレージャ教室には進学を控えた中学3年生が3名います。毎年この時期になると高校進学を目前に控えたかれらはそわそわと落ち着きがなくなります。
 受験対策として取り組む問題集やプリントを改めて見てみると、算数であれ理科であれ英語であれ、結局はそれらに共通しているのが日本語による出題であるという現実に直面します。
 数学では計算力はあっても、問題文を読みとる力がなければ正確な回答は不可能です。日本語を母語とする者にはきわめて当たり前なことですが、この「当たり前すぎること」に躓いているかれらの不安や心配は相当なものだと思われます。ですから、教室では子どもたちから「不安だ、心配だ」の大合唱になります。そんなかれらに対して、「とにかくできることをやってみようよ」と励ますことが精一杯です。そしてできるだけ得点ができるよう、今解ける問題を確実に解くこと、分からない問題に必要以上に時間をかけないことを伝えます。
 ペーパーテスト以上に重要なのが面接です。毎年この時期は面接練習に多くの時間を割きます。入室の仕方、お辞儀の仕方、着席の仕方、話し方、一つ一つの身体動作を練習していく中で、学校がいかに子どもたちの動作に介入しているのかということが、よく分かります。何度も練習を重ねる中で、子どもたちが「学校化」されていきます。
 そんな中で発見もありました。
 とても声が大きく積極的なAは、面接練習を重ねる中で「私は将来、キャビンアテンダントになりたい」と、はっきりと自分の将来の夢を口にしました。
 普段おとなしいBも「建築の勉強をして、将来は母国に帰り、建築家の親戚と一緒に仕事をしたい」と、とても具体的な将来像を描いて見せました。
 Cも「デザイナーの仕事を目指したい」という言葉を口にしました。
 今まで何回も教室に参加している中で、自らの将来像について具体的な言葉を口にする機会はあまりなかったので、びっくりすると同時に、このような受験の経験が自らの将来を具体的にイメージするきっかけになっているということを認識しました。
 日本語ベースとした教科学習には、やはり多くの課題が残っていますが、それでも受験という困難なハードルを越えることが、かれらの成長を大きく促しているという側面もしっかりと受け止めたいと思います。(TH)

追伸:
 おかげさまで、かれら3人は全員志願していた高校に無事進学することができました。かれらの高校生活が明るく希望に満ちたものとなるよう願ってやみません。