2月 外国人の子どもと漢字

外国人の子どもと漢字

 教室に通ってくる小学生の多くが漢字の宿題を持ってきます。外国人の子どもたちにとって、漢字の学習はとても難しく感じられる学習です。一つの漢字には音読みと訓読み2種類の読み方がある、音が同じでも形も意味も違うものがある、学年が上がるにつれて覚える数が増え画数も多くなる、画数が多くなると形が複雑になり形を覚えることが難しくなる、書き順が正しくないといけない、跳ねるべきところが跳ねてないといけない・・・しかも何回も書いて覚えなければいけない忍耐のいる学習であることから、漢字が苦手な子どもが多いです。一方、保護者には、漢字で苦労している経験があるからか、「子どもには漢字を頑張らせてほしい」という願いが強くあります。
 ある時、教室で漢字学習をめぐって南米系の姉弟の間で喧嘩が始まりました。スタッフとして活動している外国人の姉が、小学生の弟の漢字練習ノートを見て怒り始めました。母語で起こっているので周りのスタッフには何を言っているのかは解りませんでしたが、姉が弟の漢字の勉強をしていないことに腹を立てていることは明らかでした。姉の表情は次第に険しくなり、口調が強くなっていき、弟が泣きだしそうになったのでスタッフが間に入りました。
 弟の漢字練習ノートを見ると、何ページも漢字練習がしてありました。学校の先生が赤ペンで直した跡もたくさんありました。赤ペンで直されているのに書き直しをしていないことに姉は怒っていたのでした。ノートを見ると、明らかに形が違うものがありましたが、形が違っているのではなく全体のバランスが悪いだけのものも多くありました。元小学校教員のスタッフは、「バランスが悪いだけのものは許容範囲。小学校2年生にしては頑張って練習をしている」と、弟の努力を認めてくれました。
 漢字に親しみのない外国人の子どもたちにとって、バランスよく漢字を書くことはどれだけ難しいことでしょう。許容範囲が狭くなり、より正確に、よりきれいに漢字を書くことを求められ、赤ペンを入れられることが多くなると、漢字学習の意欲をなくしていくのではないかと感じました。日本で生活する中で、漢字を知らないと不便なことが多いことは事実です。エステレージャでは、「ただ書いて覚えるだけではない漢字の学習ができるようにしていかなければいけない」とスタッフの間で話しをし、楽しみながら漢字を学習できる方法を考えて、小学生が合同で学習する機会を定期的に作ることにしました。そして、小学校教員のスタッフ中心にその取り組みを始めています。(SH)