11-12月子どもたちに経験を

11-12月 子どもたちに経験を~特別授業の開催~

 前回ご報告したとおり、エステレージャ教室に通ってくる子どもたちは、多くの場合学校で様々な困難に直面しています。教室に通う中でスタッフとの関係性が出来上がってくると、だんだんとその困難を打ち明けてくれるようになります。そうした小さな声に接しながら、かれらに寄り添っていくことがこの教室の大きな役割であると考えます。
 子どもたちの声を聴いていく中で浮かび上がってきたのは、子どもたち自身が経験していること、感じたこと、考えたことを、自らの言葉で表現しようとするときの難しさです。宿題の作文だけではなく、日常の学校生活の中の何気ない授業の「振り返り(記録)」ですら、子どもたちにとってはとても高いハードルになっていることが分かりました。何より、様々な「経験」そのものが少ないのではないか・・・ましてやコロナ禍となって、社会の様々な側面で分断化や個別化が進む中、子どもたちが集団で学ぶ機会も少なくなってきているのではないかと考えられます。
 エステレージャ教室ではこうした懸念を少しでも軽減し、子どもたちに経験しながら学ぶ機会を、友達と同じ経験をしながら学び合う関係性を提供したいと考えました。そこで以下のような特別授業を企画し、実践してみたのです。

【特別授業 コロナウイルス】
 コロナウィルスについて、学校ではコロナの話や授業があまりされていないことから、今回のタイトルの授業を行いました。黒板には、子どもたちから出たコロナに対する、予防、感染経路、コロナの名前の由来、症状など、ウェビングマップで考えをカテゴリー分けをしました。授業の途中で学校でのコロナ対応の話題になり、中学校や小学校での情報交換をする姿が見られました。難しい言葉が話題に出た時には、中学生が小学生に対して分かりやすく説明する場面も見られました。日本人に対してでさえ、正しい情報が発信されていなかったこともあり、外国人の子どもたちにはより正確な情報が伝わるよう注意しなければならないことが分かりました。

【特別授業 紙飛行機】
 子どもたち同士がお互いに教え合ったり、考えを共有したりすることが少ないため、みんなで紙飛行機を作り、自然と交流ができるようにとねらいをもって行いました。山折りや谷折りなど、折り方を言葉でも説明することで、子どもたちは「なにそれわからない」とはてなマークを頭に浮かべていました。そこで小学生の高学年や中学生が分かりやすい日本語を使って説明をしていました。勉強が苦手な子どもたちも、この日は身を乗り出して話していた姿が印象的でした。エステレージャで見られるこうした姿が、かれらの通う学校でも見られるのでしょうか。学校ではかれらの周りにいるのはほとんどが日本人です。そうした中で、外国人であるかれらが、自分自身の思いや考えを主張できるよう、そのための練習の場として、このエステレージャハッピー教室があると考えています。

【集団学習 静電気】
 この特別授業をすることについては以前から予告していたので、子どもたちは「何やるの?」と興味をもっていましたが、「理科をやるよ」と言うと、「理科やだー、やりたくない」や「もう習ったよ」など否定的でした。しかし、実際授業を始めてみると、子どもたちは楽しそうで、「理科やっぱり楽しい」や「ほかに面白い実験ないの?」と食い付いていて理科のイメージが変わったようでした。まずは、学習というよりも体験的にいろいろな事をやっていき、学習に対する苦手を減らしていき、興味をもったら学習と繋げていく方が学びに繋がりやすいと思いました。

【特別授業 凧あげ】
 年末になり、凧づくりと凧揚げの特別授業をしました。理由としては、お正月が近い事と経験したことがないのではと感じたからです。実際、凧揚げをしたことある子どもはいませんでした。今日参加したのは、小学生6人で学年も1年生〜6年生までいましたが、みんな外に出て凧揚げをしている様子はとても楽しそうでした。また、幅広い学年で楽しめたのは、それだけその経験をしていないからではないかと感じました。今後も、遊びと学習を関連させながら、体験したことないことを取り入れていければと思います。今回の反省点としては、実際に凧を揚げた経験を踏まえて、なぜ凧が揚がるのかということを高学年の子どもたちには考えさせても良かったのではないかということがあります。経験を学びにつなげていく工夫がもう少し必要だったと考えています。

 時間上の制約などもあり、決して十分とは言えませんが、これからも機会をつくって上記のような取り組みを進めていければと考えています。(BT & NS)