K君の1年

K君の1年

3月、エステレージャでは、小学生1人と中学生2人が卒業を迎えました。中学生は、エステレージャからも卒業となりました。今回は中学校を卒業したK君のことを報告します。
ペルー国籍のK君は、小学校2年生の時からエステレージャに通ってきていました。K君は、教室に来るといつも机の下に入りゴロゴロと寝そべって過ごしてしていました。中学校に入るとさすがに机の下に入ることはなくなり、椅子に座ってお喋りをしたり絵を描いたりして過ごすようになりました。勉強をすることはほとんどなく、勉強道具さえ持ってこないことがほとんどでした。勉強するのは定期テスト前だけというのがK君のいつもの姿でした。
そんなK君も3年生になり、高校進学を意識し始めました。しかし、12月までは提出物が出せない、授業中は寝てしまう、学校には遅刻をするといった具合で、気持ちと行動が一致しないまま時間が過ぎていきました。12月にはK君のお母さんが入院して手術を受けることになりましたが、学校では最後の三者面談があり、受験先を決めなくてはいけない時でした。三者面談前に、学校の先生からK君の受験について相談をしたいとエステレージャのスタッフに連絡が入りました。そこで、国際教室の先生にはK君のお母さんがエステレージャに来る予定の土曜日に教室の見学に来てもらいました。そして、先生とお母さん、スタッフでK君とお母さんの希望を確認しました。受験方法にはいくつかの選択肢があることも確認して三者面談の日取りを決め、三者面談にはお父さんにも同席してもらい、エステレージャのスタッフも一緒に面談に同席させてもらうこととなりました。
こうしてK君の三者面談は、担任の先生とK君母子のほかに、K君のお父さん、国際教室の先生、エステレージャのスタッフ、そして通訳さんの7人が揃った面談となりました。面談では、K君とお母さん、お父さんの希望や入学金などの金額や納入の日程などの確認がされました。そしてK君は希望通り私立の学校を受験することになりました。受験に当たっては、今の生活習慣を改善していかないと、たとえ進学できてもその先卒業できるか心配であることもK君には話されました。その後、K君は時間ギリギリではあるけれども遅刻をしないで学校に行くようになり、エステレージャに来て勉強をするようになりました。冬休みには、エステレージャの受験対策に参加して、面接練習もするなどK君なりに頑張る姿を見せました。受験当日、遅刻をしないか心配でしたが、指定された時間に間に合うように家を出て受験先に向かったということでした。そして、K君は希望する学校の合格を手に入れました。
受験の心配のほかにも、不登校気味になったときには家庭訪問をしたり、教室に来ないときにはお迎えに行ったり、お母さんの手術入院の心配をしたりと、この1年、エステレージャがK君母子に関わることが多くありました。K君の支援の中で一番大きかったのは、学校とエステレージャがつながりを持てたということです。学校の先生と関係が築けたことで、K君母子の状況を理解してもらい、学校からも手厚い支援が必要であることを理解してもらうことができました。地域の支援団体が学校とつながりを持つ機会を作ることは難しいことですが、学校とつながることで子どもへの支援が手厚く出来るのではないかと感じます。これからも学校とつながりを持てる機会が作っていけるとよいと思います。地域と学校が連携して子どもを支えることができるようになりたいと考えています。(SH)