日本語の作文と支援

【エステレージャ教室 5~6月報告】

 エステレージャに来る子どもたちは、学校の宿題を持参して取り組んでいきますが、学期末になると、振り返りシートを教室に持ってきて、記入をしている小学生がいます。振り返りシートは、各教科の学習や学級生活の取り組みを振り返り、文章表記をするものです。

 今年度も、また振り返りの時期がやってきました。6年生になったAさんが、振り返りシートを持って教室にやってきました。記入欄を全部日本語で埋めなければならないため、「今日は宿題よりもこっちを先にやる。」と言って、スタッフと一緒に記入をしました。「〇〇を頑張った。」と記入するのが精一杯で、一人で空欄を日本語で埋めるのはとても大変です。スタッフは、「どんなことをして頑張ったの?」「どんなことができるようになったの?」「去年はどうだったの?」など質問をしてAさんから答えを引き出して、日本語で書いていく手伝いをしました。Aさんは、5年生の時よりも自分で考えて書けることが増え、漢字を使うことも増えて、成長が見られました。振り返りシートのすべての欄を埋め尽くした時、Aさんは「できた。一人でやったら5時間かかるから、終わってよかった。」とほっとした様子でした。

 外国にルーツを持つ子どもたちにとって、日本語で作文をすることはとてもハードルの高い作業です。日本語で会話ができていても、「書く」ということが苦手な子どもがほとんどです。会話は対面で行われるので、言葉の使い方が多少違ったとしても、話の流れや話し手の表情や言葉から、聞き手が言いたいことを予測したり、分からないことを聞き返して確認してくれたりするので、話し手にとって言いたいことを伝えやすいのです。文字を通して伝えることは、読み手が書かれた文章の言葉から、書き手の言いたいことを予測したり聞き返して確認したりしてくれることは期待できないので、的確な言葉や文章構造を使って作文をしていかなければなりません。それが、外国にルーツを持つ子どもたちにはとても難しいことなのです。ですから、支援者が子どもの話を聞きながら、子どもの言いたいことを一緒に文章にしていくことが必要になります。

 Aさんのことを通して、日本語が話せれば、外国にルーツを持つ子どもも日本人と同じように作文も書けるだろうと思われていることが多いのではないかと感じます。外国にルーツを持つ子どもの支援は、かれらが置かれている状況を知ることで、支援の仕方が変わってくるのだと思います。(SH)