【報告】7/22事例研究会

外国人の子ども理解のための学習会(事例研究会)報告

日時:2020年7月22日(水)19:00~21:00(Zoomによる)
参加人数:10名
事例提供者:上領史子先生(南林間中学校)

 事例研究会は、外国にルーツを持つ子どもたちの具体的な事例を通して、彼らの背景にある事情や問題を読み解く力をつけていくというねらいで開催しています。
 上領先生からの事例発表をしていただき、その後、質疑応答と意見交換を行いました。
 上領先生からは、来日に際して、詳しい事情を知らされないまま来日し、親から「だまし討ち」にあったことに許せない思いを抱えて過ごしてきていた子どもの事例が報告されました。子どもの行動から子どもの思いを知った教師がどのように対応して子どもの気持ちを整理し、苦しい思いを軽減していったか、また、受験の時期と重なったことから、どのように進路を決定していったのかといったことが報告されました。
 意見交換では、来日の経緯を聞くことはプライバシーにかかわるので、聞いてよいものかと躊躇してしまうことがある、来日の経緯を丁寧に聞き取るということが学校では十分に行われていないということが話題になりました。さらに、学校再開後コロナ不安による不登校の子どもはいないが、外国籍の子どもの保護者には不安で登校をさせることを渋る保護者もいることなどが話題になりました。
 アドバイザーの清水先生からは、「今、学校では子どもの自立性を支えることが必要で、そのことが学ぶことへとつながっていく。自立性を支えるためには子どもが『問われる』ことが大事である。特にうまくいっていない子どもは自立性が育たず、学習の土台となるものが育てられていないので、『問われる』ことが必要である。」という内容のお話があり、一斉休校後の今、学校が何をすべきかといったことを学ぶ時間にもなりました。
 今回は、学校の先生の参加が少なかったですが、様々な立場で子どもの教育に関わる大人が知っておくべきことを学ぶことができ、有意義な研究会となりました。

【参加者の感想】
◆印象に残った事は上領先生の変化です。どこで児童を見つめるようになったかと言うきっかけでは、先輩の先生からの話と言うのがありました。どのようなきっかけで担任を変え、そのような変化を起こすことができるのか、職員室での会話がとても大切なんだと思いました。できるだけ私も担任への心声かけを続けていきたいと思います。

◆子どもに対して「問う」というのは大切だと思った。私自身も大学に入って問われ始める機会が増え、知識も増えたし、考え方も変わってきた。また、母親と向き合うという機会も生まれた。大学に入らなかったら、そのすべてがなかったと思うと、本当に狭い世界で生きていくことになっていたと感じる。教員になったら、「問う」ということを大切にして、義務教育のうちに誰もが土台をつくれるような環境をつくっていきたいと今回のお話をきいて思った。

◆今回の事例を通して、子どもと教員の人間関係ができていることで、子どもが心に秘めた思いを爆発でき、爆発できた経験が次につながるということ、そして関係作りのためには、日頃からの問いかけが大事だということを学びました。また、清水先生から「外国籍の子に来日の経緯を聞くということは、一緒に学ぶために必要だから。すべての子どもにとって『なぜ?』『どうして?』と問われることは学びの土台になる。」というお話を伺い、一人ひとりに丁寧に問いかけることの大切さを改めて学びました。休校後の分散登校時、ゆったりと子どもたちに向き合うことができた時期に、子どもたちに対してどんな問いかけがなされたか?また完全再開後は、果たして子どもたちへの問いかけができているのだろうか? 学級作り、授業を進めること、消毒や掃除等の新たな業務…とやることは色々ある中で、一番大事にしなければならないのは何か?今だからこそ考え、職場で語り合わなければならないと強く思いました。

◆進路を決める際には、生徒の進学先への適性、保護者の収入や家庭環境、生徒を支える人や機関の存在などが重要ですが、今回の事例研究会では、それぞれの立場の人間が生徒に対して、丁寧に関わっていくことの大切さについて考えさせられました。多くの高校を調べ、「Kさんに一番ふさわしい高校はどこか」と、真剣に関わられた上領先生のお姿はとても素晴らしく、今年の初任者研修の講話で柿本教育長の「生徒理解とは、どこまでその生徒に関わろうとするかの覚悟である。」との言葉を思い出しました。高校進学後も生徒の拠り所になるべき場所の必要性を述べられていた清水先生の「関係資本」としての教育支援環境づくりが急務であるとのお話も印象的でした。

◆清水先生から、子どもの自立性を確立するためには問われること(問う問われる関係)が大切で、それが学びの前提にあるといったお話がありました。そういった関係(社会関係資本)を外国人の子どもの周りにいかに増やしていけるか、みたいなことを考えたりしています。問われても反応がない大学生(笑)という話もありましたが、自分も似たような学生だったなあとか思いました。その意味では日本の教育全般にわたるような大きな話なのかもと感じました。今回参加したことで、外国人の子どもを取り巻くもろもろの理解が少し進んだ気がしています。今後もこうしたケーススタディが大切だと思いました。