【報告】9/12事例研究会

外国人の子ども理解のための学習会(事例研究会)報告

日時: 2020 年9月12日(土)13:30~15:30(オンライン)
参加者:12名
事例提供: 日本女子大学大学院修士2年 根岸佐織さん

 今回の事例研究会は、根岸さんから「外国につながる子どもにとっての国際教室と普通学級」についてというタイトルで、フィールドワークの報告をしていただき、その後、質疑応答と意見交換を行いました。
 根岸さんからは、大和市内の小学校2校でのフィールドワークをもとに2つの国際教室を比較して分ったこと、そのうちの1校の国際教室に通級する3名の子どもの学級と国際教室から分ったことの報告がありました。
 国際教室の比較では、「独立した教室」と「補助的な教室」に2校を分類し、それぞれの教室のメリット、デメリットが報告されました。普通学級については、国際教室に通っている3人の子どもの学級を「教師中心型」「インクルーシブ型」「ユニバーサルデザイン型」の3つに分類し、それぞれの子どもたちについて、国際教室にいる時と学級にいる時の様子が報告されました。さらに3つの型の学級の特徴とそのメリット、デメリットが報告されました。そして、国際教室が「独立した教室」として存在し、普通学級が「インクルーシブ型」となることで外国につながる子どもたちへの有効な支援ができ、学校全体の国際理解にもつながっていくのではないかと報告されました。

 意見交換では、次のようなことが話題となりました
・教師による合理的配慮により子どもの安心感が生まれる。子どもをクラスの中心に据えていくことが大切。
・国際教室が、やり直す機会や助けてくれる環境があると子どもが実感できる場所として存在することが大切で、学習で抜けてしまったことを必要が出てきたときに補えるようにしながら指導を進めるとよい。
・子どもが面白いと思って知識を獲得できるような学習を子どもに提供できるよう、教師の意識改革も必要。
 今回の研究会は、国際教室と学級の在り方について、子どもの目線で考える機会となりました。参加者も、寺子屋コーディネーター、スクールアシスタント、国際教室担当、地域の外国人支援者と様々な立場の方の参加がありました。しかし、担任の先生方の参加がなかったことは残念で、より多くの担任の先生に参加してもらえるようにしていくことが研究会の課題として残りました。(S.H)

【参加者の感想】
◆本校はどちらかというと通常級の補助として指導をする児童が多いですが、通常級の学習とは別に独立した指導計画を立てて児童の学校生活の助けになれたらと感じていました。根岸さんの研究発表やディスカッションのなかで改めて独立的・補助的な国際学級のどちらの魅力を感じましたし、児童の個々の実態に合わせて両立させていけないだろうか…そのためにはどのような働きかけをすればよいだろう…など、色々考えさせられました。また、学級の環境を(私自身の考えですが)厳密にタイプ分けするのは難しいかなと感じましたが、それぞれのタイプの特徴については(清水先生の補足も含めて)とても興味深かったです。いずれにしても、教員が子どもたちに寄り添い、個々の困り感を理解することが支援をするうえで大切だと思いました。

◆院生として支援に入る中で見取った、子ども目線から見た「国際教室と普通学級」の分析は、とても興味深いものがありました。国際教室は中学校では「学習補助の教室」としてのみ機能、認識されていることが多く、個々の子どもの抱える困難さを語る場、それに寄り添う場、ルーツを学ぶ場との認識はほとんどないのが現状ではないでしょうか。また、普通学級の雰囲気によって外国につながる子どもの表情が変わるという点で、学級作りの大切さを改めて実感しました。今日の話は、国際教室担当者のみでなく、すべての教員が聞いて考えるべき内容であったと思います。この学習会の担当者として、より多くの先生方に参加してもらう方法を改めて考えていきたいと思いました。

◆私は今回、外国人の子供に関する勉強会に初めて参加させていただきました。現職の先生方が多くいる中で大変緊張していた部分がありましたが、教員を目指すものとして大変勉強になったと思います。根岸さんがお話されていたインクルーシブ型やユニバーサルデザイン型は、国際教室に通う子どもたちだけがいい影響を受けるのではなく、様々な支援を必要とする子やその他の児童にもわかりやすい授業を提供することができる方法だと思います。私が学級担任を持つ時にはぜひこの視点を活かしていきたいと思いました。また国際教室の在り方の部分でお話されていた内容になりますが、学校という組織がどう関わっていくかは非常に重要な課題ではないかとここ最近考えます。特別支援教育も同じ視点だと思いますが、組織としてどのように支援をするのか、正規職員だけではなく、非常勤やボランティアなど学校に関わる様々な人と関わりを持ち、子どもたちに必要な支援を行うことは非常に重要だと考えます。また、同じ市内でも学校によって差が出てしまう所でもあり、教員の多忙化が叫ばれていますが同時に、国際教室に在籍する児童を含め特別な支援を必要とする児童の数は増えているのが現状だと思います。学校として組織的にそして積極的に支援を行えるかどうかで、国際教室は今まで以上に有効的に効果的に活用できるのではないかなと考えることができました。

◆根岸さんの報告の趣旨からは脱線してしまいますが、教師中心型(教育カリキュラム忠実型)のクラスにいる児童でも日本人児童との間で楽しそうにコミュニケーションする場面が見られたという点が気になりました。根岸さんの報告の結論にある通り、インクルーシブ型の教育が相対的によい教育の形であることは理解できました。ただインクルーシブ型がなかなか多数にならない場合があることを考慮すると学校内の国際教室や学校外で本人が自分らしくいられる、本来の学びが機能するような場をどのようにつくるかといった現実を考えてしまいます。特に学校外にいる者としては、本人がアクセスしやすい場所でそのような居場所をどうしたら実現できるのかということを考えています。

◆教員として、今回の根岸さんによる客観的な考察は大変参考になりました。特に、外国につながる児童が安心して過ごすための有効な手立てとして、大変価値のある研究だったのではないかと思います。インクルーシブで、ユニバーサルデザインである学級が子どもたちに安心感を与えることは、きっとそうなんだろうと予想はしていました。そして、今回の根岸さんの参与観察で根拠を得て、今後学級担任になった際にはインクルーシブ、ユニバーサルデザインを必ず学級経営の中心にしていきたい、また、他の先生たちにもぜひ伝えていきたいと思いました。また、同じ学級担任を経験している当事者として、違う側面から考えると、教師主導型、インクルーシブ型(イ型)、ユニバーサルデザイン型(ユニバ型)の、どの学級経営になるかは外的要因もかなり大きいのではと考えていたりもします。もちろん、個々の教師が勉強をして考え方を変えたり、スキルアップすることが大切ですが、学級の人数や、学級内にいるグレーゾーンの子の数、学年全体の経営における考え方、学校全体の雰囲気、などなど、、、そのような他の要因に左右されず、イ型+ユニバ型の学級を作るには、どの教員もみんなが心からイ型+ユニバ型が有効だと思っている土壌を作ることが大切なのではないかと思いました。私は発信していくのは苦手なのですが、、、他の先生に伝えていきたいと思います。