【報告】3/27事例研究会

日時:2021年3月27日(土)13:30~15:25

事例提供:日本女子大学人間社会研究科教育学専攻 根岸沙織さん

参加者:16名

 事例研究会は、外国にルーツを持つ子どもたちの具体的な事例を通して、彼らの背景にある事例や問題を読み解く力をつけていくというねらいで開催しています。

 今回は、根岸さんから「小学校における国際教室の役割と普通学級との関係性に関する研究―外国につながる子どもたちの支援をフィールドワークから探る」と題した修士論文の報告をしていただき、報告の後、意見交換を行いました。

 報告では次の3点が報告されました。

大和市内の小学校2校の国際教室を教師が再分配する4つの資源(物理的資源、文化的資源、関係的資源、人的資源)の投入という点で比較すると、文化的資源や関係的資源が投入されている国際教室が「独立した教室」となり、「独立した教室」では外国につながる子どもを外国につながる子どもとして承認し、彼らの日本や学校での生きづらさを解決していくための場所としての機能を果たしている。

文化的資源と関係的資源が担任により多く投入されている「インクルーシブ型」の普通学級が子どもの学校生活や学習において困難を減少させる教室となっている。そして普通学級の在り方は国際教室が「独立した教室」として存在することに欠かせないものである。

2019年度の大和市実践力向上研修の今日的教育課題部会が実施した教師の認識についての質問紙調査の再分析の結果、外国につながる子どもの対応が制度的に整えられても、外国につながる子どもへの対応は学校所在地や個々の教師の意識や認識により差があり、「インクルーシブ型」の教師が家庭環境対応が重要であると感じ、家庭環境に配慮した支援を行っている。これらの報告に加えて、フィールドワークの結果から学校がすぐにできそうな5つの事の提案と学校現場への5つの疑問が投げかけられました。

 意見交換では、次のことが話題となりました。

・教師が具体的に何をしたらよいのかという視点が欠如している。多忙化やクラスサイズの大きさ等が原因の一つではあろうが、国際教室の役割として、具体的に何をしたらよいのかということを発信していく必要がある。

・担当者が集まって情報交換できる機会として、研修が必要。

・経験値を持つことが必要。経験をして外国にルーツを持つ子どもの対応についてわかることもある。

・外国にルーツを持つ子どもの指導については教師の個人差がある。

・普通学級や学校全体が、理想の型に向けてどのように進んでいくのか展望を持つことが必要。

・インクルーシブ型が理想型だが、なぜ今インクルーシブ型ができないのかも考えていく時である。

・多様性が認められるためには、教室だけではなく保護者や地域の人も含めて教室外でも文化的多様性が担保されることが必要。

 今回の研修会は、国際教室や普通学級が外国につながる子どもたちにとっての居場所となるために、何が必要かということを学ぶことができたと同時に、学校や教師が意識改革をしていかなければいけないという課題を投げかけられたものとなりました。

【参加者の感想】

・昨年度、国際を3年間担当した後に、二年生の担任をしました。国際担当としての経験から、学級担任としても日本語のできない児童に対する対応ができるはず、と思っていたのですが、なかなかうまくいきませんでした。お話にありました担任の在り方については、大変興味深かったです。担任として、年度の途中で、2名の中国からの転入生を受け入れましたが、その子達に合う教材の準備や、 国際教室との連携が、満足にできませんでした。授業内での個別に関わる時間の捻出、放課後教材作りのための時間の捻出や情報交換、それらの仕組みができていなかったことが原因だったかなと考えています。今後、国際教室、在籍学級、担任との関わりや、外国につながる児童の学びについて、私自身も改善を目指していきたいと感じました。(参加者Aさん)

・前回の中間報告では、教師主導型、インクルーシブ型、分け隔てなく型の3つのタイプに分けて考察していただき、インクルーシブ型の良さと担任が行っていた指導の雰囲気を知ることができました。文化的資源や関係的資源を具体的にどのように投入していけばよいかイメージすることができました。各小学校の国際が繋がって情報交換できる場を少しずつ構築しています。情報交換会が公の場でも認められて、常勤だけでなく非常勤の方も一緒に知識をつけていければ、国際教室のあり方も変わり、国際からインクルーシブを発信していくことができるかもしれません。私も微力ながら携わっていければと思います。(参加者Bさん)

・国際教室のあり方について考えさせられました。市内でA小学校のような取り組みをしている学校が少ないことをきいて残念に思いました。原因の1つとして国際教室担当としての知識がないということがありました。たまたま私は自分も興味があり、土曜日や日曜日の研修や本を自分で読むなどして、今の知識を得ました。それでも、日々世界情勢が変わる常に研修が必要だと感じています。本来そのような仕事で使う知識は、それが必要であるなら、勤務時間の中で担当者になった全員が身に付けているものだと思います。また身に付けられるように支援するのが指導室の仕事だと思います。しかし、まだまだ大和市の国際教室担当者の研修が足りないので、結果的に知識が得られず、十分な指導が出来ないのだと思います。せめて、横浜の国際担当者が受ける年10回程度の研修会が必要だと思います。(参加者Cさん)

・教師が再分配する4つの学習資源」は、何度読んでも完全に理解することが出来ず、難しい内容だな、と思っています。ただ、どの学習資源に関しても、多ければ多いほど、外国につながる子どもたちが生きやすい環境になることは分かるので、学習資源全体で認識しようと思いました。

 職場で私が所属する学年の国際教室の生徒名簿を見ましたが、記入されているのは、子どもたちの氏名と保護者が何語の通訳さんが必要か、だけでした。すごく簡潔すぎて驚きました。その子自身の情報がない、というか学年の国際担当も担任も、その子への聞き取りをしていない状況です。資料16ページにもありましたが、「ルーツ対応」「家庭環境対応」「学校の学習・生活・進路対応」は必須であり、時間をかけていく問題なんだと、より考えさせられました。

 私が所属する学年では、外国につながりのある生徒の議論は一度もされたことがなく、たとえばその子が生徒指導に関する事例が起きたときには、その事例のみが話されることはありますが、外国につながりがあるからこそ困っていることはないか…という視点は誰も持っていません。試験でのルビがいるかどうか、保護者のお手紙にルビがいるかどうか、所見を訳してもらうために早く仕上げる必要があるのか、三者面談で通訳がいるのか、という点を把握することでその子を理解したと思っているように見えます。私も自分に余裕がなかったため、その子たちからじっくり話を聞くことをしてこなかったので、反省しています。外国につながる子の生きづらさを少しでも解消する第一歩として、まず子どもたちに話を聞いてみようと考えております。

 私が毎回の勉強会で感じることは、自分の知識として学ぶことがたくさんあるのはもちろんですが、お話を聞いて「あー、これは自分が出来ていない」と考えさせられることが多いです。明日からやらなきゃ!といつも思います。お話の内容は「難しいな」と感じることが多々ありますが、勉強会に何度も参加させていただき、お話を何度も聞かせていただくことによって、自分が少しずつ理解できるようになりたいと思っております。(参加者Dさん)