【報告】5・6月事例研究会

 事例研究会は、外国にルーツを持つ子どもたちの具体的な事例を通して、彼らの背景にある事情や問題を読み解く力をつけていくというねらいで開催しています。5月と6月に開催した研究会をまとめて報告をします。

報告①:5月25日(水)19:30~21:30(オンライン開催)参加者10名

事例提供:福島聖子さん(エステレージャ☆ハッピー教室担当)「M君について」

 Ed.ベンチャ―主催の外国人の子どものための学習教室エステレージャ☆ハッピー教室担当の福島さんからは、ナイジェリアにルーツを持つ中学生M君についての事例提供がありました。現在中学2年生のM君は、バスケットボール部に所属し、毎日部活に励んでいますが、勉強が苦手で、日本語のハンディもあり学習にも遅れがあります。M君はバスケットボールに居場所を見つけ、選手としても期待されていますが、部活動が終わった後、M君の将来設計をどのように支援していったらよいかという地域支援者からの事例でした。

 協議の中では、アドバイザーの先生から次のような助言がありました。①小学校の時に「うまくいかない」という経験を持つM君は、部活引退後に不適応を起こすことも考えられるので、部活引退後には「うまくいかなかったこと」を語る時間を作ることが必要である。②部活引退後に不適応を起こす日本人との違いは、親が部活引退後にどうしたらよいかという知識をもっていなかったり、身近に外国人のモデルがいなかったりすることで、非行や反社会的行動を起こす可能性が高い。③したがって、地域のセーフティーネットとしての役割をエステレージャ☆ハッピー教室は担ってもいる。

 参加者からは、「外国人の子どもは部活にどう取り組んだらよいのか、部活との向き合い方のようなものを少し整理することができた。」「外国人の子どもにとってのセーフティーネットの存在については参考になった。」という感想がありました。今回の研究会では、地域の学習教室であるエステレージャ☆ハッピー教室の存在について再確認することができました。

報告②:6月26日(土)13:30~15:30(オンライン開催)参加者11名

話題提供:大和市立渋谷小学校国際教室担当 宇佐美北穂先生 「国際教室の役割」

 6月は、学習会という形で開催しました。最初に宇佐美先生より、「国際教室の役割」についてお話をしていただきました。年間計画では、外国籍児童の把握をするためには、まず名簿作成が大切であるというお話がありました。外国籍児童の名前や国籍だけではなく、つながりのある国や保護者についての情報など、子どもの背景を知る手掛かりとなる情報を入れておくことが必要であるとのことでした。さらに、小さな配慮が日々の支援につながることなど、国際教室の取り組みの中で特に考慮する点についてお話ししていただきました。宇佐美先生のお話の後、事例研究会のスタッフから、はじめての国際教室担当マニュアル」をもとに、特に抑えておくべき点について説明をしていきました。子どもの背景をよく知ること、保護者と子どもが安心できる支援を国際教室が行い様々な情報を発信していくこと、学習支援では子どもとの対話を大切にすることなど、宇佐美先生と「はじめての国際教室担当マニュアル」では共通するものがありました。

 アドバイザーの先生からは、①全教員が複数言語環境下で育つ子どもの理解をすることが大切である。②国際教室が子どもにとって界を広げる場となることが重要である。③これから2世・3世の子どもが増えてくるので、それらの子どもにどうサポートをしていくのかということが今後の課題となっていくという助言がありました。

 参加者からは、「学ぶべき点が多くあった。」「『初めての国際教室担当』のポイントはすべての教員が学ぶべき内容である。」「国際教室担当としてできていること、やらなくてはならないこと、この先の課題などを明確にすることができた。」「改めて国際教室の運営について確認することができた。」といった感想がありました。