事例研究会は、外国にルーツを持つ子どもたちの具体的な事例を通して、彼らの背景にある事情や問題を読み解く力をつけていくというねらいで開催しています。今回は7月28日に開催された研究会の報告です。
日 時 :2021年7月28日(水)19:30~21:30 Zoomによるオンライン開催
事例提供:篠原弘美先生(Ed.ベンチャー事例研究会担当・大和市プレクラス日本語指導巡回教員)
「Nさんの居場所」
参加者 :8名
コロンビアから来日して1年半になる小学校6年生(日本国籍)の子どもの事例。プレクラスでの指導を終えて本来なら学校の指導に移行している時期ですが、度重なる国際教室担当者の交代、Nさんを取り巻く人間関係の希薄さ等を鑑み、現在もプレクラス教員が週1回直接支援のために学校に入っています。学級にも国際教室にもNさんの居場所がないのではないかと感じられる状況下で、プレクラス教員として少しでも本人のプラスになるよう、学校に対して、本人に対してそれぞれできることはないか?そのヒントを求めて意見交換を行いました。
参加者からは、外国人の子どもに対する教員の理解が足りない現実に対して、啓蒙活動の大切さを訴える声が多く聞かれました。
アドバイザーの先生からは、家庭でも学校でも自分のネットワークを作っていく人間がおらず、孤立感を抱えているのではないか。自分の気持ちを自分から話すことができるようにするにはどんなことができるかについて様々なアドバイスをいただきました。具体的には「異学年の子どもも含め複数の子どもと一緒に取り出し、何かを作り上げる体験をさせる(ジグソーパズルなど残る物)」「複数の子どもと一緒に話をする時間をとる」等があげられました。
事例提供者は2学期から色々試すヒントが得られたようでした。また、プレクラス教員という立場でも、通訳さんを交えて保護者等と話をする機会を作るよう考えているとのことでした。
今回も外国人の子どもを取り巻く現実の厳しさを感じずには居られない事例でしたが、そんな状況下でもあきらめることなく知恵を絞って少しでもできそうなことを探り試していくことが重要だと強く感じました。
【参加者の感想】
・担任や国際教室担当がちょっと配慮をすれば変わってくるのだと思います。事例提供者の方がNさんに関わるしかないのではないかと思います。担任と話し続けていってほしいと思います。
・清水先生のおっしゃるように学校の先生の考えを変えるのは難しいのかもしれませんが、少なくとも外国に繋がる子供の日本語習得はそう簡単なものではないことだけでも理解してほしいと思いました。そして、いやでもイマージョン教育を受けている彼らのストレスは大きい。特に最初の頃は、聞こえてくる外国語(日本語)に拒否反応を起こす人(敢えて「人」を使うのは、子供だけでなく大人もいえると思うからです)もいるはずです。思っていることが、言葉で伝えられないのは、本当に苦しい。伝える相手は友達だけでなく、先生に質問されてもうまく日本語で答えられないなど場面は色々です。よく分からず言うのは憚られますが・・・担任の先生は多くの生徒を抱えています。”日本人”の生徒が全て問題がないわけではないでしょう。それなりに大変なのに、少数の外国から来た生徒に時間を割く余裕は無いかもしれません。ですから多くはできなくても、皆の前でNさんを褒めてあげる、席を配慮してあげる、作文に短くてもコメントする、声掛けをする等、少しの配慮でもそれがクラスの生徒にも影響を与えるでしょう。
・今回の事例研究を通して、率直に思ったことは外国籍の児童だけではなく、どんな子でも学級に居場所を確保してあげることがとても必要だと思いました。そして、子どもたち一人ひとりのことをきちんと受け入れてあげることが、教師や担任としての役割だと思いました。困り感がある児童は外国籍の児童だけではなく、発達障害がある児童など全ての子どもたちがなんらかの困り感はあると思います。そのような子どもたち一人一人にどのような困り感があり、どんな支援をしていくべきなのかを改めて考える必要があるのではないかと思いました。特に、外国籍の児童は言語を習得するという大きな壁を乗り越えていく必要があると思います。そういった状況の中でどこまで、教師やそれを取り巻く人たちが考え、サポートする方法を考えることが大事だと思いました。