【報告】6月事例研究会

 事例研究会は、外国にルーツを持つ子どもたちの具体的な事例を通して、彼らの背景にある事情や問題を読み解く力をつけていくというねらいで開催しています。

日時:2022年6月27日(月)19:00~21:00(オンライン)

事例提供:「母国での学習が十分に定着しないまま来日した児童生徒」

やまとプレクラス日本語指導巡回教員篠原弘美(事例研究会スタッフ)

参加者:7名

 今回は、事例研究会スタッフの篠原から、来日時母国での学習が十分に定着していないと思われる小中学生の事例を報告しました。小学1~2年生の算数の学習内容の習得が十分でないと思われるため、日本の学校での学習に困難を抱えるのではないかと心配される3人の児童生徒の事例を報告しました。

 協議では、事例で挙げた子どもに関わる学校の先生が参加をしてくださっていたので、それぞれの子どもの背景や学校での支援体制について情報を共有しました。いずれの事例も子どもはうまくいかないことを抱えていること、両親の言語も含め子どもの言語環境を理解すること、子どもの背景を理解することから支援が始まるということを確認しました。

 今回の研究会では、アドバイザーの先生からお話を伺う時間が多くなりました。子どもの言語環境は一様ではないため支援の在り方は一つではないこと。子どもの自己決定権を尊重し、どういう学びを子どもがしたいと思っているのかが重要であること。子どもがうまくいかないことがあるのは当然で、教師はそのうまくいかないことに並走していくことが必要であること。教師が並走して、子どもが「自分をわかってくれる人がいる」という安心感を持てることが重要であること。並走するためには知識が必要であることというお話を伺いました。そして、それぞれの事例の児童生徒への具体的な支援のアドバイスをいただきました。さらに、現状の制度の中では母語で支援が受けられる体制が十分ではないと考えるのなら、今ある制度の中で何とかやっていこうとするのではなく、制度の改変を先生方が求めることも必要であるというアドバイスもいただきました。

 今回の研究会には、学校の先生方に加えて、地域で外国にルーツを持つ児童対象に学習支援をしているボランティアの方も参加をされました。ボランティアの方からは、ボランティアの教室に通う子どもたちの学習状況が報告され、学校の学習指導について叱咤激励を受けました。

 学校で支援をするとき、どうやったら教室の勉強についていけるかということに意識が向きがちで、教科の知識を教え込むことをしがちです。今回の研究会を通して、子どもたちの学びの場では、「子どもの自己決定権」を尊重することを常に意識していないといけない、「子どもの自己決定権」という言葉をいつも自分の中で繰り返していることが必要だと感じました。